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事業成長をイメージする|事業再構築コース#2

こんにちは、「ネイバースクールSETAGAYA」の事業再構築コースを担当している高橋秀紀(通称:ヒデさん)です。8月から隔週で実施しているネイバースクールSETAGAYA、早速第2回を開催したので、その様子をお伝えします。

ちなみに、第1回の様子はこちら↓

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事業再構築コース2回目のテーマは、「事業成長をイメージする」。藤原印刷株式会社(以下 藤原印刷)の藤原章次様(以下 藤原さん)を講師にお迎えして開催しました。

「遠くにある新しさよりも、近くにある継続と徹底」

これが事業再構築における事業成長のポイントであり、私が事業再構築支援の中で最も大事にしていることです。「今の事業でまだまだやれること、やるべきことはないのか?」という事業の問い直しは絶対に外せないプロセスだと思っています。

ただ、参加者の目線で考えると、「こんな地道なことで本当に再構築できるの?成長できるのか?」という不安にも似た疑問が生まれがちです。

この不安や疑問を解消するためには、実践者の話を聞いて感じてもらうのが一番。こんな役回りにピッタリのイメージだったのが藤原印刷の藤原さんでした。

構想をブラッシュアップするチャレンジピッチ

事業再構築コースでは、各回2名が現時点での事業再構築構想を5分でプレゼンし、参加者や講師からフィードバックをもらうことで構想をブラッシュアップしていく「チャレンジピッチ」を行います。

今回のチャレンジピッチのトップバッターは、JUNKANの神林愛美さん。

初回のオリエンテーションから2週間でおどろくほど構想がまとまっていました。目指す事業を「『ミニマルスタイル・ トレーナー』として、忙しい人でも可能なトレーニングの継続と習慣化を提供すること」と定義。

盛りだくさんの詰め込みサービスよりも、必要なトレーニングを欲張らずに最小限で提供する方が、お客様の満足に貢献できるという仮説が生まれていました。この2週間で事業再構築の骨格が固まるまで、一生懸命に取り組んだことが伝わってくるプレゼンでした。

次は、大黒屋の浅村啓之さん。

構想の基本的な方向性としては、自社の煎餅やおかきの新しい食べ方の提案です。具体的には、アイスを煎餅でサンドした「アイス煎餅マカロン」という新商品にチャレンジ。

大黒屋さんでは、おかきでクリームをサンドした和風マカロン、「おかきマカロン」を先行して商品化しています。硬さと柔らかさ、しょっぱさと甘さの組み合わせがとても面白い商品なので、アイスにも期待してしまいます。
「アイス煎餅マカロン」の商品化のプロセスからスタッフもコミットできるように、大黒屋全体をしっかりと盛り上げていって欲しいです。

全力を注いだいい仕事が、次のいい仕事をつくっていく

チャレンジピッチのあとは、待ちに待った、藤原印刷株式会社の藤原さんの登場です。藤原さんのプロフィール紹介からスタートしました。

藤原さんは、何をやってもすぐに辞めてしまう、超一級の“継続できない人”だったそう。そんなプロフィールの持ち主が、講義の中で堂々と「地道な継続がもっとも大事」という話をしている。ここが藤原さんの面白さであり、妙な説得力がありました。

インターンで兄と働いたのが本当に楽しかった!
兄と一緒に働きたい!

そんな気持ちから、社長でもある親の反対を押し切って藤原印刷に入社したものの、入社までの経緯もあって、なんとしても結果を残さざるを得ない状況に。そんななか最初に目をつけたのが、社内で細々と稼働していたフルカラーの印刷機でした。

藤原さんが入社した当時は、仕事の大部分が白黒印刷、フルカラーの注文はわずかという状況だったそうです。そこで、モノクロの注文が多い法人の既存顧客層だけでなく、フルカラーを必要としそうなデザイナーさんに片っ端から電話やメールで連絡を取り、新規のお客様の開拓をはじめたそう。そんな地道な活動を続ける中で、転機になった出会いが訪れたといいます。

一つ目は、当時大学生が編集長を務め創刊したファッション雑誌『N magazine』。

販売部数として大成功を納めた出版だったそうですが、当の編集長は「仕上がりの色」に不満を感じていた。そこで、藤原さんは、「うちに任せてください、初回の印刷費と半額で、倍の部数をつくります!」と提案したそうです。

藤原印刷で刷られた第2刷は明らかに初刷とは別物で、講義中に実物を比較して見せてもらいましたが、明らかに発行者の期待する色味や艶を表現していると感じられるものでした。

二つ目は、毎週末に東京・青山で開催している「Farmers Market@UNU」が発行する雑誌『NORAH』。本文の紙を一枚ずつ違う紙にできないか? という相談でした。

そこで、16ページごとに紙を変え(1折16ページのため)、そして表紙もいくつかつくれば相当なパターンの本が作れると提案したそうです。こちらも講義中に実物を見せてもらいましたが、発行者のこだわりと作り手の手間とプロ根性のようなものを存分に感じさせてくれるものでした。

こういった実績と実物はとても説得力がありました。藤原さんが楽しそうに「全力を注いだいい仕事が、次のいい仕事をつくっていく」と話していた通り、なんとも理想的な循環が創り出されていました。

でもこれって、藤原印刷が特別なんじゃなくて、誰にでも通じる商売の原則なんじゃないかと思うんです。お金をもらってした仕事が、そのまま営業になるんですから。

こういった地道な仕事から生まれた取り組みの一部は以下の通り。

  • 印刷屋さん目線で、個人出版の本の販売応援をしていく「印刷屋の本屋(PTBS)」

  • 藤原印刷が手がけた作品を展示して、著者と読者(本屋)の想いをつなぐ「心刷展」

  • 本社工場を一般公開して、藤原印刷の本づくりの面白さやカッコよさを見て感じることができる「心刷祭」

  • 紙とオフセット印刷の組み合わせで生じる微妙な疑問に答える「効果のある/なしの境界線展」(平和紙業との共同企画)

  • 紙・印刷・製本・加工の視点から本の魅力を伝える展示「世界をひろげる 本のつくり方」(SHIBUYA TSUTAYAとの共同企画)

遠くにある新しさよりも、近くにある継続と徹底

いずれの取り組みも地道で継続的な仕事から必然的に生まれたことがよく伝わってきます。

いい本をつくりたいと願うお客様にとことん寄り添い、全力で応援することでお客様が満足する。そして、その本を販売する人たちも読者も満足する。

出版業界では、市場は右肩下がりなのに発行点数は増え続けているという、いびつな構造が続いています。そんな状況において、藤原印刷さんが地道に印刷や本の価値を追及する姿が、私にはとても新しく感じられ、光り輝いて見えます。

藤原さんが私たちに教えてくれたのは、「目の前の仕事に全力を尽くし、お客様に提供する価値を追及していく、その度合いと継続が大事」ということでした。

藤原さんからいただいた学びを事業再構築に活かしていくうえで、私が大事だと思う要素をまとめると、

  • そもそも事業を営んでいく理由となる、自身や自社の根源的な想い

  • 日々の事業の営みのなかで培ってきたお客様との関係

  • お客様の満足(評価)をつくり出すための独自の能力

ここから大きく外れると、当然のことながら追及も継続も難しくなってしまうからです。

最後に、ネイバースクールSETAGAYAの事務局 吉田さん(本業は戦略コンサルタント)の感想がとてもわかりやすかったので紹介します。

ご本人はターゲットを絞っていないとおっしゃっていましたが、既存の印刷会社では満足できない人というターゲットを具体的に定めた上で、

・「顧客のイメージを紙に具現化する」という本来の印刷サービスの提供価値をとことん磨きあげたこと
・顧客の周辺ニーズ(本を売りたい、どんな紙に印刷したらいいのか知りたい)をカバーするサービスを展開していること

この2点の徹底度合いがめっちゃすごいなーと思いました!

改めまして、事業再構築コースに登壇いただきました藤原さんに感謝を申し上げます。藤原さん、サイコーでした!


文=高橋秀紀(ネイバースクールSETAGAYA・事業再構築コース ディレクター)




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