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やるかやられるかの世界を生きる~統合失調症である私のサバイバル術その㉘~「こちら側」、「あちら側」

前回まで

精神保健福祉士として仕事をしていく中で、自分の中の精神疾患当事者であるといった当事者性はだんだん小さくなっていきました。
と言いますか、むしろなかったことにしたいと思うようになりつつありました。
やるかやられるかの世界を生きる~統合失調症である私のサバイバル術その㉗~こころの闇|せっと|note
このことの根底には、自分の中に精神疾患であるということに対する内なるスティグマがあったのだと思います。
今回はそのあたりのことをもう少し詳しくお話ししていきたいと思います。

もう以前の自分ではない


精神疾患当事者である自分が精神保健福祉士として働くことで、病気で何もできなかったかつての自分を見返してやるみたいな感覚や、そのような時代を黒歴史であるかのように封印したいといった思いもありました。
完全に自分の中の精神疾患であるということをなかったものであるとしようとしていましたね。

このころはことさら自分が精神保健福祉士である、ということを強く意識していて、今考えるととても恥ずかしいのですが福祉の専門用語を意気揚々と使って会話をするなどしている自分のことを「かっこいい」「イケてる」と思っていました。
また、精神保健福祉関係の研修にも積極的に参加していました。もちろん内容に興味関心はあるのですが、「そういうことをしている意識の高い精神保健福祉士である自分」、というのを誇らしげに感じていたところがあったのも事実です。
このころのSNSの投稿がまだ残っているかもしれませんが、今となってはとてもとても恥ずかしくて見てられないですね。
「エンパワメント」、「ストレングス」、「アドボカシー」・・・ドヤ顔でこのような単語を並べていました(笑)

でも逆を返せばそれだけ自分にとって精神保健福祉士として仕事ができているということが大きなことであったのだと思います。
過去の自分に見せつけるかのように精神保健福祉士アピールをしていたようにも思えますね。そのことで過去の自分に対して復讐をしているといったような意味合いもあったようにも思えます。
過去の書き換え作業をおこなっていた、ともいえるのかもしれません。
一生懸命生き直していたのかもしれないですね。

自分のリカバリーって?


このころの自分にとってのリカバリーって何だったのかなと考えると、「精神疾患でない自分」になることみたいな感じだったのかな、いわゆる「健常者」になることが自分にとっての「リカバリー」みたいにとらえていたのかもしれません。
もっといえばどんどん精神保健福祉士としてのキャリアを積み上げていける自分であり続けることがリカバリーそのものといった風に感じていたのでしょうね。
もちろんそれもリカバリーの形ではありますし、当時の自分のよりどころには確かになっていました。
今振り返ると精神疾患当事者ではなく、精神保健福祉士として生きるということが、リカバリーの旅路の中で当時の自分が見つけ出した「希望」であったのかもしれません。

「こちら側」、「あちら側」

そんな風に私は、いってみれば「こちら側」、から「あちら側」、に移ってしまいました。
「支援される側」、から「支援する側」に自分が移って、自分にとっての「なかま」は精神保健福祉士や福祉の専門職の方々である、と思うようになっていました。
自分の精神疾患であるという当事者性については当時は意識していませんでしたし、当事者性ということでいうならば自分の当事者性は「精神保健福祉士である」、という風にとらえていたのでしょうね。
完全に自分が精神疾患である、ということを隠すべきもの、恥ずべきもの、のように感じていました。

今ではそれほど自分の抱える精神疾患に対して後ろ暗い思いはさほどなく、むしろ病気でみじめだとおもっていた時期があってこその今の自分であると思うことができます。
そしてピアスタッフとして、ソーシャルワーカーとして、かつての自分と同じような生きづらさを今まさに抱えている方々に対して同じ目線でかかわるということを大切にしたいと思っています。
しかしこの時はそんな風には考えていませんでしたね。当初抱いていた「精神疾患であることも活かして福祉職として働く」、といった思いは小さくなっており、むしろ精神保健福祉士としてどんどんキャリアアップしていきたい、という思いを強く抱いていました。

今回はここまで。ふと、この時のまま「自分の当事者性は精神保健福祉士であること」、と思い続けていたら今頃どんな働き方をしていただろう、なんてことを考えることがあります。
この後私がどのようにキャリアを積み重ねていったのか、次回以降お話ししていきたいと思います。
果たしてパラダイムシフトは起こるのでしょうか・・・?


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