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#18 【特別支援】中学校を卒業後の進路

進路を考える上で最も意識する点は、
本人がそこで学ぶ事で、何を得て、卒業後にどのような道に進めるか
に尽きます。

高卒、大卒資格を得るにしても、高卒資格によって本人が自立できるか、といった視点は非常に重要です。
後にも記載する通り、特別支援学校高等部を卒業する事でその先の進学が制限されるという事はありません(仮にそのような事があれば、それは明確な障害者差別です)。
また何より、資格だけでは働いてはいけません。何を学び、何ができるかという事は切り離せないものです。

特別支援学級に在籍する生徒の進路については、以下の記事でも一部取り扱っています。

後期中等教育(いわゆる高校等)は様々な選択肢があり、複雑です。
特別支援を受ける生徒の進路の選択肢も多様で、まずは一つ一つを簡単に確認していきたいと思います。

第1章 進学先

①特別支援学校高等部へ進学

特別支援学校への進学は原則として、学校教育法施行令「特別支援学校に就学すべき障害の程度(就学基準)」を満たす事が入学の必要条件となります。
障害者手帳、又は医師による障害の診断書等が原則として必要となります。
ほとんどの場合で公立の学校ですが、私立の特別支援学校もあります。
卒業後の進路は多くの場合、企業就労や就労移行支援、施設入所等となります。
また、若干名ですが大学進学を選択する者もいます。

①-1 普通科へ進学

在学期間は3年間。学費は非常に安い。
原則として入学定員は設けていません。
特徴としては、障害の程度に応じて手厚い支援を受ける事ができます。

卒業後の進路は多くの場合で就労移行支援、次いで企業就労、施設入所等となります。
障害の程度が重い者から比較的軽い者まで、広く在籍します。

①-2 職業科へ進学

在学期間は3年間。学費は非常に安い。
入学定員が学校ごとに定められており、入学試験があります。
特徴としては、非常に手厚い職業訓練が行われ、企業との提携もあります。

多くの場合で卒業後の進路は企業等への就職となりますが、100人が100人企業等への就労とは限らず、ドロップアウトする生徒や就労移行支援に移る生徒も僅かながらいる事があります。
多くの場合、障害の程度は比較的軽い〜中程度の者となります。

②公立高校全日制へ進学

近年は特に多様化が見られる高等学校ですが、教育の共通性が確保される必要性もあり、その教育内容は他の選択肢より厳しいものとなっています。
公立高校の全入が叫ばれていますが、入学後に続けられる学校であるか、卒業後に満足いく進路となるか、といった視点が非常に重要となります。
また、評定(いわゆる数値評価)のない事が多く、場合によっては入試にあたって不利となるケースもあります。

②-1 普通科に進学

在学期間は原則3年。学費は安い。
全日制普通科は最も一般的な「高等学校」とも言えますが、近年は普通科の中でも非常に多様な姿をもつようになってきています。
進学にあたっては、学校の支援体制に加え、本人の能力や卒業後の進路まで十分に検討をする必要があります。

②-2 専門科に進学

在学期間は5年。卒業時に高卒、及び短大卒業資格が得られます。
高度な専門教育を受ける事となるため、能力に応じているかという視点が必要です。

②-3 工業科・商業科等に進学

在学期間は3年。卒業時に高卒資格が得られます。
学科ごとに、専門的な教育を受けることができるメリットがあります。

③公立高校定時制に進学

定時制は、原則として3年以上の在学期間となっており、4年のところが多いです。
卒業と同時に高卒資格が得られます。
全日制よりも自分のペースに合わせやすい点がメリットであり、選択肢にあがる事も考えられます。
一方で、様々な理由から中退率は全日制普通科よりも高く、卒業できるか、進路まで考えているかの検討は、全日制普通科より必要となります。

③-1  昼間定時制に進学

在学期間は3年以上(4年が多い)。
昼間定時制は全日制より学習ペースが緩やかです。

③-2 夜間定時制に進学

在学期間は3年以上(4年が多い)。
夜間定時制は非常に多様な生徒が在籍します。
いわゆる「来る者拒まず」の精神が根付いており、手厚い指導を受けられる傾向にあります。

④(公立)通信制高校へ進学

在学期間は3年以上。うち30時間以上の特別活動への出席が必要です。
学費は非常に安く、卒業時に高卒資格が得られます。

進学にあたっては、スクーリングの有無の確認とその組み方を検討する必要があります。
スクーリングが無い場合、特に学習モチベーションを確保できるかが重要です。
全日制普通科高校より中退率が高く、入学よりも卒業のハードルが高い事が特徴です。

⑤サポート校へ進学

在学期間は3年以上。学費は比較的高い。
学校教育法に定められる学校ではないため、サポート校単体では卒業と同時に高卒資格を得られません。
しかし、多くは通信制高校と提携し、卒業と実質的に高卒資格を取得できるような形を取っています。
④通信制高校との違いは、モチベーション維持の仕組みが非常に多様である点です。

⑥私立高校へ進学

在学期間は原則3年。学費は比較的高い。
学校教育法に定められる学校であるため、卒業と同時に高卒資格を取得できます。
学校独自の支援体制が整っている学校は非常に少ないです。
個々に問い合わせ、確認する必要があります。


第2章 進路選択上の観点

①多様な進路選択の中で

第1章では、様々な「進学先」があることを確認しました。

特別支援学級に在籍する生徒の実態は多様であり、網羅的に語ることはできませんが、療育手帳や障害の診断といったアドバンテージを活かす事は、将来の選択肢を広げる上でも有用です。
次項でも記述していますが、支援を受けられる環境と受けにくい環境のどちらを選択するか、またそこには様々な価値基準があるものです。
多様な選択肢、考えがある事を踏まえ、学校としては本人に関係するすべての人と共通理解を図りながら進路実現を目指していくものです。

支援を受ける中で、学習上、生活上の困難さが本人にとっても、周囲から見ても目立たなくなるケースもあります。また、知的障害においては、境界〜通常程度のため療育手帳を取得できない場合もあります。
そういったケースでは、特別支援学校高等部への進学が難しくなり、高等学校やサポート校への進学を目指すケースも増えてきます。

どの進学先が最適であるかは、当然ながら本人によりけりであり、手厚い支援を受ける事で力を伸ばせる場合もあれば、普通教育に加え、ごく一部の部分で合理的配慮を受ける事で力を発揮できる場合もあります。

「本人は頑張っている」という主観的なものだけでなく、対外的に説明できるような情報、どのような配慮があれば力を伸ばせるかといったものも進路選択上、欠かす事のできないものです。

②進路選択で特に気をつけておきたい点

②-1 早くから情報収集を行い、方向性を定められているか

これは生徒に係る関係者すべてが行うべきものです。

特別支援学校高等部では、中学1,2年生向けの学校説明会や体験授業等の取り組みが行われており、早くから進路の方向性を検討する必要がある事の証左とも言えます。
多様な進学先、進学先のでの支援体制、進学先の卒業後の進路など、社会的自立までのステップを具体的に検討されているか。本来であれば、個別の教育支援計画と併せて共通理解が図られるべきであります。

何より、社会自立に向けた準備に掛ける時間が長いほど、その実現可能性は高まる傾向にあります。これは早期支援の重要性と同様です。

②-2 高等学校への進学にあたって

個々の事例として、例えば高等学校の進学を検討しているとして、
以下の5つは特に、把握しておくべき事項となると思われます。

・特別支援学級への在籍による評定等について理解しているか
・志望先の選抜方法、学則、入学後の支援体制、卒業後の進路が本人に適しているか
・居住する自治体の、特別支援学校高等部と公立高校の併願受験の可否
・志望する学校への進学が叶わなかった場合の進路
・親、本人の意思が共通しているか

懸念される点としては以下の2つで、
1つは、進学ができても、当該生徒が単位を取得できずリタイアしてしまう
2つ目は、卒業ができても、社会的自立に必要なスキルが身についていない事で満足のいく進路実現とならない

他にも、生活リズム的な面で課題のある生徒については非常に注意を払うべきで、遅刻や欠席等に対しては、当然ながら一律で処分が下ります。他害行為に関しても同様です。
それは詰まるところ「留年」「退学」を意味するものであり、本人にとって最も辛い選択肢を迫られる事となります。

②-3進学自体が目的となっていないか

一昔前までは「とりあえず高校」という言葉にもあるように、高校を卒業する事が社会自立に向けた一つの指標として広く捉えられていました。
しかし実際問題として、高校を卒業したら自動的に就職が約束されるものではなく、特例子会社のような企業等ではない一般の勤め先が、支援してくれる訳でもありません。
社会自立が目的であって、その手段として進学が選ばれなければならないものであり、この手段と目的の逆転はしばしば起こりうるものです。

また、一部においては「障害受容」が十分でなく、それを否定する形で特別支援学校への進学を避けたいという思いもあります。
これは障害のある者は特別支援学校に通わなければならない、と述べているものではない事を強調します。

社会自立までの険しい道のりを山に例えた時、仮に山頂に到達する事が目標ならば、より安全な近道を案内する、技術指導に長けたインストラクターに付いてもらう事を否定する人はいないはずです。
当然ながら、歩いて登る事を望む人もいるし、あえて険しい道を進む事に価値があると考える人も、またインストラクターがつく事は半人前の証だと考える人もいるかもしれません。


終わりに

本記事では、中学校卒業後の進路についてまとめてきました。

今後は障害者雇用の実際についてまとめていけたらと考えています。

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