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#27 特別支援学級における交流及び共同学習〜実践ベースから〜

 特別支援学級では、交流及び共同学習として通常学級生徒と一緒に学習する機会が少なからず設定されています。

 文部科学省の「交流及び共同学習ガイド」では、交流及び共同学習の意義や目的について、本冊子の冒頭で

 我が国は、障害の有無にかかわらず、誰もが相互に人格と個性を尊重し合える共生社会の実現を目指しています。 幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校(以下「小・中 学校等」という。)及び特別支援学校等が行う、障害のある子供と障害のない子供、 あるいは地域の障害のある人とが触れ合い、共に活動する交流及び共同学習は、障害のある子供にとっても、障害のない子供にとっても、経験を深め、社会性を養い、豊かな人間性を育むとともに、お互いを尊重し合う大切さを学ぶ機会となるなど、大きな意義を有するものです。 また、このような交流及び共同学習は、学校卒業後においても、障害のある子供にとっては、様々な人々と共に助け合って生きていく力となり、積極的な社会参加につながるとともに、障害のない子供にとっては、障害のある人に自然に言葉をかけて手助けをしたり、積極的に支援を行ったりする行動や、人々の多様な在り方を理解し、 障害のある人と共に支え合う意識の醸成につながると考えます。 小・中学校等や特別支援学校の学習指導要領等においては、交流及び共同学習の機会を設け、共に尊重し合いながら協働して生活していく態度を育むようにすることとされています。

文部科学省.2019,交流及び共同学習ガイド

 と説明しており、インクルーシブ教育の理念の実現に向けた取り組みの1つでもあります。

 交流及び共同学習は、基本的な方向性は同じであっても、取り組みの程度や内容が学校によって様々です。
それは、仮に同じ自治体の隣接する学校であっても、取り組み方は全く異なるもので、学校の方針だけでなく、児童生徒の活動状況(支援級・通常学級ともに)が影響するものと思われます。
では、交流及び共同学習には、どのようなパターンが考えられるのでしょうか。
今回は、いくつかを取り上げみていきたいと思います。

行事交流(特別活動)を主とする交流及び共同学習

 比較的多いと感じるのが、このタイプの交流及び共同学習です。
これは多くの場合、特別支援学級全体で行われるもので、いわゆる「行事交流型」です。
普段の指導は支援学級内で行われ、学校行事の中で通常学級生徒と交流及び共同学習を行っていきます。
 また、交流の仕方においても、支援学級の児童生徒全員が1つの集団として学校行事に参加していく支援学級型(名前があるのかわかりません)と、支援学級生徒がそれぞれ通常学級クラスに入って一緒に活動する交流級型があります。
 前者は、行事全体を一つの活動として捉え、巨視的に見れば一緒に活動をしているといえます。例えば、合唱祭(音楽コンクール)で通常学級と同様に、支援学級生徒がまとまって合唱の発表を行うといったものが挙げられます。
 後者は、支援学級の児童生徒が通常学級の児童生徒とより密接に関わることとなり、お互いの児童生徒が共同で取り組む意味合いが強くなると考えられます。
 どちらの方が正しいかというより、学校事情や児童生徒の状況を鑑みて適切に指導・支援を行い、生徒の達成感や成就感を味わえるような活動にすることが重要だと思います。
ただし、強いて言うならば後者の方が日頃からの学習、特に行事前にはクラス練習や学年練習といった活動が入ることが考えられ、時間割や人の動きが非常に煩雑となり、大規模校では取り入れにくい側面もあります。

実技教科を中心とした教科学習「も」主とする交流及び共同学習

 こちらは、体育や技術・家庭、音楽、美術など、いわゆる実技教科の教科学習で交流及び共同学習を行うタイプです。
先述のいわゆる「行事交流型」よりもさらに密な交流及び共同学習が行われることになります。
また、見出しに「も」と付けたのは、普段の教科学習で交流及び共同学習を行っている場合、多くは行事においても交流及び共同学習が行われるからです。
 このタイプの交流及び共同学習は、支援学級の一部の児童生徒が参加することもあれば、一部の教科のみ実施など、実施形態が非常に幅広いことが挙げられます。

5教科の教科学習における交流及び共同学習

 こちらは特定の教科において、小集団による指導よりも集団授業での指導の方が適切である場合に用いられる交流及び共同学習です。
あえて実技教科と5教科を分けて記載しているのは、特別支援学級の性質上、作業や運動といった活動が中心となる学習活動は特別支援学級においても多く取り入れられており、比較的参加がしやすい点が挙げられるからです。
また、このタイプの交流及び共同学習では同学年の教科学習を行う場合もありますが、本人の学習状況によっては異学年の授業で交流及び共同学習を行うことも考えられます。
例えば、中学3年生の特別支援学級に在籍する生徒が、中学1年生の数学の授業で交流及び共同学習を行うといった活動が行われることはあります。

 授業が受けられるなら、どの授業でも交流及び共同学習を行えるのではないかという疑問もありますが、昨年、文部科学省が以下の通知を出しており、特別支援学級に在籍する児童生徒は「特別支援学級で半分以上の授業を受けること」としています。

 5教科すべて参加するとなると、週授業数の半分以上となるため、制度上は実施することができません。

その他の交流及び共同学習

学活(総合、道徳)や児童会・生徒会活動での交流及び共同学習
 行事とは別に、日頃からの総合・道徳・学活の中で交流及び共同学習を行うものです。
様々な内容が含まれますが、例えば交流学級の児童生徒と、それぞれの学級で普段取り組んでいることについて情報共有をし、お互いの理解を深め合う活動が考えられます。
「招待交流」という名前で用いられる場合もあり、学活で行う場合は行事交流と同様に特別活動に位置づけられる活動です。

・教育課程外の活動における交流及び共同学習(部活動など)
 学校によっては特別支援学級に在籍する生徒を中心として活動する部活動があると思いますが、通常学級生徒と一緒に部活動に取り組むことも考えられます。
こと部活動においては、必ずしも特別支援学級の教員が顧問を担当するものではなく、また支援員が配置されるといったことは基本的にないため、保護者・本人・顧問の三者が話し合って、活動ができるか、どの程度の活動を行うか、どのような配慮が必要であるかなどを含め、どのように家庭と学校が連携していくかを十分に検討していく必要があります。

終わりに

 交流及び共同学習をどのように行っていくかは学校によって異なります。
また、単に同じ環境の中に入って活動するだけでは、交流及び共同学習の意義や目的を達成するものにはなりません。
児童生徒本人の状況によって、交流及び共同学習をどのように取り組んでいくか、学校と家庭で情報共有を密に行いながら実施していくことが重要です。

 一部の自治体においては実施されている例がありますが、今後は遠隔による交流及び共同学習が広がりを見せる可能性も考えられます。
特別支援学級に限らず、様々な学校で、様々な人たちが繋がり、互いに理解を深め、協働するような学びの共同体ができることを、私自身としては目指していきたいと考えています。

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