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8月号座談会「アート&デザインをめぐるメディア 」(前編)

今月のテーマは、アート&デザインをめぐるメディアです。国内外のメディアを通じて、アート&デザインの現在を考えます。

キーワード:Speculation、メディア、SF、未来洞察、植民地主義、アルゴリズム

スペキュレイションの現在

太田:先月の2019年7月に刊行された『SPECULATIONS──人間中心主義のデザインをこえて』(BNN新社)という書籍があります。6月にラジオゲストになってくれた川崎和也さんが監修・編著者を務められ、ぼくも「FICTION」という章を彼と共同編著のかたちで参加しています。どんな本かというと:

社会と技術に関する問題の複雑化を背景に、デザインをとりまく、研究/実践、デザイン/エンジニアリング/アート、デジタル/フィジカル、自然/文化は急速に融合している。本書は、ますます多元化するデザインリサーチの様相を可能な限り明らかにすることを目的として、多様な実践群を召喚しつつ、今着目すべき巨大な問題系を指し示す。(前掲書、2頁)

デザイン固有の切り口から編まれた日本語で読める本として、これが最前線のものだと思います。一言で言ってみれば、〝Speculation〟すなわち「いま・ここ」から遊離した現在の在り方や未来を思索する、そのようなデザインとリサーチが総覧された書籍となっています。では、海外の言説においてSpeculationというキーワードは現在どのように語られているのか。この問いを端緒にして、今月の座談会を始めていきたいと思っています。

瀬下:ちょっと読者に寄り添ったかたちで言い換えると、今月号はアート&デザインに関する海外の読み物(主にウェブ)を紹介する機能もあります。後半では太田くんによる媒体リストも掲載されてるのでお楽しみに!

太田:そう、本マガジンのネタ元が割れるという、ぼくらにとってはある意味危険な特集です(笑)。ぼくと似たような関心をお持ちの方にとって参考になれば幸いです。

瀬下:そもそも国内には『10+1 website』『artscape』『美術手帖』とかありますよね。比較的新しめのものだと、『HAGAZINE』も興味深くチェックしています。

太田:「人新世とデザイン」を特集した5月号で引用したダナ・ハラウェイのインタビューは、『HAGAZINE』が掲載媒体でした。

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