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SES残酷物語(エピソードⅡ)

SES残酷物語(エピソードⅠ)の続きです。

今回は主人公タケシの研修終盤からエンジニアになる前までのエピソードを公開していきます!

6. 終わりが見えてきた研修

タケシの研修は8ヶ月目を迎えようとしていた。入社前は3ヶ月程度の研修と聞いていたが倍以上の期間を掛けてしまっていた。

タケシの研修も終盤に向かっており、今は勤怠管理システムのデモアプリを開発中だ。社内のメンターにコードレビューを貰い、日々レビューに沿って修正していく作業が続いた。

そんな中、営業担当からエンジニアとして配属するためのオリエンテーションに参加するよう連絡がきた。

営業「来月からエンジニアとして客先常習するために面談の練習するからね」
営業「面談練習の前にオリエンテーションするから」
タケシ「はい!わかりました!」

長かった家電量販店の勤務も終わりに差し掛かり、タケシはやっとエンジニアになれるんだと歓喜した。

7.オリエンテーションでのジレンマ

研修課題も終わり残すは面談練習だけとなる。タケシはオリエンテーション当日を迎える。

営業「まずは正式にエンジニアとして契約するからこの契約書に署名して」

この会社では家電量販店の研修とエンジニアとして勤務する場合は異なる契約書に署名する必要がある。違いはざっくりいえば給与が22万に上がるということだ。

営業「福利厚生の説明や社内のエンジニア用のチャットワークに招待するね」

エンジニアとして現場に出る場合、エンジニア用のチャットワークで勤怠管理する。当月の勤務状況をエクセルに書き込み、月の最終日に営業担当者へ連絡する仕組みらしい。

そして、次に耳を疑うことを言われる。

営業「経歴についてだけど、1年半ぐらい経歴を盛って面談組むから」
タケシ「???」
営業「この業界、未経験はテスター案件しか入れなくて成長が止まっちゃう人が多いんだよ」
営業「せっかく研修頑張ってきたんだから、タケシを開発現場で経験積ませたい!」
タケシ「それは・・ありがとうございます」
営業「ウチの研修カリキュラムをこなした人は現場では充分通用するよ。カリキュラムの評価も高いしね」

タケシは経歴を詐称して現場に入れられることに大きな戸惑いや不安を感じた。でも、営業が言うように未経験で開発現場にアサインできるなら爆速に成長できるし。。。

こうして、タケシは経歴問題についてジレンマを抱えることになるが、ここまで研修を頑張ってきたこともあり営業に返せる返事は1つしかなかった。

タケシ「経歴を盛ることについて承知しました。宜しくお願いします」

なぜもっと早く経歴を盛る話をしてくれないのか?

なぜ面談練習が始まるタイミングでこの事実を公開するのか?

タケシは心の中でSESはそういう業界でみんなやっていると事だと自己防衛のため自分に言い聞かせた。

8.面談練習で当然苦労する

タケシはエンジニアデビューするために営業と面談練習を重ねていく。

営業「これまでの経歴を簡単に教えてください」

「これまでの経歴? まだ研修上がりだよ★」とは言えず、盛った14ヶ月分の経歴を自分なりにストーリーをつけて説明していく。

営業「SQLはどれくらい書けますか?」                営業「得意なことはありますか?」                    営業「インフラについてどれほど知識がありますか?」
タケシ「カクカクジカジカ・・・」
営業「面接苦手なの? もっと自信持って良いよ」

経験していないことを無理やり話すのだから苦手も何もないわ!とは当然言えるはずもなく「すみません、頑張ります」と言うしかないタケシ。

このあと3回ほど面談練習をして、本番を迎えることになる。

9.初めての客先面談でほぼ放置される

面談練習中に営業を掛けてもらっていたタケシ。営業から本日20時に面談が入ったと連絡を受ける。

電車の中では盛った経歴を間違えないように何度も経歴書を見直し本番に備えていた。この時、盛った経歴ではなく本来の経歴で面談に臨むならこんなことしなくて良いのにと後悔ばかりが押し寄せる。

面談場所に到着すると既に2人の他社エンジニアが着席していた。どうやら、募集1人の案件に多数の応募があり今回は3人が同時に受けるらしい。

--------面接本番--------

面接担当者「今日は宜しくお願いします。」                                                        面接担当者「簡単に経歴から教えてください」
一同「カクカクジカジカ」
面接担当者「ではAさんにお聞きしたいのですが」
面接担当者「ではBさんにお聞きしたいのですが」

--------30分経過--------

面接担当者「再度Aさんにお聞きしたいのですが」
面接担当者「再度Bさんにお聞きしたいのですが」

--------面接終了--------

結局タケシに質問は来なかった。タケシのデビュー戦は経歴を紹介しただけの面談となった。

営業「面談どうだった?」
タケシ「経歴紹介して終わりましたね。僕にだけ質問なかったです」

翌日、絶対落ちたと思っていたが営業から合格の連絡がきた。

営業「案件決まったよ」
タケシ「え??マジですか?」
営業「先方は若くてフレッシュな人を求めていたらしいよ」

面談中は全く質問が来なくて落ちたと思っていたが、どうやらAさんとタケシの2人が現場にアサインされるらしい。

14ヶ月の経歴を盛られた未経験エンジニアが現場に入った場合、悲惨な未来しかないのは確実だがタケシにも当然災難が降りかかる。

続く。

次回はエンジニアデビューしたときの悲惨な話を書きます。


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