SES残酷物語(エピソードⅢ)
SES残酷物語(エピソードⅡ)の続きです。
経歴を14ヶ月盛って面談に挑んだ未経験エンジニアのタケシは落ちたと思っていた案件に参画することになる。
案件はPHPのフレームワークで新規開発をするらしい。
メンバーはタケシを含めて4人のチームだ。もちろんメンター などいない。
現場リーダー「タケシくん、宜しく。リーダーです。」 現場リーダー「早速だけど、環境構築を午前中に終わらせて午後からは詳細設計を担当して欲しいんだ」
タケシ「わかりました。今日中に設計書作り始めるように頑張ります」
現場リーダー「工数も自分で見積もって、slackで送ってね」
当然、タケシは詳細設計など書いた事も見た事もない。
まずは環境構築を終わらせないといけないのでタケシは手を動かした。
環境構築はチームで共有されていた手順書に従いDockerコンテナを立ち上げるところまでいけば完了だ。Dockerについては研修でも習っていたのでなんとかなった。
タケシ「環境構築終わったので、詳細設計に入ります」
現場リーダー「詳細設計はGoogleドライブに他の人が書いた見本があるからそれを参考に作ってみてね」
詳細設計についても、なんとかコピペで済みそうだ。
初日をなんとか乗り切ったタケシはその日の夜に歓迎会があると聞き、案件先の方々と交流を深めるためにも金欠ながら参加した。
現場リーダー「現場にはすぐ慣れそうかな? 期待してるよ!」
タケシ「大丈夫です!明日からも宜しくお願いします!」
皆優しい人ばかりだったのでタケシはこの現場に決まって良かったと心から感謝した。
お酒も進み良い気分になっているとリーダーから1つの質問を受けた。
現場リーダー「タケシくん若いけどいつからエンジニアとして働いてるの?」
タケシ「最近ですよ!先月研修終わってやっとエンジニアになれました!」
チーム一同「え?」
現場リーダー「経歴書には1年以上経験あるって書いてたよね?」
タケシは酔ったあまり自分が経歴について、つい口を滑らせてしまった。
そこからタケシは記憶がない。
翌日の早朝、自社の営業から電話があり飛び起きた。
営業「昨日の事覚えてる?先方と調整がつくまで今は自宅待機してて」
タケシ「わかりました、本当に申し訳ございません。」
タケシは昨日の事を思い出し、酔って自分の経歴詐称がバレてしまった事で自分がこの先どうなるのか大きな不安を抱えた。
次の日の朝、自社の営業から再度電話がありタケシは目を覚ました。
営業「これから本社に来れるかな?今後の対応について話し合おう」
それから、タケシは急いで本社に向かい狭い会議室で話し合いが始まった。
営業「お客さんからクレームの電話が入ってね」
タケシ「経歴詐称がバレた事ですよね?」
営業「そうそう。うっかりだとしても会社の信頼を損なう行為だよね」 営業「会社の信頼を損ねたペナルティとして、もう1度研修に戻ってもらいます」
この話し合いの後、正式に会社の対応が決まりタケシは会社の信用を損なったとして家電量販店での長期研修に逆戻りとなった。
その後しばらくしてタケシは会社を退社した。
タケシが会社を去ってから半年ほど経った時、国民年金の未払い催促封筒が会社の寮に届いていたがタケシは音信不通らしく今何をしているのかわからない。
おわり。
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