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満州からの手紙

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満州からの手紙
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#満州

満州からの手紙#1~#5

満州からの手紙#1 お母さん。 元気で暮らしているでしょう。 先月の二十六日以来、今日迄( 二十二日夜) 一ヶ月近くも通信することをとめられていたのでお便りが出来なかったのです。 お父さんは相変らずお務めに忙しい毎日を送っておいでに成るでしょうネ。自分は勿論常変わりなくピンピンです。元気で御奉公していますから安心して下さい。  次に今日小包がとどきました。軍用犬は名前を目下考案中ですからいずれ後便でお知らせしましょう。マスコットにします。  宮本の叔母さんからの送

満州からの手紙#6~#10

満州からの手紙#6 お父さん。 後五ツ寝たらお正月ですネ。 『もう五ツ寝たらお正月だよ。』 幼い頃よくそう言われたお父さん達のあの声を今なお懐しく懐しく思い出します。 お父さん。僕達もお父さん達も又ーツ年をとってお爺さんに近づくのですネ。僕も今度の正月を向かえば明けて二十四才の春を向かえる訳です。  昔、紫野の大徳寺に一休と言う非常に名識の高い坊さんがありました。その人はお正月を歌いよんで、 『門松は三途の川の一里塚 めでたくもありめでたくもなし』 と言われて、元旦早々人間

満州からの手紙#21~#25

満州からの手紙#21 お母さん。 たびたびお手紙ありがとう。 又、今日は待ちこがれていた小包を確かに受け取りました。とてもとても嬉しく思いました。本には餓えていたのでさっそく読みはじめました。 ほんとうに有難う。 『親思う心に勝る親心 今日の訪れなんときくらん』 孝心深い松陰先生のうたわれた {三/ミ} {十/ソ}{一/ヒト} {文/モ} {字/ジ}(和歌)を心に思いうかべて『吉田松陰とその教育』の本を読んでいると胸にジイン!!と生温かいものを感じて来ます。    お母さん