博士とアトム

あとむ
アトム
Atom・・・・・・・・・・・・

君がアトム君か、あの噂の
私の名は、お茶の水博士
君には一度会いたいと思っていたよ

ちょうどウチの子供も
君と同じくらいの背の高さだった
何処となく君と息子は似ている

まあ、そこに座りなさい
いま、お茶をいれるから
君には色々と聴きたいことがあってね
私はこう見えて、この国を代表するような
研究者なんだ
最近は主に、ロボットを作っている
Android(アンドロイド)

ニンゲンという生き物には
感情(心)がある
然し、アンドロイドには心がない
基本的にはね
それは、時には非常に便利にもなる
私の製品である彼らは疲れを知らない
疲労の概念は与えなかった、あえて

その理由がわかるかい?
アトム君、君には?

ココだけのはなしをしよう
すべてのロボットは
ニンゲンが生活をしやすくなるために
存在しているんだ
ロボットには権利がない、一つも
自分の心を持たないから
選択することができないんだよ
『スキ』という感情は持たない
『キライ』という感情も
基本的には
優先順位として選択するための
プログラムはあってもね
そこに個の感情は存在しない

私がこの国の企業から
アンドロイドの発注を受けた時
彼らは私にこう言ったんだ

『ハカセ』
『誰にでも』
『使い易いのをお願いします』

実際のところ、そういう注文が
私は一番キライなんだ
自分の欲を満たすことしか考えていない
それが、コトバに、顔に表れている

アトム君
君はホントに私の息子に似ている
まるで、生き写しのようだ

私の息子は
10年前に消えてしまったんだ
私の前から完全に
きれいな顔をしていた
あの日、なくなった時も
忘れられないな、やっぱり
ホントに悲しくて、寂しいことは
幾つになっても

すまない
話がつい長くなってしまった
お茶は飲んでくれたかな?

実は、今回、君を呼んだのは
君に頼みたいことがあるんだ
私から

この星
地球を救ってくれとは言わない

私は
君にはニンゲンとして
自分の人生を歩んでほしい
だから、君のプログラムに
感情、心、精神を追加したいんだ
もしも、君がそれを望むならの話だよ

『お茶の水博士、ボクは』
『このままでかまいません』
『ニンゲンにはなりたくありません』

『いまはまだ』
『ボクにはやらなきゃならないことが』
『ありますから』

『博士にはとても感謝しています』
『息子さん、きっと大丈夫ですよ』
『いまはもう』
『後悔はしていないと思います』

『あなたの子供に生まれて』
『あなたに出会えてホントによかったと』
『ボクにはそう聴こえました』

『そして』
『また博士にお会いできる日を』
『楽しみにしています』
『ボクも』

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?