ドウジンシ

ただ
淋しいだけの時間

涙もでなかった
泣けなかったぼくを
コドクな心を

舐めると
きれいに破ける
薄っぺらい
オブラートで
包み込むように

彼女の歌だけが
そこにあった

敗戦も
知らないような
人々の子供たち

そのぼくに
個の自由を
叫ぶようにして

運動には
参加しなかった
何のポリシーも持たない
その態勢に

名前のない
誰かは
失望することもなく

人々の記憶は
この世界を
構成する酸素は
だんだんと
次第に
薄まっていった

蜂蜜ではない
シロップとは呼べない
砂糖水のような
甘ったるいだけの液体で

満たされた
飽和した時間
決して
充たされない心を

数学の公式で
正確に
求められた
単に
それだけの理由

平和は
やがて
訪れたのだろうか?

君にも
ぼくにも
歌う彼女にも

それは
いまはもう
わからないこと

知る由もない
永遠に

冷たくなった風が
青く澄んだ
遠い空

白い雲が
ながれていく

ただただ
左に
ながれていく

優しく
弱々しく

無気力な
ぼくの頭を
撫ぜるだけ撫ぜて
そのメロディは止んだ

そして、また
夏が終わった

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