気になるあいつは宇宙人

月影織姫はいわゆる学園のアイドルなどと呼ばれる女子生徒だ。流れるように綺麗な黒髪にモデル顔負けの顔、学年トップクラスの成績という才色兼備の優等生。それでいて才能をひけらかすことはなく誰に対しても優しい性格の良さ。人気にならない要素が見当たらない。

彼女に告白しものの見事に玉砕した男子は数知れず。全員が丁重にお断りされたという。

かく言う俺、大空朝陽も彼女に興味がないといえば嘘になる。月影織姫とは中等部1年の頃から同じクラスだ。彼女と初めて話した日は今でも鮮明に思い出せる。俺が彼女を意識したのも、この時からだと思う。

しかし、それ以来月影織姫とは高等部1年の今に至るまでろくに会話できていない。元来引っ込み思案な性格のせいもあるが、学園のアイドルと付き合うなんて正直夢のまた夢だと思っていた。

だが、運命のいたずらというやつだろうか。彼女との距離は、あの出来事を経て大きく縮まることになった。しかも、とんでもない秘密とともに。

どんな人間でも秘密の一つや二つ抱えている。それは学園のアイドルだって例外ではなかった。

俺が彼女の秘密を知ったのは5月のある夜。夕飯の後、コンビニでアイスを買った帰り道、俺は月影織姫に出会った。

その時出会った彼女は……俺がよく知る彼女ではなかった。

顔立ちこそ見慣れた月影織姫だが……その容貌は、異様の一言だった。白と浅葱色のグラデーションの髪。赤い瞳。人間にはまず生えていない触手。
俺が知ってしまった、彼女の秘密。

「私、宇宙人なの」

月影織姫は、宇宙人だ。

【続く】

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