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アオイの結婚 12

デート

ラッキーなことに、いつも行列していて入れなかった、串カツ屋一番人気の店『だるま』に入ることができた。
なんだか幸先がイイぞ。

とりあえずビールで乾杯! イイ感じにお腹も減っていたので、とにかく食べる。

「あのー、お見合いって…。」

aki さんが、以前私が blog に書いた『お見合い』の顛末について尋ねてきた。

私自身も、実は『お見合い』は苦手なのだが、それも可能性のひとつだし、「結婚したい」と言っておきながら、「お見合いはイヤ」というのも何だかスジの通らない話なので、お話があれば取り組むことにしている。

しかし、さすがに私の年令での見合いは、かなりキビシイものがある。
男性は、結婚相手は年下が良いというのが多数派である。
女房とタタミは新しい方が良いのである。
(別に私は古くはないつもりだが…。)

だからお見合いの場合、先方は年上であることがほとんどだ。
そして結婚したことが無い方の場合、何だか「気持ち悪いオーラ」が出ていることが多い。
自分のことは棚にあげて恐縮だが、

「だから独身なのか」

と思わず納得してしまうタイプなのである。

お見合いに積極的な男性で、40歳近くになって結婚歴がない人はこういうのが多い。
女性はそうでもないのだが、これにはちゃんと理由があるように思う。

おそらく私を含め、そういう女性はハンターなのだ。
積極的にこれと思った男性を追いかけてしまった為に、うまくいかなかった人たちなのである。

対して男性は、その年になるまで自力で女性を獲得することができなくて、お見合いに最後の活路を見い出そうとしている人たちである。
さもありなん、である。
生意気ですみません。
でも、ホンマやで。

話を串カツ屋に戻そう。

aki さんが私に最初に尋ねたことは、私の『お見合い』についてだった。

本来、自分はあまり気が乗らないのだが、紹介してくれる人は私の行く末を心配してくれてのことなので、一応はお会いすることにしている、と正直なところをお話すると、ホッとした表情を見せた。
お? 気になるんだな、よしよし。

串カツを頬張りながら、とりとめのない会話を続ける。
私は、今日はお酒は控えめにしていた。
酔っぱらって、ハンター的な行動に走らないためである。
しかし、酔いがまわらないため、緊張はあまりほぐれず、結局たわいのない会話に終始してしまっていた。

(まずいな…)

内心そう思いつつも、なかなか調査は進まない。

串カツ屋を出て、再び新世界をウロウロしていると、トイレに行きたくなってきた。
このあたりのトイレは、あまりキレイそうじゃない。
困った私がひらめいたのは、新世界に隣接している『フェスティバルゲート』という遊園地だった。

ここはオープン当初は「夜に営業している遊園地」として、結構賑やかだったのだが、最近はすっかり廃れてしまって閑散としている。
でもトイレはキレイで、私は何とか用を足すことができた。

少し中を散歩した。
上の方まで上ると、結構な夜景が見渡せる。
歩いていると、突然電飾のキレイな柱に出くわした。

「ふわぁー」

しばし言葉を失った。

人はほとんどいない。
ロマンティック一人占め(2人?)だった。

イイ雰囲気で、そのまま街をそぞろ歩き、なんと駅に到着してしまった。

(あぁぁぁ~、しまったぁ~!)

結局私は aki さんのことを何ひとつ聞いていない。
名前すら…。

「今日は案内どうもありがとう。楽しかったです」

(うわー、何やってるのよアオイ! aki さん帰っちゃうじゃないのよ!)

勇気を振り絞って話しだした。

「こちらこそ、ごちそうさまでした。ありがとう。ごめんなさい、私名前もちゃんと名乗ってなかったですね…」

「葛城アオイさんでしょ?」

「え? どうして知ってるの?」

「アオイさんのメール、ちゃんと名前が出る設定になってますよ(笑)」

なんてマヌケなんだ?! アオイよ!

「あの、aki さんは?」

「青山アキヒサです」

「そうですか。あのできたら名刺頂けませんか?」

「ごめん、実は今日会った人に全部配っちゃって無いんですよ」

(ちょっとガッカリ…)

「そですか。ところで aki さんってお幾つなんですか?」

「永遠の30歳です」

「ハァ?」

「いや、こんなだから若く見られるんだけど、実は結構いってるんです」

aki さんは、急に自信なさげに答えた。
何だか、これ以上追求したら、可哀想な感じだったので、聞くのはやめた。

「また出張があったら、連絡します。ホントにありがとう」

「おやすみなさい」

本日のデートはこれにて終了。
悪い印象は与えていないようだが、さしたる成果もなし。

ああ…、自己嫌悪。

いや、これでいいのだ。

急ぎすぎる恋は失敗する。デートの4つの段階を時間をかけてゆっくり体験するのだ

この人と結婚するために―恋の始まりからプロポーズまで相手の気持ちを離さない愛のルール(知的生きかた文庫)

と、ジョン・グレイ先生も言っているではないか!

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