エリート子女達の浅はかな夢

そもそも欧米左翼って、文明化が行き過ぎた結果、抑圧されたお坊ちゃん、お嬢様の浅はかな夢の産物だったんではないかと思う。
サウンドオブミュージックとか、ルソーのエミールとか、アルプスの少女ハイジとかフロイトの精神分析とか見てると、ブルジョワ階級の子女達の鬱屈が見て取れる。みんな大体人工的な教育環境を抜け出して、豊かな自然に立ち帰ろう、という話だ。
毎日安全で高品質で、物質的には何不自由ない暮らしが出来るんだけれど、とても厳格で人工的な教育を受けて精神的には不自由な生活を余儀なくされる彼女達。
フロイトのクライエントは大体が金持ちの子女だったけど、彼らの性的抑圧は相当強いものだったようだし。深窓の令嬢や坊ちゃんが、窓の外を見つめてつぶやいたかもしれない。
「ああ、庭の小鳥達やめいいっぱい自然と触れ合える下層階級の子供たちの方が余程自由で楽しそう。」
だから彼らは階級闘争や環境保護やエコエネルギーを好むんだろう。
農村の庶民達から見れば、なんて浅はかな羨望かと思うだろう。毎日野放図な自然の手入れをして、収穫を得ないと生きていけないから、畑を食い荒らす害虫や、台風や日照り等自然の面倒臭くて理不尽な面にも振り回されている。村人達にとっては自然なんて楽しくも何ともない、ただただ厄介な存在だったかもしれない。だからこそ文明化を目指したのだから。
だけど村人達が想像も出来ない人工的な環境で抑圧されているエリート子女達は、全ての問題は人工的な支配構造によって起こるもので、そこから人々を「解放」しさえすれば、豊かな自然とともに誰もが共存する理想の世界に「戻れる」ようになるのではないかと考え始める。
だから彼らは階級や宗教、文化を破壊して、原始人を美化したがるんじゃないだろうか。
左翼は弱者救済等唱えることがあるけど、結局は抑圧されたエリート階級の自分自身を解放したいというのが一番の動機だと思う。だから階級闘争と言いながら、しばしば実際の下層階級の欲求とはズレたことを主張するようになる。
全て西欧のエリート階級の子女達という、非常に特殊な環境にある者の利害に沿うようにしか設計されていないから、その他の異なる宗教・地理・文化の中にいる者からすると理解出来ない話が多いのだ。
人権擁護というくせに原始人を美化していたり、反資本主義というくせに女性が労働市場に出ることは支持していたり、弱者擁護というくせに同じ教義を持つキリスト教を否定していたり。
実際には原始人の方がミッドサマーのような残虐な生贄の儀式に勤しんでいたり、知識が無いから弱者ほど宗教や迷信の犠牲者になりやすかったりするし、キリスト教は世界でも類を見ないくらいリベラルな方の宗教だ。
世間知らずな坊ちゃんやお嬢様が、当事者の意見は度外視して組み立てた机上の理想論という感じがするから、最近はすっかり左翼嫌いになってしまった。

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