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哲学の部屋「所有物」

すなお この前さあ 俺んちの石を
     勝手に取っていった奴がいてさ
哲人  ん?俺んち?いし?
すなお 買った石ではないよ
    でも ずっと俺んちの
    入口んとこに あった奴なんだよね
哲人  なるほどそれがなくなったの?
すなお そう
    石なんてどうでもいんだけどさ
    人のものを勝手に取るってさ
    どういう神経してるんだか
哲人  はーくしょん
    あーごめんごめん
    その石はすなおの物なの?
すなお 俺のってわけじゃないけど
    俺んちの敷地の中だから
    俺んちの石でしょう
哲人 (あーそこにいるのか)
  すなおからの景色
  物や土地は所有できる
哲人  この机はすなおのもの?
すなお (あ始まった!)
    いやいやこれは哲のでしょ
    これ哲が買ったでしょ
哲人  へー
すなお へー ってなに
哲人  空気はセーフ
すなお セーフって(笑)
    そうセーフだよ
    空気は誰のものでもないでしょ
    売ってないし
哲人  よかったー
    じゃあいっぱい吸おうっと
すなお あの石はさ 俺んちにずっとあったの
    だから 取った奴にむかついてんの
    悪い?
哲人  悪くないよ
    自分のものとそうじゃないものは
    どこで別れるのか?に興味がある
すなお だから 石は敷地の中だからだよ
哲人  でもさ入口にあった石でしょう
    知ってるよそれ
    半分は敷地の外に出てたよね
すなお まあそうだけど
哲人  その石はすなおが死んでもすなおの?
すなお 俺が死んでも俺のだよ
    家の土地があるからね
哲人  生まれる前は?
すなお ???
哲人  すなおが生まれる前は
    すなおの石だったの?
すなお おー フリーズすんぞ その質問
    生まれる前は俺自体の存在がないから
    俺の石ではないな たぶん
    あっ待ってじいちゃんの土地だから
    じいちゃんのだな
哲人  なるほどね~
    だいぶすなおの 持ち物が見えてきたよ
    では 「俺の」漬物を半分分けてあげるよ
すなお あっ!その石!
哲人  ごめん 大きさがちょうど良かったから
    勝手に使った
すなお 煙に撒こうとして失敗したな(笑)
哲人  ごめんっ

所有という妄想
僕らは持ち物があると認識している。それはあたかも我が物であり、自分だけがそれに何かをすることを許されている。これは妄想の一つだ。だが目に見えていることと法律でも守られていて所有という強固なイメージを我々に形作る。そこに転がる石は誰のものなのか? 石、土地、空気、お金は誰のものか? 我々の身体も同じだ。自分のほほを触ってみてほしい、この皮膚や肉は昨晩食べた豚肉でできている。その豚肉は豚として数ヶ月前は牧場て歩いていた。我々は100年後には皆死んでいる そして焼かれたり 土に埋められたりして 植物や微生物の一部になっていく 我々のこの身体もめぐりめぐる大きな循環の中にある そしていつかは宇宙のチリになる 今日はその1コマだ 所有とう概念を手放す時はすべてを手にすることとなる さて すなおの家の入口の石は誰のものだろうか?

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