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交通弱者の強み

うちは両親がクルマはもちろん運転免許も持っていなかったのと初めて取った運転免許が原チャリだったため、ぼくは「車道を走る」ということをまともにやったことがないまま、ほかのクルマもたくさんいる道路デビューしました。

周りからしたらホントに迷惑な存在だったでしょうね。たった50問の試験に合格しただけなんで、交通法規なんてまともに知らない。

で、運よく数10年間バイクに乗り続けても死ななかったため、バイクに乗っていた人間特有の勘(危険予知と周辺視)が身についたように思います。

痛いといろいろ覚える

程度の違いはあれ、人間も動物も痛いのはイヤなので、痛い思いをすると次からはそうならないように覚えるなり工夫するなりするわけですよね。

飛行機のパイロットではその方式だといろいろ大変なので高額なシミュレーターを使ったりして訓練するわけですが、文無しの原チャリ坊主にそんな高級な訓練はない。体で覚える。

カーブを曲がったらおばちゃんが道路の真ん中にいて、避けるとそっちへ来た、とか、目の前のタクシーが突然左折した、とか、わけのわかんないことが現実の道路ではしょっちゅう起こる。

で、理屈というよりはとにかくおんなじふうにならないようにしよう、というふうにいろんな感覚や考え方が身についていくわけで。

「なんかやだな」が見えてくる

で、見通しの悪いカーブの向こうにはおばちゃんが立っているかもしれない、やだな、とか、タクシーってのは客が無茶言って急に曲がるかもしれない、やだな、っていう視点で見るようになる。

やだなとおもっているので、そういったポイントでは用心深くなり、数をこなしていくうちにさらに細かく「やだな」の内容がわかります。なにしろ痛い思いするのはこっちなんで感覚が鋭敏になっていく。

鋭敏になっていく前に死んじゃうことだってあったはずなんで運がよかったってやつなんですけどね。

そのうち、なんかやだと思った車の前輪を無意識に一瞬だけ見たり、運転手の様子に違和感を感じるようになるものです。

お縄も怖い

バイクはクルマとかなり違った動きをするので(ホントはダメなんだけど)、まあよくお縄になったものです。

バイクはクルマと違って後方の視野がないに等しい。特にハンドルミラーなんて飾り程度で、のぞき込まないと空しか見えない始末。

しかし、おまわりさんは後ろからやってくるのが普通。

まあ、事故防止にも通じるものですが、お縄が怖いといつしか視野が広くなります。視野の端の方で「なんか白いのがいる」とか「さっきはいなかったよね」とか形は見えなくてもいいので検出できるようになるだけでずいぶん違います。たぶん周辺視というやつでしょう。

とはいえ、バイクに乗っている以上お縄になる確率はクルマよりはるかに高いと思うけど。

得したこと

まあ、ケガしないですんだとか得したことは数知れずなんだろうけど、一番「儲かった!」って思ったのは限定解除試験。

外周を威勢よく加速していたら次の順番のお姉ちゃんがコースに入ろうとしてて、「あ。やだな」と思った。

緊張していたのかそもそも初心者なのか、案の定、こっちも見ないで一時停止もせずコースへ入ってくる。こっちに驚いて転倒。

しかしこちらはもうブレーキの準備してたので後輪ロックすることもなく(ロックしたら即検定中止)10mくらい手前で停車し、左合図右手挙手。

こわもての試験官が感動気味に、「あれがホントの短制動だよ!」と合格させてくれました。

帰り道にお姉ちゃんが「さっきはすみませんでした」と言ってきたので、「いえいえ、おかげさんで合格しましたよ」といったらすげえムカついたようだった。だってホントのことだよ。

草食動物の目

バイクに乗って肉体と精神(そしてお縄による財政面)を鍛えられた結果、サバンナの草食動物のように用心深く臆病になることができました。

いまはクルマしか運転しませんが、クルマしか知らない人に比べて周りをよく見れていると思います。ま、ルームミラーというバイクにはない画期的な装置のおかげもあるんだけど。

息子もそろそろ運転免許を取れる歳になったので、ぜひ草食動物の目を身に付けてもらいたいですね。まあ、自分とは違った方法で。2回死にかけて、1回はホントに死んだと信じ込んだので。

VRだのがこれだけ発達してきたんだから、「感じるシミュレーター」でも作ってもらって免許を取る前にみんながこてんぱんに怖い+超痛い思いを50回くらいすれば危なっかしいドライバーも事故も減ると思うんですけどね。

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