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鳩の撃退法/佐藤正午

伊坂幸太郎がLSDやりながら書いたような文章。
伊坂幸太郎の文章だけでも好き嫌いがはっきり別れるのに、そいつがラリって書いたんだから、尚たちが悪い。

これは、中島らもの受け売りだが、ドラッグにも貴賎があり、貴いドラッグは摂取から酩酊までの間に人間としての尊厳が残され、徐々に酩酊に至る物を良しとするらしい。つまりはドラッグにも風情があり、その風情から外れるものは賤しいドラッグなのだそう。

そういう意味では、この小説はドラッグの最高峰たる物で、読み始めてから、無意味な伏線回収とめちゃくちゃな時系列の行き来に揺さぶられて、まるで薬が血管を回っていくように徐々に、徐々に効いてくる。そして、最後の50ページを読むときには既にキマッてハイになっている。その時にはもう遅い。
そんな読後感を味わえる、読むドラッグみたいな作品だ。
上下巻合わせて、千ページ超。ドラッグとしてのコスパは悪いが、エンターテイメントとしてなら超一流。そんなブツがこの世にあっても良いでしょう。

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