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台風22号襲来

僕は実家に住んでいる。

そして1年付き合っている彼女がいる。

僕は平日は仕事なので、休日に一人暮らしの彼女の家に遊びに行く。そして日常的な出来事や愚痴などを語りながらゲームをしたり、YoutubeやAmazonPrimeなどのメディアを使い動画を見る。

そんな変わらない日常が僕は好きできっと彼女もそうであると思っていた。

しかし昨日、台風21号が去ると同時のタイミングで、刻一刻と変化という台風が近づいてきていた。

いつものように僕がご飯を作り、それを肴にお酒を交わす。そしていつものように隣に座りゲームを始めようとした時だった。彼女が「同棲したい。」と口にしたのだ。それは鈴虫の羽音のような小さな掠れた声であったが、自分にはエフェクトがかかったかのようにはっきりと聞こえ、その言葉が何回も反響した。自分の心臓の鼓動の音もまるでドラムのように大きくなった。お酒で少し回転が悪くなった頭でなんとか答えを出そうとした。しかし、この日常が崩れることへの恐怖が先行し頭を支配した。僕はこれまでの状況に甘えていただけだった。彼女はこの先のことをしっかりと考えていて、僕が同棲するに値する人間だとして、評価をしていたのだ。彼女の方が大人だった。

30秒、いや3分はたったかもしれない。僕は声を振り絞り、「同棲しようか。」と一言だけ空に放った。忽ち、彼女は泣いた。包み込むように抱くとみるみるうちに服が濡れていった、それはまるで台風の時の雨のようであった。

30分ほど経った頃、突然涙は止んだ。彼女はそのまま寝てしまったのだ。台風が過ぎたあとの晴天のようなとても穏やかな表情だった。

この先、台風や嵐のような出来事が起こる事があっても、彼女の傘になろうと心の中で誓った。



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