フリーランス薬剤師レポート2 ~変化する時代を生き抜くために~

かなり泥臭い文章なので冷やかし防止のため当初有料としていましたが、そもそも興味がなければこんな長い文章読む人いないだろうと考え直し無料公開することにしました。


はじめに

目に留めていただきありがとうございます。おおくぼみおです。約2年「フリーランス薬剤師」をしておりました。前回はフリーランス薬剤師がどんなものかざっくり紹介させていただきましたが、今回はさらに掘り下げて、実際どのように運用してきたかお伝えしていきたいと思います。自己流で偏りがあるため、これが正解というわけではありません。もっとこうすればよかったとかしくじった部分もたくさん載せています。参考になりそうなところをひろっていただいて、少しでもお役立ちできればと思います。

なぜフリーランス薬剤師をやろうと思ったか
フリーランス薬剤師って実際何をするの?
始めるのに苦労した点
需要は?利用する側のメリットは?
派遣薬剤師との違いは?
フリーランス薬剤師の活用方法
どうやって仕事を取ってきたか?
どんな薬局に行ってたの?
収益は?正社員と比べて給与は?
フリーランス薬剤師に必要なスキルは?
フリーランス薬剤師で大変なことは?対策法は?
フリーランス薬剤師の仲間たち
何から始めればいい?
法人か個人事業主か?
フリーランス薬剤師はとにかく体調管理が大事
節税対策(法人成りした一人社員の場合)
必要なツール

おわりに

【なぜフリーランス薬剤師をやろうと思ったか】


薬剤師の仕事自体はとても楽しかったのですが、薬剤師のスタンダードな働き方にどこか限界を感じ、気づけば起業していました。仕事の内容そのものというよりは、私の価値観によるところが大きいと思いますのでまず私の感じる価値観を吐き出していきます。


仕事は好き
無駄な事や価値のないことに時間をかけたくない
古き悪しき習慣が嫌い
面倒くさがりだけど意義あること、放置して後々もっと面倒になることはさっさとやる
人にあれこれ言われてやるより自分で考えてやりたい
同じことを続けるより、形になっていないものを作り上げていくことにやりがいを感じる
他人に興味がない、ふりまわされたくない、別に好かれなくて平気
人と違うことをやってみたい
大規模で複数の歯車に組み込まれるより、個で完結したい
無理も楽もしたくない


こんな感じなので、人に使われるのも使うのも無理なのかなと。それで「やりたいこと」をやるのではなく、「やりたくないこと」をやらないために起業しました。


正社員やパートでは
働く人や場所などの環境を自分で選べない。会社が決めたルールを根底から変えられない。


薬局経営は自分で自由にできる部分も多くなるけど、
店舗や従業員や在庫を抱える重圧、近くのクリニックとの関係性など新たな不安材料が増える。


派遣でも
高いマージンを取られ、派遣会社側にメリットがあるような案件を勧められがち。職場に属するわずらわしさは減るかもしれないが、全て自分の思う通りにはいかない。


そんなわけで、身軽な人生を送りながら薬局業界に役に立てることはないか考えていたら既存の選択肢からはみ出してしまい、フリーランス薬剤師に行き着きました。


【フリーランス薬剤師って実際何をするの?】


はっきり言って薬局薬剤師業務とほぼ変わりないです。主に調剤や投薬です。薬剤師業務を行いながら業務相談に乗り改善提案などもしました。他には受付やレセコン入力、会計や伝票整理、発注、電話対応などの周辺業務を行うこともありました。何をやるか、何をやらないかは自分で決めることができます。私は一人薬剤師OKとしていましたが、時間外の電話対応や閉局後の調剤対応はしないことにしていました。


【始めるのに苦労した点】


周りで同じことをやっている人が誰もいなかったのでどこから手をつければいいか分からず苦労しました。そして法律に関して一番苦労しました。


業務委託契約書を自分なりに作成して、弁護士に相談しに地元の法律事務所に行ったところ、薬剤師の業務委託は無理なのでは?と言われました。ですが理由が明確ではなく、詳しい説明を求めてもはっきりと回答していただけず、ここでは埒が明かないと判断し数分でその場を去りました。相談になってないのに相談料は請求されました。


法解釈上、業務委託が難しいかもしれないということは、私自身も最初から懸念はしていました。


というのも、


業務委託契約とは、雇用関係を結ばず対等な立場で依頼を受け、個人の裁量で業務を遂行することです。


しかし、


薬局の管理者、つまり管理薬剤師はその薬局に勤務する薬剤師その他の従業者を監督し、その薬局の構造設備及びその他の物品を管理し、その他その薬局の業務につき、必要な注意をしなければならない、となっています。


業務委託と薬局業務は指揮監督を受けるか否かという点で相反していて、弁護士に相談すればしっかりした解釈が得られるであろうと期待していたのですが、よくわからないけど無理かも、みたいなことを言われ終わってしまいました。


地元の法律事務所では離婚や相続の相談には対応できるけれど、これから始めることに対して新しく切り開くことは無理なのだろうか、自分がやろうとしていることはなんて面倒なことなのだろうと思うと同時に、このまま中途半端では終わらせない、そして絶対にあきらめないと思い、特に薬事法に強い専門家を全国から探そうと決めました。


それで、ダメもとと思いながらもSNSで情報を求めてみたら絶対この人しかいないだろうという人が意外にもあっさり見つかりすぐに相談しに青森から東京へ行きました。


どうにか課題をクリアしようやくフリーランス薬剤師を開始することができました。運用してからは割とスムーズだったので稼働するまでが本当に苦労しました。


これからフリーランス薬剤師を始めようという人は、私のようにゼロから検証する必要はないのでここまで苦労することはないですが、自分に適した契約書を作成し、不利になっていないか・運用に問題がないかリーガルチェックを行うと良いでしょう。


因みに、自分で会社を作って雇った人を薬局ヘルプに行かせるのは派遣にあたるのでNGと言われましたので注意してください。


【需要は?利用する側のメリットは?】


私が拠点としていたエリアでは需要は大いにありました。薬剤師の人手不足が深刻な地方だったこともあり、自分一人では間に合わないくらいでした。


利用する側のメリットは大きいと感じます。フリーランス薬剤師を活用すれば、従業員が有給を取れ、他の社員に負担が増えたりすることはないので気兼ねする必要もなく、満足度の高い会社となり、離職率の低下につながるのではないでしょうか。離職率の低下は経営側にとって精神的にもコスト的にも嬉しいことだと思います。必要以上に人員を抱え込む必要はなくなるし、かつ人員不足の不安もなくなる、新しい薬剤師を探す負担(紹介料や面談)も減らせるのではないでしょうか。


極端な言い方になりますが、時間と金と労力の無駄を減らし、できた余裕で有意義なことに使えると思います。


このようにメリットが大きいのは、フリーランス薬剤師が社員やパート、派遣薬剤師にはできない、柔軟でかゆいところに手が届くような対応ができるからだと言えます。


ただし、フリーランス薬剤師は単体だけでは成り立たず、そこで雇用されている従業員がベースを固めてくれているからこそ力を発揮できるのを忘れてはいけません。色んな働き方の薬剤師がバランスよく配置されて相乗効果を発揮できるものだと思っています。


フリーランス薬剤師はトランプのジョーカー的な役割ではないかと思います。メインのカードではない、ジョーカーではあがれない(完結できない)けど困ったとき役に立つ強いカードみたいなイメージです。


【派遣薬剤師との違いは?】


派遣薬剤師とフリーランス薬剤師は似通ったイメージがあるかもしれません。色々な薬局で短いスパンで派遣薬剤師として働くことをフリーランス薬剤師と言っているケースもありますが、本当のフリーランス薬剤師とは言えないと思っています。いずれにせよ自分に合った働き方ができればどちらでも良いかと思います。


違いとしては、


① 派遣会社のマージン有無


派遣薬剤師:派遣依頼をした薬局は、薬剤師と派遣会社に報酬を支払う。例えば薬剤師に時給3000円とすると派遣会社に1500円とか。
フリーランス薬剤師:フリーランス依頼をした薬局はフリーランス薬剤師(個人もしくは法人)のみに業務委託料を払う。例えば業務委託料1時間につき3500円。


フリーランス薬剤師を利用すれば、派遣会社へのマージンがない分支払う側は支払いが少なく、支払われる側はより多くの報酬をいただくことの両方が実現できます。


② スポット対応


派遣薬剤師:現在のところ日雇い派遣法が原則禁止のため、短期間の労働契約が難しいです。例外事由に当てはまる場合は日雇い派遣で働くことは可能ですが、当てはまる人は限られます。さらに契約期間には上限があり原則3年が限度となります。
フリーランス薬剤師:業務委託契約は単発も可能ですし、特定の薬局との契約が3年以上になっても構いません。


派遣社員は31日以上の労働契約であればたとえ月に1日だけの勤務でもOKですが、①で説明したとおり、薬剤師の報酬に対して派遣会社に支払われる金額が変わるため、派遣会社側の利益につながらないような低頻度の仕事をわざわざ紹介してくれるとは思えません。普段は人が足りているけれどこの日だけ、この短期間だけ薬剤師のヘルプを頼みたいという場合はフリーランス薬剤師が適しています。


③ 取引先


派遣薬剤師:派遣会社が薬剤師の希望に沿うような事業所を探してくれます。就業先は主に大手チェーンが多いと思われます。
フリーランス薬剤師:直接交渉し自分で就業先を探します。最近フリーランス薬剤師が少しずつ増えてきたのでマッチングしてくれるところも出てきているようです。中小規模の薬局でも依頼しやすいと思われます。


派遣薬剤師は潤沢な資金が必要になるケースがあります。中小規模の薬局では手が出ない可能性もあります。フリーランス薬剤師の場合は自分で仕事を取ってきますが、中小規模の薬局は意思決定権のあるオーナーが現場にいることも多く、直接交渉し返事もダイレクトにもらえて、シフト等についても連絡が取りやすいため取引先として適していると思います。また、どんな薬剤師が来るのかわからない派遣よりも誰が来るのか分かっているから安心という声をいただいたことがありました。


④ 就業先の店舗数


派遣薬剤師:基本的には1店舗です。
フリーランス薬剤師:複数の事業所と契約しているので同時期に複数の店舗で業務を遂行することがあります。


ということで、こういった違いから、フリーランス薬剤師は派遣薬剤師よりさらに自由度が高いと言えます。


【フリーランス薬剤師の活用方法】


薬剤師が必要になる原因と必要な勤務形態をまとめました。


① 慢性的に人手不足、欠員が出た、店舗が増えて異動者が出た→正社員薬剤師を募集

② 一定の時間帯が混み合う、外回りなどで店舗を留守にする時間が増えた→コアタイムや留守にする時間帯に勤務してくれるパート薬剤師を募集

③ 一定の期間人手不足、正社員を募集しているがなかなか見つからない→派遣薬剤師


ではフリーランス薬剤師はどのように活用できるかというと、

社員の有給休暇中(夏休み・連続休暇・婚礼・法事・子供の行事・検査・通院etc)のヘルプ

行政指導(集団指導、個別指導)、学会、研修等で不在にする際のヘルプ

健診や役所手続きなどに行っている間の留守番・店番

新入社員教育(薬剤師・事務)に人手が取られる際のヘルプもしくは新人指導

業務に無駄がないかオペレーションなど見て意見がほしい

オープニングスタッフとして

M&Aによる引継ぎなどでゴタついているときのヘルプ


フリーランス薬剤師は変則的な人手不足に役立つと言えます。これに加えて、


上記①~③のケースに当てはまるけれど、どうしても人が見つからない、候補者が見つかったもののコスト的に厳しい


といった時も対応可能な場合もあるので、フリーランス薬剤師の利用価値は高いと言えます。


【どうやって仕事を取ってきたか?】


私の場合ですと、仕事取ってきたという感覚はありませんが、


取引先は、元勤務先だったり、知り合いの薬局だったり、会合で偶然知り合った経営者に頼まれた薬局などです。


フリーランス薬剤師を始める前に複数の薬局を掛け持ちでバイトしていたのが種まきになったのだろうと思います。会社が嫌で辞めたわけではなく起業するためだったので人間関係は良好で、辞めてからフリーランス薬剤師の準備ができるまでしばらくかかりましたが2社ほど声を掛けてすぐに契約していただきました。


前例ができてしまえば信用ができるのか、別の機会などでもフリーランス薬剤師をしていることを話すとうちでも頼みたいと言われるようになりました。


元勤務先は起業後の取引先最有力候補であることと、会社の意思決定権がある方(もしくはそれに近いポジションにいる方)と話すことがポイントです。話が秒でまとまります。


【どんな薬局に行ってたの?】


私の希望として、自宅から通える距離で、経営者かある程度意思決定権を任されている人と直接やり取りできる所(つまり面倒なやり取りが少ない所)、ヘルプは自分1人のため店舗が多すぎない所が良かったので自ずと地元の中小規模の薬局と契約していました。遠方に泊りがけで行くのも少し経験してみたかったとは思うのですが、近場の薬局で予定が埋まったので地元から全く出ませんでした。それはそれですごくありがたいことかと思います。


契約していた会社と業務遂行場所までの移動時間、店舗数、人員は以下の通りです。

A社 自宅から車で片道約1時間、3店舗経営。昼休憩や訪問などで短時間一人薬剤師になる時間がある。

B社 自宅から車で片道約1時間、数店舗経営のうち移動可能圏内2店舗と契約。一人薬剤師の時間が多い。

C社 自宅から車で片道約1時間、2店舗経営。昼休憩の時と午後短時間一人薬剤師になる時間がある。

D社 自宅から車で片道約5分、2店舗経営。一人薬剤師の時間が多い。

E社 自宅から車で片道約30分、1店舗経営。もしもの時のため契約、ということでしたがヘルプに行く機会はありませんでしたので何よりです。


収益は?正社員と比べて給与は?


法人化し、役員報酬は毎月定額(節税対策)にしていましたので給与で比較はできないのですが、


委託料は時間当たり¥3000~¥4500+税、別途交通費(ガソリン代、1Km15円で計算)を請求していました。私の場合はあまり稼ごうと思っていなかったので売上は会社員時代の給与の2割増程度(フリーランスは正社員の2~3割稼いでトントンと思った方が良い)でしたが、やり方によっては正社員より稼ぐことは可能と思います。経費や税金が掛かる分、委託料は通常の時給より高く設定してください。例えば正社員の年収を時給ベースにすると3000円だったとして、会社はさらに約15%程度法定福利費を支払っているのでその辺を考慮せず今までと同じ設定では微妙です。地域の相場や業務量、負担度、業務内容、自分が何をできるかにもよりますが慎重に設定してください。


一見割高と思われるかもしれませんがそれだけ付加価値のあることをやっているので自信を持ってください。正社員やパート、派遣薬剤師は必要な時間に、必要な時間帯だけ、必要な店舗に来てくれますか?割高でも融通が利いて柔軟性が高い分、トータルするとコストを抑えられませんか?安い時給の半人前薬剤師2人を採用しても1人前にはならないことを理解できていますか?それでも表面上の数字だけで高いとか、価値をわかってもらえないような所は経営センスが疑われるので契約しないようにした方が良いです。


【フリーランス薬剤師に必要なスキルは?】


某ドラマに登場するフリーランスドクターのような特別なスキルは必要ありません。物事を仕組みから理解し、それを応用する力があれば、自分の持つ知識や経験を最大限に生かせるかと思います。薬について常にアップデートは必要ですが全て暗記しなくても必要な時に引き出せるようにし、重要なもの・よく使うものは覚えておくことができれば十分のように思います。調剤報酬の仕組みとか、法律上やってはいけないことをしっかり押さえておく必要があります。いくら知識があっても法律を犯したら元も子もないですから・・・。


色々な薬局に行くと、業務フローも調剤・薬歴システムも違いますが、元々の仕組みは変わりないのでどのシステムも大きな違いはなく、応用力があって優先順位を意識していれば心配いりません。(稀にものすごく独特なルールの薬局もありますが慣れるでしょう。)


店舗が変わると全く動けない人や、あの店とやり方が違う!と言う人がいますが、物事の表面だけとらえているからです。何かを覚えるときは仕組みから覚えるようにしましょう。理由はよくわからないけど〇〇の時は□□する、みたいな覚え方はやめましょう。


それでも100%力を発揮できなくても落ち込むことはありません。新しい場所で勝手が違うし、長く働いているスタッフは患者さんと築き上げてきたものがあるということも理解するべきです。とって変わろうなんて思わずに場をつなげればいい、くらいのスタンスで。


また、他のスタッフと関わっていく上で、分からない時分からないと言える、判断を誤った時間違いを認められる、おかしいと思ったらおかしいと意見できる勇気が程々にありながら、いちいち細かいことに目くじらを立てないスルースキルも必要です。


【フリーランス薬剤師で大変なことは?対策法は?】


そこまで大変だと感じることはありませんでしたが、しいて言えば以下のことです。


同じ日に依頼が重なる→どういう理由で依頼しているか確認し、優先度を考慮します。頑張って調整したうえでどうにもならないものは仕方ないと諦めます。


従業員が業務に支障が出そうな大事なことをフォローしてくれない、丸投げする、報告しない→本人に注意します。感情にまかせて怒るということはしないため、事の重要さに気づいてもらえないケースもあり、その時は上長にも報告します。改善がなく業務上危険を感じる場合は無理せず今後依頼を見合わせることも検討します。


【フリーランス薬剤師の仲間たち】


自分のやっていることがフリーランス薬剤師ではないかと気がついたときに、同じようなことをしている人がいないか検索してみたところ、たどり着いたサイトがあり、そこの管理人もフリーランス薬剤師をしていました。そして、私とほぼ同時期にフリーランス薬剤師を始め、ネット検索し同じサイトにたどり着いたという方とつないでくれました。何度か交流の機会がありフリーランス薬剤師をしている方、フリーランス薬剤師に興味を持っている方に会いました。少しずつ広がっていくと良いと思っています。


【何から始めればいい?】


フリーランス薬剤師を始めるにあたって必要な手続きや準備を紹介します。今後はフリーランス薬剤師を取りまとめてくれるようなところ(*)も出てきてスムーズにスタートできる体制が整いつつある見込みですが、フリーランス薬剤師は個人個人が自立していてこそ成り立つものだと私は考えているので、完全に任せっきりにせずある程度自分で仕組みを理解しておくと良いと思います。


*掲載許可をいただきましたので紹介します。

フリーランス薬剤師と人手が足りない薬局をつなぐプラットフォーム

「きょうりょく薬剤師」
サービスについて https://freelance.pharmacist-career.com/service
(薬剤師用)https://lin.ee/8ZSgBES
(薬局用)https://lin.ee/vBy8tWo7


まず個人事業にするか法人化するかを決めて個人事業主開業届or法人を作ります。法人化する場合は定款を作成しますが、定款に業務内容を盛り込んでください。私の場合は薬局支援業務としました。

業務委託契約書のひな形を作成し専門家にリーガルチェックしてもらうか、専門家に作成を依頼してください。

薬剤師賠償保険加入、その他必要な保険に加入します。

必要な備品(白衣や履物、文房具、マスク、印鑑など)を自前で用意します。

取引先を探し交渉・契約します。

業務を行う店舗の薬剤師登録(厚生局・保健所)を取引先の担当者などにしてもらいます。取引先の代表印が必要なので取引先側が行います。薬剤師免許証と保険薬剤師登録票を用意してください。保健所に関しては、スポットでのヘルプのみの場合、登録不要な場合もあるので管轄の保健所へ確認してみてください。


【法人か個人事業主か?】


フリーランス薬剤師を運営する際、法人と個人事業主のどちらがいいか迷うかもしれません。


いずれでも運用できますが、それぞれ特徴があります。


法人だと取引するうえで信用度が高いです。社会保険に加入できます。


個人事業主は書類作成が法人より簡単です。業務委託料の振込先口座は個人名だと敬遠される可能性もあるので、個人事業主の場合口座名は屋号などを用いたほうが良いかもしれません。


今後の注意点として、インボイス制度の導入で免税事業者だと取引が不利になる可能性があります。しっかり見極めた上で個人事業主なのか法人にするか、免税事業者か課税事業者か決めるようにしてください。業種的に取引先はたいてい非課税事業者になると想定されます(調剤報酬は非課税売上のため)。しかし場合によっては課税業者に該当する可能性もあり、自分の会社は免税事業者で事足りても取引先に影響することがあるので慎重に対応を。免税ありきでの価格設定にしている場合は今後見直すことが必要になるもしれません。


【フリーランス薬剤師はとにかく体調管理が大事】


法人の役員や個人事業主は労災保険や雇用保険は加入できないので怪我や病気をしないようにすることが一番の仕事になります。仕事を詰め込みすぎたりして無理のないようにしたいものです。働けなくなった時のために保険会社が販売する保険商品などでカバーするなどの備えをしてください。


【節税対策(法人成りした一人社員の場合)】


私が取り入れていることや検討中のことを紹介します。人に詳細説明できるほどではないのでより詳しい記事を自分で調べたほうが良いです。個人事業主の節税方法には触れていません。


法人化する・・・節税という視点から見ると、ある程度の収益を出す見込みがある場合は法人化が良いと言われています。私は節税のために法人化したわけではないのですが、せっかく法人化したのでなるべく節税になることはできる範囲で行うようにしています。


定額同額給与・・・会社の経費で落とせる役員報酬の種類の一つです。また、その役員報酬もいくらもらって会社にいくら利益を残すかで個人と法人が払う税率や保険料負担率も変わるためバランスを見て上手に分散する必要があります。


青色申告を選択する・・・法人の場合は消耗品など経費で落とせる範囲が拡大。設立年度の赤字額を次年度以降の経費に落とせます。


携帯・車・・・わざわざ会社のために用意する必要のないものは個人のものを会社に貸すような形で運用しています。携帯電話は通信・通話料を会社に請求、車は仕事で使用した分のガソリン代や車検・保険料などを会社に請求しています。自動車税は個人が所有することで発生するものなので会社には請求せず個人負担です。有料で会社に車を貸し出すと、その分が個人の所得になるので、無償で貸し保守点検費用は会社が負担するという契約書を作成しています。


小規模企業共済(検討中)・・・掛金を控除額にできる分所得を抑えて節税することができます。長期加入が可能な場合メリットの高い制度なのでまだ加入しておらず検討中です。


【必要なツール】


フリーランス薬剤師は自己管理が重要です。何でも自分でやらなくてはいけないのでなるべく簡単で便利なツールを使って少しでも負担を減らすようにしたいですね。


会計管理・・・私はクラウド会計ソフトfreeeを使っています。請求書を簡単に作成できて、振込されたら決済を登録すれば完了です。法人のライトプランで事足りています。


スケジュール管理・・・あまりこだわりがないのでスマホのホーム画面に元々表示されているカレンダーを使用していましたが、もっと便利なアプリがあるのかもしれません。予定が変わったらすぐに更新しておくよう習慣づけしていたので予定をすっぽかしたり時間を間違えたりすることはゼロでした。


連絡手段・・・業務委託の日時や場所についてたびたび連絡を取ります。電話は急ぎの時以外ほとんど使いません。LINE、Messengerあたりが連絡取りやすいです。ショートメールも使いましたが画像(書いたメモなど)を送れないと不便でした。現場で会った時に直接話して次の予定を決めることもありますが、言った・言わないになるといけないので、最終的に必ず文字に残るようやり取りしています。私は取引先が使いやすい連絡手段それぞれで連絡をとってきましたが取引先が多くなってくるにつれて連絡手段は1つのツールに統一した方が良かったなと反省しています。


【おわりに】


このnoteはフリーランス薬剤師を安易におすすめするものではありません。なので、フリーランス薬剤師の良い点だけでなく苦労する点も惜しみなく書きました。なんとなく現状不満だからフリーランス薬剤師をやろうかと考えていたとして、これを読んで踏みとどまれるようであればそれでよいと思います。また、なんとなく雇用されていたけれど、会社員はいかに会社に守られ恩恵を受けているかを理解したうえでやはり自分は会社員を選択するということができれば、それも意義があることだと思います。それでもどうしても今の働き方が合わなくてはみ出してしまう場合はフリーランス薬剤師も選択肢に入れてほしいという思いです。


重要なのは、自分で考えて選び、行動し責任を持つこと、つまり自立することだと考えています。


いつも誰かのせいにして、できない理由を作って、論点をすり替えて、そのくせ肝心な時に意見できなかったり、会社に寄りかかっているような人生、つまらないですよね。


今まで常識だったことが常識ではなくなり価値観も大幅に変わり、今後どうなるかわからないようなことが起きています。正社員だから安泰だ、ということもなくなってくる可能性があります。どのような立場におかれても自立していればこのようなパラダイムシフトに乗り遅れることなく急に状況が変わっても丸腰にならずに済むと思います。


つまり言いたいことは、どこでどのような働き方をしようがしまいが薬剤師一人一人が自立した個人事業主のようであってほしいということで、自立こそフリーなのだということです。


長くなりましたが、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

清麗堂合同会社 代表社員 大久保美緒

*文中でも紹介しましたが下記にも掲載しておきます。是非登録&ご活用ください。


フリーランス薬剤師と人手が足りない薬局をつなぐプラットフォーム


「きょうりょく薬剤師」

サービスについて https://freelance.pharmacist-career.com/service

(薬剤師用)https://lin.ee/8ZSgBES

(薬局用)https://lin.ee/vBy8tWo7


フリーランス薬剤師普及活動に役立てたいと思いますので、参考になった、続編を期待、などの場合はサポートよろしくお願いします