コトダマの呪縛(解けないメディア洗脳)

 軽い論考で、ただの思い付きです。
 コトダマは日本語の構造からは切っても切れない存在です。
 主語があいまいな言語は、時に呪術的な響きを持ちます。
 それで今回は、メディア言説を分析するのにコトダマ理論を使ってみようという試みです。フェイクニュースという言葉がアメリカから出てきましたが、日本ではフェイク言霊ニュースかもしれない、世にも奇妙な論考です。
参考文献は「日本人の言霊思想」豊田国夫著、講談社学術文庫です。

 コトダマの「コト」は、事と言は同語源と見るのは一般的であり、古い文献の中には言霊のほかに事霊の表記も使われています。
 ここから、コトダマとは事物と言葉の領域の両方を含むものであるという事が語義的に理解できます。

 現代の言葉は技術的になってしまっているが、それだけに呪術性が強まる。

「せっかくに科学が、神秘な世界から引っ張り下ろしたとしても、そのためにかえって現代人は、言葉のカリスマ(神の恩寵、神の賜物としての霊威)にたたられ、再びこれを神の座にすえて、いったいこれは何であったのかと、つくづく問い直さなければならなくなったというわけである」

前掲「日本人の言霊思想」豊田国夫著 P.19

 つまり、科学が神秘をはぎ取った後に、言葉の持つ力というものが今までの神の概念とは異なる神性を持って現れたという事です。
 「神は死んだ」というのはニーチェの言葉ですが、神は死んだとしても言葉の神性は奪い取るどころか、かえって増すことになってしまった。
 言説は過剰に膨れ上がり、人々を抑圧する、それが現在の日本のマスメディア状態です。
 名前がないだけでそこには信仰と神性があります。
 
 コトダマは、言葉の中に、呪術的力と、命令たるミコト、禁忌たるイミナ、祝福たるノリトを言葉の中に生命として注ぎ込みます。
 日本語は意味論の前に、言葉の持つ言霊のパワーバランスが大きな意味を持つわけです。
 例えば毒チンの場合はその言説に、推奨するミコトと、リスクを禁忌とするイミナが含まれているがために、正しい情報として展開することは無理な状態が続きました。
 メディアは、喜ばしいニュースのノリトとして、毒チンを勧めてきます。
フェイクニュースとはトランプ氏が真実を隠すメディアに言った言葉ですが、フェイク言霊ニュースとは、言葉の内在的に宿る力関係を使い人々を操る呪術です。情報の真偽ではなく内在する呪術的力により人々をコントロールします。
「日本人は古来から歌を詠む」そしてツイッターに移行→言霊の移行

 ツイッターは、言語に次のニュースの言霊を注ぎ込みますが、それもいまだコントロールされた言説の力関係を脱出できていません。
 言葉の持つ言霊の力を解体し、さらに情報の質を上げる試みが必要になっていきます。
 
 以上、言葉をめぐる試論でした。


参考文献
「日本人の言霊思想」豊田国夫著 
      講談社学術文庫 1980年5月10日初版発行 

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