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モチベーション:Topic7 報酬とモチベーション

これまでとまた異なる切り口だが重要かつ興味深いトピック。

<授業での学び>

<イントロ>
・報酬には、収入、賃金、インセンティブ、市場価格、価値の指標など様々な意味があり、それぞれによって感情的反応やモチベーションへの影響が異なる。
・報酬がモチベーターとなるかどうかについては、人々が社会的に望ましい答え方をしようとするので、本音を測定するのが難しい。

<モチベーション理論と報酬>
・ニーズ理論と報酬
 -報酬は複数のニーズとなりうる。収入は生きるためのニーズを満たすものと捉えることができ、パフォーマンス連動型報酬は達成欲を満たすものと言え、社会的地位や評判を表すものとしては、自尊心を満たすものと捉えることができる。
・期待理論と報酬
 -報酬は成果と捉えることができ、報酬の多寡が魅力と捉えることができるという点で、期待理論で説明可能。
 -ただし、パフォーマンスとの関係を明らかにできない場合、インセンティブは機能しない。
・公平理論と報酬
 -公平理論で考えると、パフォーマンスや努力に報酬が見合っていれば、モチベーションに変化はなく、釣り合っていない場合に変化が起こる。報酬が低い場合は、モチベーションの低下、職務満足の低下が起こり、離職に繋がる。
・目標設定と報酬
 -目標設定理論では、目標設定は報酬を上げなくともパフォーマンスを高められると言われている。
 -目標達成に基づいたボーナスは、ずるをする可能性が高まるという研究結果もある。

<インセンティブ報酬、パフォーマンス連動給与>
・インセンティブ報酬やパフォーマンス連動給与で、モチベートされる人もいればそうでない人もいることが研究でわかっている。
・これは仕事の特性や個性の違いにより生じている可能性がある。
・パフォーマンス連動給与は、面白くないタスクをする場合には有効という研究結果がある。
・パフォーマンス連動給与は、内発的モチベーションにネガティブな強い影響があり、自分の業務範囲を超えた努力をしなくなる、という研究結果もある。
・エビデンスを総合的に考えると、以前考えられていたより金銭的報酬はパフォーマンスにポジティブな影響をもたらすと言える。

<公平な報酬>
・報酬が公平に支払われることも重要で、パフォーマンスやモチベーションに影響があることを発見した研究がある。
・報酬の公平性についても、倫理的に研究が難しいが、不公平な報酬が離職に繋がることを示す逸話的なエビデンスは多くある。
・公平性の認識は、公平、平等、必要性などの分配的正義の基準と関係がある。
・報酬公平性は、他社との比較、インプットとの比較、手続き的正義との比較によって判断される。

<報酬の秘密性>
・雇用主は、授業員が報酬を比較したり、外部に漏らさないよう、報酬を秘密にすることがある。
・報酬の秘密性は下記の点で支持されている。
 -報酬の比較は従業員をがっかりさせたりデモチさせる。
 -報酬の水準を、客観的、または万人に受け入れられるように正当化できるとは限らない。
 -個人の報酬は守られるべき。
 -雇用主は報酬制度を競合から守る権利がある。
・報酬の秘密性への反論は、下記のようなものがある。
 -報酬を秘密にすることで、雇用主が報酬を減らす可能性がある。
 -報酬が働きに見合わないと考える従業員をデモチさせる。
・実際の報酬の分配ではなく、手続き的公平が長期的成功の決定要因である。
 -交渉のプロセスにおいては、心理的資源の理解が強調されるべきである。

(所感)やはり報酬の支払い方についての正解は見つかっていない。これも個人や組織の状況によって適切なものが異なりそう。個人の中でも報酬の意味合いが複数あることも報酬の支払い方を難しくしているのではないか。今の所すぐに実務で適応できそうなのは以下2点か。
・定量的に評価できる部分はインセンティブを用い、そうでないところには用いない。
・報酬の決め方をオープンにし、結果はクローズにする。

<課題論文1>

公的機関でのパフォーマンス連動給与についての論文。パフォーマンス連動給与は、多くのスタッフの動機づけに失敗したが、生産性は高まった、という研究があったが、この論文は契約理論を用いてパフォーマンス連動報酬がパフォーマンス基準の主な再交渉の道具であることを示した。インセンティブ制度を導入すると、給与が上がるものはモチベートされ、下がるものはがっかりする。ここで、直属上司による目標設定と評価が重要な役割を果たすことを提案した。

Marsden, D. (2004). The role of performance-related pay in renegotiating the 'effort bargain'. The case of the British Public Service. Industrial and Labor Relations Review, 57, 3, 350-370.

<課題論文2>

公的機関でのパフォーマンス給与をメタ分析した論文。モチベーションが、パフォーマンス関連給与がパフォーマンスに与える効果に影響を与えること、パフォーマンス給与は見えないコストを生み出すことを発見した。

Weibel, A., Rost, K. and Osterloh, M. (2010). Pay for performance in the Public Sector— benefits and (hidden) costs. Journal of Public Administration Research and Theory, 20, 387–412.

<課題論文3>

文献レビューとメタ分析を行った論文。金銭的報酬が効果的であると主張している。金銭的報酬が内発的動機づけを阻害するという研究について、下記のような反論があると説明した。
・子供がゲームをする際に金銭的報酬を与えると、金銭的報酬がなくなった時にゲームをする時間が短くなる、という研究から金銭的報酬が内発的動機づけを阻害すると言われる様になったが、ゲームをする時間が短くなったのは、「フリータイム」であり、
 -そもそもこの時間を計測することに意味がない。
 -支払いのない時間は重要ではない。
・成人の職場を対象にした研究では、金銭的報酬を与えることでより自律性を感じるという結果が出ている。
・金銭的報酬がなくなって内発的動機が失われるのではなく、金銭的報酬がなくなることが、気まぐれに決定されたり、決定が説明されないことで、内発的動機づけが失われる。金銭的報酬が、どのように、なぜ、働くのか、ということを解明しなければならないということも主張している。

(所感)これも一理ありそうだが、個性とタスクの内容によりそう。金銭的報酬がないとやる気がでないようなタスクでは金銭的報酬が効果を発揮し、金銭的報酬があってもなくてもやる気がある場合には、金銭的報酬の有無は影響しないのでは。

Shaw, J. D., & Gupta, N. (2015). Let the evidence speak again! Financial incentives are more effective than we thought. Human Resource Management Journal, 25(3), 281-293

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