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モチベーション:Topic8 心理的契約

早いもので次回が全体のおさらいなので、内容を学ぶのは今回が最後。体調不良のリカバリーも終わらないのにここまで来てしまった。組織市民行動についてはこれまであまり取り上げられなかったものの、このトピックでは何度か出てくるが、自ら進んで定められた役割以外(以上)の働きをすることを指す。

<授業での学び>

<心理的契約とは>
・一般的な雇用契約が書面で交わされる雇用の条件であるのに対し、心理的契約は明文化されない雇用主と従業員の間の期待である。
・社会交換理論(Social Exchange Theory)から生まれた。
・心理的契約には以下6つの特徴がある。
 -自由意志による選択 (Voluntary choice)
 -相互合意の信条 (Belief of mutual agreement)
 -不完全性、終わりない契約 (Incompleteness, Open-ended contract)
 -複数の契約者、契約の三角関係 (Multiple contract makers, the triangulate relationship)
 -契約が上手く行かなかった際の損失補填 (Managing lossess when contracts fail)
 -雇用関係のモデルとしての契約 (The contract as model of the employment relationship)
・心理的契約の状態はモチベーションにも影響する。
・より上位の管理職と管理職の関係が良い場合、その管理職とスタッフの関係も良くなる。
 -逆に悪い場合、管理職はスタッフに対し、コミットしなくなったり、雇用主が信用に足る、というシグナルを送るようになる。
・心理的契約には、下記のパターンがある。
 -交換的心理的契約(Transactional Psychological Contract)
 -関係的心理的契約(Relational Pscychological Contract)
 -ハイブリッド
・心理的契約により生まれる義務の例
 -従業員の義務
  ・超過労働
  ・忠誠心
  ・求められている以上の仕事をする
  ・同僚のサポート
  ・競合サポートの拒否
  ・秘密情報の保持 など
 -雇用主の義務
  ・昇進
  ・昇給
  ・トレーニング
  ・キャリア開発
  ・長期の雇用
  ・個人的問題のサポート
  ・家族のケア
  ・住宅手当 など

<心理的契約の違反>
・心理的契約の違反は、ネガティブな感情を引き起こす。
・研究で明らかになっていること
 -職場でかなり頻繁に起きているという調査がある。
 -組織変革の際に心理的契約の違反が起こりやすい。
 -公的機関では、心理的契約の違反が起こると組織に対して組織市民行動を取らなくなるが、公的サービスの受益者や同僚に対しては影響がない。(所感:公的機関で働く人は、市民に貢献することを最上位のミッションにしているからだろう)
 -心理的契約の違反は、信頼を喪失、職務満足の低下、組織コミットメントの低下、退職意図の向上に繋がる。
・年齢と心理的契約の関係
 -心理的契約違反に対しては、年を取っている人の方が、感情的に反応しない(所感:次の研究と矛盾しているように見えるので、要論文精査)
 -年を取っている人の方が、心理的契約違反が起きた際職務満足が低下する。
 -在籍期間は心理的契約違反と職務満足の関係を和らげない。
・上記のような反応が起こる原因
 -年を取った人は経験があるため、仕事が面白くなくなっている。
 -年を取った人は転職の機会が少ない。
 -年を取った人は家族や趣味など仕事以外で満足している。
・心理的契約違反を防ぐ方法
 -早期のサインを観察する
 -守れない約束をしない
 -誤解を減らす

(所感)概念的だが実際存在していると思うので、実務に置いても意識すべき。相手の期待を考えることで、多くの心理的契約違反は防げるはず。思いやりの気持ちを持つことと、正確なコミュニケーション力が必要だろう。「心理的契約」というような硬い言葉ではなく、もっと日常的で平易な言葉でこの概念は説明できそうな気もする。例えば、信頼とは、心理的契約が守られる度合い、かもしれない。

<課題論文1>

心理的契約についてのレビュー論文。授業でも触れられている6つの特徴、3つのパターン、管理職と管理職の上司との関係、などについて解説している。

Rousseau, D.M. (2004). Psychological contracts in the workplace: Understanding the ties that motivate. Academy of Management Executive, 18, 1, 120-127

<課題論文2>

授業でも出てきた公的機関における心理的契約違反についての研究。
・長期間に渡る組織変革は心理的契約違反をもたらす。
・心理的契約違反は組織コミットメントと組織に対する組織市民行動にネガティブな影響をもたらすが、ユーザーに対する組織市民行動にはもたらさない。
・職業の安定は、心理的契約違反と組織に対する組織市民行動の関係、心理的契約違反とユーザーに対する組織市民行動の関係、を緩和する。

Conway, N., Kiefer, T., Hartley, J. & Briner, R.B. (2014). Doing more with less? Employee reactions to psychological contract breach via target similarity or spillover during public sector organizational change. British Journal of Management. Oct2014, 25. 4, 737-754.

<課題論文3>

心理的契約違反がポジティブな精神的エネルギーという意味でのリソース(所感:モチベーションと考えて良いと思う)の低減をもたらし、第三者に対する行動に影響を及ぼすことを明らかにした論文。
・心理的契約違反が起こると、モチベーションが下がる。
・モチベーションが下がると、同僚に害が出たり、クライアントに対する意思決定が疎かになる。
・心理的違反が起こると、仕返ししてやろうという気持ちが湧き、同僚への害やおろそかなクライアントに対する意思決定に繋がる。
・組織アイデンティティが強い人は、弱い人に比べて、心理的契約違反が大きかった場合によりデモチする。
・職業的アイデンティティが弱い人は、強い人に比べて、心理的契約違反が大きかった場合によりデモチする。

Deng, H., Coyle-Shapiro, J., & Qian Yang. (2018). Beyond Reciprocity: A Conservation of Resources View on the Effects of Psychological Contract Violation on Third Parties. Journal of Applied Psychology, 103(5), 561–577.


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