なんでワイヤレスイヤホンが500円なのか
駅の中にある本屋さんの隅っこで、ワイヤレスイヤホンが500円で売っていた。
いまだに「ワイヤレスイヤホン」という言葉に時代の最先端を感じるような文化水準の人間としては、500円という価格が信じられなかった。しかも、駅の中の本屋さんなどという、何かのついでにしか立ち寄らないような場所でぞんざいに売られているのだ。
500円。千円札1枚で2つ買えてしまう。500円。隣のスタバで売っているフラペチーノより安い。500円。近くに設置されている機械で撮る証明写真よりも安い。500円。初代ポケモンならコイキングの価格。500円。
こんな値段で時代の最先端が買えてしまうとは。
でも、喜ぶのは早い。ポケモンならば値段の高いモンスターボールほど、高い捕獲率を誇っている。ということは、逆も然り。500円という安価なワイヤレスイヤホンには、500円の理由があるはず。きっと3000円のワイヤレスイヤホンに比べて、6分の1の能力しかない。
何が6分の1なんだろうか。
まず考えられるのは、ワイヤレスの届く距離が6分の1。仮に、3000円のワイヤレスイヤホンの適正距離が、耳からズボンのポケットくらいまでの距離だとして、その6分の1しか届かない。つまり、いつも電話のように本体を耳に近づけていないと安定しない。ワイヤレスイヤホンとしては致命的に不便だけど、500円だから仕方がない。
次に、充電の持ちが6分の1。3000円のが10分の充電で1時間持つとするならば、500円のは10分の充電で10分しか聴けない。シングルとカップリングを聴いたら終了だ。インストゥルメンタルバージョンは聴けない。あゆのシングルだったら、もうほとんどのリミックスバージョンが聴けない。500円だから仕方がない。
次に、遮音性が6分の1。3000円のが電車の両隣の人にちょっと聴こえてしまうくらいの音漏れだとするならば、500円の場合は7人がけの席の一番端に居ても、全員に音漏れが届いてしまう。ワイヤレスの届かない範囲にさえも、音漏れだけはばっちり届く。もはや音漏れという概念がわからなくなるレベルだが、500円だから仕方がない。
音質だって6分の1だ。3000円のがドレミファソラシの音全てを聴けるとしたら、500円のはもうファしか聴こえない。これはもう何の曲なのか当てるクイズの世界だ。脅威の音漏れ力のおかげで、同じ電車内でクイズ大会が出来そうだが、それもしっかり充電してないと2、3曲で打ち止め。もちろん純粋な鑑賞には耐えない。500円だから仕方がない。
想像すればするほど、500円のワイヤレスイヤホンには興味が尽きないところだが、結局買わずにその場を後にした。
以前に、7000円のワイヤレスイヤホンを買って、その日の夜のうちに壊れたことがあるのだ。7000円でその日の夜。500円なんて、きっと買った瞬間に壊れるもん。