見出し画像

ブラックでホワイトな美容院業界について


美容院、美容師って聞くとイメージ的にオシャレそう、労働時間が長そう、手に職、などなど色んなイメージがあると思う。
その中で僕が実際に美容院業界で働いていて感じること、他の業界に目を向けた時に感じることを主観でまとめてみようと思う。

とにかく数が多い

全国で美容院は現在約26万軒。コンビニの4倍。信号よりも多い。
美容師の数は56万人。鳥取県の人口が56万人いかないくらい。
ここに町の床屋さんといった理容院を含めるとプラス11万軒。
とにかくめちゃくちゃ数が多い。
職場から駅まで15分歩いてるだけで冗談抜きで5軒以上は美容院の前を通るエリアもザラにある。。。

僕は勉強がてら基本自分の髪は他の美容院で切るようにしてる。前後の予定も踏まえて場所を絞ってホットペッパーやSNSで美容院を探してみる。でも行きたい所がなかなか見つからない。数が多すぎてどこに行けば良いかわからない。挙げ句の果てにはどこかのアイドルグループのノリでどこも同じに見えてくる。
これだけ数が多いのに、それとも多いから?当たりの美容院、美容師にもなかなか出会えない。そんな顧客体験を毎月している。

もちろん自分に合う美容院や美容師もたくさんあるからご心配なくやけど数が多いだけに有象無象な業界であることは間違いなし。
まあこれは美容院業界だけに限ったことではないやろうけど。

価格の幅が狭い

僕は旅行や外食が好きです。急に何の宣言かと思うけどその旅行や外食もカットの時と同様、ネットでまずは調べてみる。
お寿司食べに行きたいな〜。5000円、10000円、25000円、40000円!?!?
ちょっと奮発して奥さん誕生日やしフレンチでも行こか〜、10000円、30000円、50000円!?!?
次の連休でちょっとゆっくりしに温泉でも行こかな〜、部屋調べてみよ〜、15000円、50000円、100000円!?!?
こんなお金払わなくてもよそで一皿100円でお寿司は食べれるし、町の定食屋さんで1000円でお腹はち切れるほど食べれるし、1500円で岩盤浴も付いて1日中スーパー銭湯で楽しめる。
それでも奮発して外食もして旅行もする。
一方美容院をネットで調べてても価格で「!?!?」ってことはそんなにない。
関西でカットだと1000円もあれば高くて大体7000円に落ち着く。
飲食には高級食材があって、旅館やホテルには部屋のグレードがある。美容院にも薬剤はあるけれどお客様にめちゃくちゃ差別化されてわかりやすい高級薬剤とかは基本ない。
この美容院業界における価格の幅の狭さは前述の数多すぎ問題からくる価格競争や後述する技術のコモディティ化などによる業界の闇の最果ての地って感じがする。

ブラック!!!!

諸先輩方には昔に比べてだいぶマシになったと言われるけどまだまだ長い労働時間、少ない休みが横行する業界。そして何よりお店によって差はあるけど基本アシスタント期間が長く、自分のお客様として施術できるまでの道のりが大変。
僕も普通の営業が終わってから自分のレッスンをして家に帰ったら日付が変わってるなんてこともしばしば。
でも振り返ってみるとブラックというよりは自分への投資期間って捉えることもできる。
小学生の時スイミングスクールに3年間通ってクロール平泳ぎ背泳ぎバタフライって泳げるようになった。大人になって何年振りかに海やプールに入っても泳ぎ方は体が覚えてる。じゃあ僕の3年間のスイミングスクールは僕にとってほんまに嫌でブラックなことやったかというとむしろ今となってはほんまにありがたい。ただあんなにタイムアタックとかするほどは通わんでよかったけど、、、
僕たちの技術も似たとこがあって1回ちゃんと向き合って習得すると体は基本忘れない。泳ぎ方を覚えたら溺れないのと一緒でカットの仕方を覚えたらずっとやっていける仕事。何年経っても人間の頭の形は丸いし、髪の毛はハサミで切る。
話を戻すと確かに労働環境的に他の業界と比べてブラックな要素は多い。でも自分が好きや楽しさでやってたり、一度身につけるとずっと自分の人的資本になる技術の習得に少し時間がかかるのは果たしてブラックなのか?そこに誰かに無理矢理させられてることや他にやりたいことがあるのに長時間の束縛があるとそれはブラックだと感じる。
安い給料いただきながら何年かバリバリ自分の確実な技術を身につける自己投資期間って捉えたらホワイトとまでは思えないけどそんな数年も悪くないんじゃないかなと個人的には思う。
あとはレッスンする側の人間にちゃんとしたレッスンのシステムを整えずに変な個人の趣向ゴリゴリな教え方をしたり、ちゃんと伝えずに俺の背中を見て育て!とかするとたちまちすぐブラックになる。そもそもカットが上手いとか下手とかはカットもちゃんとしたことないお客様が決めてくれるものであって千差万別。教育者は正しいハサミの開閉、基本的な切り方、人それぞれのセンスの開放の手助け、自分から質問してきた時に真摯に答える姿勢、とかのきちんとしたシステムを持ってれば良いんじゃないか?
何十年って美容師してる人よりスタイリストなりたてほやほやのひよこちゃんの方が今どきのかわいいスタイル切ることなんか往々にしてある。
ブラックと感じたらすぐ辞めるか環境を変えてみて、自分の一生身につけれるカットとセンスと向き合う自己投資期間って考えれたら良いなぁ。。。って感じてる僕自身がブラックな労働環境でホワイトなメンタルになってて感覚がおかしくなってるかもしれないけどあくまで参考までに!

技術のコモディティ化

「コモディティ化」というのは一般化という意味で、まさに美容院は数が多かったり差別化が図れていない結果どこで施術してもある程度同じクオリティになる、という解釈。
僕も業界では有名とされる美容院に行っても、郊外の美容院に行ってもそこまで技術やサービスの圧倒的な差は感じない。
また僕たち美容師の技術というのはSNSが発展して良くも悪くも最新の技術やヘアスタイルをある程度どこでもスマホから手に入れることができるようになってしまった。しかも無償で。トレンドの最先端の街の美容師のヘアスタイルを地方の町の美容院でも再現可能になった。これである程度どこで施術しても同じ、という構造ができてしまってる気がする。
僕も美容師を始めて後輩ができて、後輩のレッスンを見るようになってあーだこーだ言えるようになったけどそこにお給料は発生しない。(発生する会社もあるかも?)
その後輩が一人前のスタイリストになってしっかりお客様と関係を構築して、もしくはスタイリストになってからすぐ退社することも自分のお店を構えることもある。未来のライバルを無償で自分の時間も削って育てることになる。
業界の中で本当に深い技術やこだわりを次の世代に伝えていくというのは職人気質ならではの良い話だけど、現在の美容師の技術の位置付けはざっくり個人的に見るとコモディティ化してると思う。
でも自分も体験して仕方ないなと思うのは、誰に切ってもらってもある程度すっきりしてしまうということ。数ヶ月前にカットしてボサボサの状態で長さを切ってもらって量をすいてもらうととりあえずその場はすっきりする!!すかれすぎてはねるとか思ったより長さを切られて最悪とかは一旦置いといて。

必要産業

2020年からコロナウイルスが蔓延してもちろん美容院も煽りを受けた。それでもこれは僕の体験談でしかないし働いている美容院が地域密着型というのもあるけど2020年4月の緊急辞退宣言はさすがにお客様は普段より圧倒的に減ってしまった。でも翌月の5月からはほとんどお客様の数は元通りになった。
電気とか水とか火とか生活に欠かせない産業をインフラ産業というけど、美容院も準インフラ産業であることを実感した。髪の毛を切らなくても白髪を染めなくても死にはしないけど髪をどうにかしたい、というのは人間の性なんやなと改めて思うきっかけになった。
どんどん新しく出る薬剤、流行るヘアスタイル、お客様に似合うヘアスタイルの考案などなど、そこに対応して日々お客様ごとに違う要望に応える楽しさ、苦しみの反面、どこか具合が悪いと病院に行くように髪が伸びてうっとうしくなったりパサパサが気になったり白髪がでてきたり根元がプリンになったりすると定期的に改善に行く髪の病院みたいな要素も併せもつ場所が美容院。
前述したとおり、髪の毛をどうこうしないと命に関わることはない。電気や水みたいに生活に大打撃を与えるわけでもない。それでも必要な場所が美容院とコロナウイルスというネガティブなものからではあるけど改めて実感させてもらえた。


このとにかく数が多く、技術の差別化もわかりにくく、一寸先はブラックな美容院業界。
それでも僕はこの美容院業界から完全に抜け出したいと思ったことは今のところ数分しかない。(色々悩みすぎた時期もありました)
髪の毛を通じてお客様と繋がれて、僕はお店で待つことしかできないけど毎日誰かが僕を求めて時間をつくって来てくれる。
この喜びを毎日噛み締めてやりがいを感じている。
でもそれとは別に僕は上記のように客観的に美容院業界の闇も実感してる。
技術のコモディティ化と思わせない程お客様1人1人と向き合った施術、カウンセリング。
将来もし僕と働いてくれる人がいたらその人をブラックと感じさせないシステム構築。
数は多いけど独自の価値を生み出し、お客様にこの技術とサービスでこの価格は納得!と思ってもらえる美容院づくり。
やることいっぱい永遠に勉強し続けます。


この記事が参加している募集

業界あるある

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?