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自転車にまつわる話(2) 冠水ダイブ

私の自転車に関するたわいもない話を、
ただただ書いていくシリーズです。

◆サイクリングロードの国道アンダーパス

(1)の話に続き、高校生の頃の話です。
当時私は通学のため、駅まで片道3km程度の距離を
サイクリングロードを通って自転車で移動していました。

他の移動手段としてはバスがあるにはありましたが、
私の自宅も、目的の駅もバス路線から外れていたため、
えらく遠回りする羽目になるので、
雨の日も仕方なく自転車で移動していました。

スポーツサイクルを趣味としている今となっては、
自転車モラル的にもあり得ない話ですが、
雨の日も、平気で傘さし運転してサイクリングロードを移動したのでした。
もちろん片手運転です。
平成一桁時代、自分も周りも何も疑わずそうしていました。
(世間の意識は今でもたいして変わっていないくさいけど。
傘さし片手運転、ダメ、ぜったい。)

通っていたサイクリングロードは、
基本アップダウンもない、
ド平坦のストレートなのですが、
一ヶ所だけ、国道の下をくぐりぬける

下って、国道くぐって、また上る

というアップダウン&トンネルがありました。

横から見たイメージ図

トンネル内も一応センターラインが引かれていて、左側通行になっていたため、
通り慣れた人ならば、
下ったその後すぐにまた上りが待っていることも知っており、

下りである程度勢いをつけ、
その勢いのままトンネルをくぐり、
残った勢いを利用して一気に坂を上りきる

という、
昭和のテレビ番組であれば

良い子のみんなはマネしないでね!

とテロップが出るであろう禁じ手を
毎度毎度、通る度に繰り出していたのである。


◆梅雨明け前には大雨あり

ここ数年の気象ときたら、あまりにも異常である。
毎年毎年、夏はどこかで線状降水帯が発生したり、
あり得ない量の集中豪雨で川が溢れちゃったり。
9月になっても、10月になっても

今年は秋はスルーですか?
直接夏から冬になるんですか?

と思うくらいの暑い日が延々と続いたり、
とんでもないデカい台風が直撃したり、
冬でも雪が降らない年があったり。

そう、雪。
私がガキンチョの頃は、
関東でも毎年、冬には幾らか雪が積もって、
年に一度は雪遊びが出来たものだった。
ちゃんと四季があって、
暦(こよみ)と季節感がきちんとシンクロしていたように思う。

雨雨降れ降れ母さんが
ジャノメでお迎え嬉しいな。
ピッチピッチ チャップチャップ
ハイのハイのハーーイ!

ふぅ。
ラスト、ちとアレンジしてしまいましたが、
梅雨時期にはシトシト雨が続いたもので、
小さな長靴を履いて幼稚園へ通った。
長雨で出来た水たまりに、両足をそろえて飛び込んで、
時に園服を濡らして怒られたりしたものだ。

そんな梅雨であるが、
この関東の梅雨明けというのは、

「もうこれでおしまいにするよー」

という
合図のようなものがあった印象が強い。

タイミング的には夏休み目前あたり。
「ザーッ!」

バケツをひっくり返したような大雨が短期間、
あるいは短時間だけ降って、
その後はウソみたいな夏空続きとなる。
そして、

夏が来た!
ヒャッホー!!


みたいなハイテンションになる。
(それは私だけか)

そう。
私が高校生の頃もまだ、例年そんな感じだった。


そう。
時は夏休み直前の7月中ばの事だった。
天気はまさに、梅雨の終わりを告げる
一時的な大雨がザーッと降り終わり、
今まさに降り止もうか
というようなタイミングであった。

私はといえば、
期末テスト期間も終わり、午前中の短縮授業のみで帰宅出来るとあって

ウッヒャッヒャー!

と浮かれながら、いつもの駅から家路についていた。


◆帰路の下りは更に加速して突入すべし

横から見たイメージ図 again

今一度、この横からのイメージ図を見て頂きたい。
帰路はこの左側から右側へ進むのだが、
これがまた微妙に、上り坂の方が長かったように記憶している。
もしかすると斜度も少しキツめだったかも知れない。

そんなこともあり、帰りについては、
行きの時より余計に勢いをつけて下り始め、
その勢いをなるべく残して、一気に駆け上がる!

というのが常だった。

ウッヒャッヒャー!
帰ったらファミコンのファミスタで、
何球ファールで粘れるか記録更新しちゃるぜぇー!

と無駄にハイテンションだった私は、
雨も降り止む寸前、
相当雨足も弱くなっていたので、

「このくらいなら傘ささなくてもいっか」

と、傘を閉じ、
シートチューブと後輪のシートステーあたりの間にブッ挿した。
いつもの道をスイスイ進み、
そして、例の国道のアンダーパスにさしかかる。

先述の通り、
帰路の場合はより勢いが必要となるため、
私くらいになると、
下りに入ってから加速するのではなく、
下りに入る前の平坦部分から加速
し始め、
「鬼の加速」でもって最初の下りに突入するのだった。

これが、
件の国道アンダーパスを一気に上り切る極意なり。
(いえ、若気の至りザンス)


◆いざ!アンダーパスへ

さぁ。
アンダーパスへ突入だ。

加速しております!
加速しております!
あ、いつもより余計に加速しちょります!

そんなこんなで、
雨が止むかどうか微妙な空模様の中、
アンダーパスの入り口へ差し掛かった時、
私は妙な違和感を覚えた。

アンダーパス入り口付近に人が止まっている。

何かがおかしい。
こんなところ、普段止まって休憩するような場所では無い。
ましてや今は空模様も良いわけではない。

「踏ん!踏ん!」

違和感を覚えつつも、依然としてペダルを踏み続け加速。
すると、
止まっている人の奥にもう一人、
また一人と、自転車に乗った人が停車しているのが見えてきた。

おかしい!
これはおかしいぞぇ!?

どういうこと!?
答えはCMの後!

・・・と焦らされることに辟易しているあなたに朗報です。
CMなんて挟む隙間もないほど
あっちゅう間、
コンマ数秒後に答えが目の前に飛び込んできた。









はい、正解!


止まっている人が一人じゃねぇ

想像頂けるわかるだろうか?
この「まさか!」感が。
おわかり頂けるだろうか?
この「もう後戻り出来ない」感が。

おそらく、あまりに急激な雨量に
一時的に排水能力を超えたか、
排水溝に何かが詰まってしまったか、
とにかく、初めて見る
我が通学路での冠水(?)だった。

なんてこたぁない。
ここいらにいる人(若者)たちはみな、
普段ではあり得ないプールみたいな量の水たまりに、
ただただ立ち往生してしまっていたのだった。

冠水。
最近では、あまり嬉しくないことだが
どこそこが冠水した
という話を耳にする機会が多くなったが、
私が高校生の頃、私の身の回りでは皆無であった。

なんじゃぁ〜こりゃぁぁ!

脳内がバグる。
あり得ない光景が目の前に広がっている。

そらみんな停車するわな!?
水溜まってるもんな。

そら止まれるわな!?
そんなバカみたいに加速してないもんな。

私?
そら止まれんわな!!
アホ加速ブースト中だからな!

人間、こういった窮地に陥ると、
脳がフル活性化して、
超短時間にいろんなことを考えることが出来ると、
何かで見聞きしたことがあるが、
御多分に洩れず。

若さも手伝ってか、
まさにこの時の私は、目にも止まらぬ速さで
脳内問答大会を繰り広げていた。

お主、この状態から止まれるか!?

否!フルブレーキでも間に合うかどうか。
  ブレーキをかけて間に合わなくて、
  最終的に「あららのら!ザパーン」
  という最悪のケースだけは
  なんとしても避けたい。

お主、わき道に突っ込んで緊急退避出来んか?

→否!人がいるし、そこコンクリ壁だから!

・・・。Are you ready!?

→やらいでか!
  Yes,I can!
  Yes,I can!
  Yes・・・

ザブーン!

人は誰しもが、
自分の失敗というものを人には見られたくないものである。
笑い者になりたくない故、凡ミスを悟られたくないものなのである。
私も若かったのだ。
せめてもの強がりで、あたかも、

わかっていたけど
敢えて突っ込んだんだぜ

感を全力で出して、平然な顔をして突入した。
この間、わずかコンマ数秒の出来事であった。


◆振り向くな、振り向くな、後ろには・・・

ふっ。
ヒヨッこどもよ。
こんな水たまりにビビっているようじゃまだまだよ。
某サイクリングロードのハイセイコーと呼ばれた走りっぷりは伊達じゃないぜ!

実際①



オラオラオラー!
目に焼き付けたか、ワシの漢気を!
テメェら、ワシに続かんかーい!

実際②

バシャ、
バシャ
バシャシャ・・・

武士の情け。
頼む、しばらくの間
遠い空を眺めていては下さらんかぇ。

振り向くな
振り向くな
後ろには気まずい空気しか無い

せにょ山 シュウジ

時の流れというものは、
時に短く、時にやたらと長く感じるものでございます。

この時、この場にいた誰しもが、
早く時が流れるのを願ったに違いありません。

特に、
ぶっちぎりで、オイラがね!

◆終わりに

七転び八起き。
人生何事も経験である。

経験とは何事にも代え難い財産なのでございます。
今回の経験からも、素晴らしい学びがございました。

その学びを、私のような者が
生意気なようではございますが、
皆様にご紹介させて頂き、
終わりの言葉とさせて頂きたいと思います。

自転車というものは、
水の中では
思いの外進まないものなんだなぁ

ーせにょ  とある初夏の出来事よりー


おしまい

ー追伸ー
坂を上った先にも、
立ち往生している人がいたよ
(o'ー'o)
またもや気まずかったよ

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