昔カッコつけて読んだ本に今「はたらくこと」の意味を教わる
「子供はいるの?」
外国人にハイキング・ガイドしていて、話題が家族の話になるとたまに聞かれる質問です。
「いません」と答えると「もうすぐだね ( soon ) 」と、気を遣ってそんな言葉をかけてくれます。
そんな場合私は、何も答えずに笑顔で頷きます。
「私たち夫婦は子供はつくらない予定です」
などと言うと空気が重くなってしまう気がして、曖昧な返答でやり過ごしています。
15年前に読んだ本
生物学者リチャード・ドーキンスは著書「利己的な遺伝子」で、人間には2つの「進化的要因」があると解いています。
遺伝子 (gene)と、ミーム(meme)です。
前者は「子孫」に託された情報で、後者は「文化」という形で拡散される情報を指します。
どちらも人類の「発展」や「幸福」には欠かせない情報です。
私はかつて、15年以上前にこの本を読みました。
当時私は友人達とバンドをしながらアルバイト生活をしていました。
周囲に少しでも「知的なやつ」と思われたくて、名著と呼ばれる本を片っ端から読んでいたのを覚えています。
何者にもなれない焦りから、無駄に空回りしていた頃の話です。
「利己的な遺伝子」は、そんな私の青春時代のほろ苦い思い出の一冊でした。
15年が経過して
そんな私もWEBの専門学校を卒業し、一般企業に就職して、結婚し家庭を持ちました。
勤め先ではSEOを利用したマーケティングについて学び、順調に成果に結びついていました。
子供もじきに出来るだろうと思っていたのですが、人生はままならないものです。
そのうち、オーバーワークが原因で鬱病になってしまい、10年以上勤めた会社を退社することになりました。
その後、妻や周囲の助けでなんとか鬱病からは回復して今に至ります。
良いことも悪いことも、色々あるのが15年という月日です。
2年前に始めたこと
外国人に向けた「ハイキング・グループ」を作ろうと思い立ったのは、ちょうど2年ほど前です。
当時、薬のせいか1日の中でボーっしている時間がけっこうありました。
そんな時期に、一人で出かけた雲取山(東京最高峰の山)で遭難しかけるという危険な経験をしたのです。
登山道を見失った私は焦りから沢に下りてしまい、崖を滑り落ちて履いてたズボンが破けてしまいました。
幸い命に別状はなく、崖を登り返す体力も残っていたので日没前までには登山道へ戻ることができました。
その出来事をキッカケに私は「地図読み教室」に通い、「遭難防止のための書籍」を読み漁りました。
本を通じて「低山の危険性」について学び、日本で暮らす外国人や旅行者に向けた登山ガイドの必要性を感じたのです。
このとき作った「ハイキング・グループ」は、今では数千人規模にまでなりました。
有難いことに有料イベントにも関わらず、毎回たくさんの方々にお越しいただいています。
はたらくとは何か
人はなぜ働くのか。
古今東西、多くの人を悩ましてきた命題かと思われます。
私は個人的に「ミーム(meme)を広めるために働いている」のだと考えています。
つまり、より「良い文化」や「良い習慣」を少しでも多くの方に伝え、広めていくことが、人が働く目的だと思います。
たとえ個々の労働がどんなに些細なものであっても、総体として人類の進展に貢献しているのだと信じています。
例えば、ゴミの清掃員さんのお仕事は、暮らしや街の衛生水準の向上に貢献しています。
地域社会の衛生水準向上は、「乳幼児の死亡率」と相関性があります。
つまりゴミ清掃の労働は結果的に「乳幼児の死亡率」低下に寄与していると捉えることも出来ます。
もちろん一人一人の清掃員は、ただ単に賃金のために働いているのかもしれません。
しかし総体としてみればある種のワクチンの開発などと同程度の効果を生んでいても不思議ではありません。
そう考えると、私たちの日々のあらゆる労働や人の営みは、全てミーム(meme)を通じて人類の発展へ貢献していると捉える事が出来ます。
ちょっと大げさになってしまいましたが「利己的な遺伝子」に書かれていたミーム(meme)という概念は、そんなわけで今では私の「はたらくための動機付け」になっていると言っても過言ではありません。
この本を読んだ当時は、難しすぎてよくわからないというのが正直な感想でした。
しかし15年後の今になって時間差で「なるほどなー」と感銘を受けているしだいです。
最近始めたこと
今年の春からオンラインで「ハイキング用のGPSアプリ講座」を始めました。
日本に住む外国人向けに始めたので、苦手な英語で参加者さん達に助けられながら何とか続けています。
世界の自然を愛するハイカーさん達が、日本で安全に楽しくハイキングできる環境作りのお手伝いをしたい。
そんな思いが強くなったのは、かつて「利己的な遺伝子」で学んだミーム(meme)という概念の影響が少なからずあります。
もちろん子供のことや、復職に関してもまだ完全に諦めたわけではありません。
しかし思い通りにならないことも沢山あるのが人生かと思います。
今は無理せずに体調と健康に気をつけながら、例えささやかでも、自分の身の回りのより良い文化的な環境づくりに貢献出来ればと考えています。
以上、
ここまでお読みいただきありがとうございました。
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