きっと多分何気ないことの方が

 こんばんは。しんしんと降る雪がドカッと積もり、臨時休業となった弊社です。朝までに50センチ積もって、そこから昼間に+10センチぐらいですかね。
 雪は好きなんです。でもドカっと降るのはやめてほしいところ。

 さあ今日はこの記事を読んでいて思った事を書いていきますですよ。


フリー素材信長

 ファスト映画に対する巨匠の見解。

 こういう若者を「教養がない」「我慢ができない」と問題視してるみたいだけど、それは作品が面白くないことの言い訳だよ。そもそも映画は、ある人物の人生やらを何十倍も早回しして、「たった2時間」にまとめたものだからね。それすら「観ていられない」というのは、単純に面白くないってことでしかない。

 ただ、オイラからすると「時間をムダに使う贅沢」を知らない若者を可哀想だと思ってしまう。良い作品を観て、思考を巡らせながら時間をゆっくり浪費することは最高にリッチなことだからね。

 今は情報が溢れすぎて、「早くて効率的」であることが美徳とされるようになった。でも、“贅沢”というのは効率とは対極のところにある。  

 映画で言えば「見どころ」は、大ドンデン返しや衝撃的なラストじゃない。何気ないシーンの情景やセリフのないシーンの「間」が魅力なんだよ。それはファスト映画じゃきっと飛ばされている部分だろう。そこを楽しめなければ、作品のあらすじをなぞったところでピンと来るはずがない。

ビートたけしが語る伊集院静さんとの思い出「年下だけど、尊敬できる男だった」 NEWSポストセブン 

 これは読んでいて本当にまさしくその通りだと思ったんですね。若者が、っていうより、ファスト映画を好む人に対してそう思うんです。

 例えばたけしさんが作った最新作「」は、信長を取り巻くよくあるあの時代のお話ですよね。(見てないんですけどね)
 そこだけ切り取ったら、「もう使い古されていて飽きた」ネタ、界隈では『フリー素材』と言われるまでになった信長。
 今年の大河ドラマでも結局あの時代を最も長く尺を使ったわけで。

 でも表現者は凝りずに織田信長を描き続けるんですよ。なぜか?魅力的だからです。お金の匂いがするという人もいれば、生き様がかっこいいから、死に方に諸説あるから使いやすい、第六天魔王とか名乗ってるとか、まあ色々あるわけです。

 ただ肝心なのは自分の『信長』をどう演出するかです。邪悪に描くか、正義の人と描くか、渡来人に寛容だったところを利用して未来人にも寛容にしたり、描き方なんて沢山あるんです。

 でも信長は一般的には桶狭間で今川義元を討ったあと、本能寺の変で明智光秀に謀反を起こされるまで、という筋書きは決まっています。

 この桶狭間~本能寺までの間に、何があったのか。そこを自分たちなりの解釈で受け手側に与えるというのが腕の見せ所なんです。

ファスト映画を好む人は、

桶狭間~本能寺という筋書きを見られればいい人なので、織田信長がうつけだろうが天才だろうが別にどっちでもいいのでしょう。

 そこを勿体ないというのは、何だか分かる気がします。

私の友人にも・・・

 とはいえ私の友人にも、ドラマや映画を2倍速、3倍速で見る人間や、「wiki読んだから内容知ってる」という人間までいます。

 それが彼ら自身の楽しみ方だといえばそうなのだし、2倍3倍で見た分だけ人より2本3本多く作品を見られるというメリットもあるのでしょう。
 私はそれを否定はしません。Youtubeなどの動画配信サービスでも、倍速視聴機能は設けられて久しく経ちます。

 ただ私はそれをしません。何故か?

 「名言集まとめ」などに乗ってこない、登場人物のふとしたセリフやシーンが自分に響く事を知っているからです。

 作者が意図して作った名言は、演出がバチバチにきいていてわかりやすく沢山の人に届きます。でもふとした瞬間に言い放たれた言葉、意外と良かったりするものなのですよ。

 私の敬愛するパトレイバー劇場版2の荒川のセリフ。

走る車の中にいると落ち着く性分でね、考えがよくまとまるんですよ。走ることで自らは限りなく静止に近付き、世界が動き始める。

劇パト2 荒川

 紹介するにしては有名なシーンかもしれませんが、「分かるなあ」って思うんです。
 こういうシーンは、カットされるでしょう?つまりはひとつ共感を拾えなかった事になるわけです。
 共感が多ければ多いほど作品を愛する事ができます。共感できない違和感もあるかもしれませんけど、それも含めて作品です。

 作者さんたちが2時間という時間にまとめてくれたなら、2時間で見ましょう。
 否定ではなく、提案です。きっと何気ないことの方が、自分に深く鋭利に刺さる時ってあるものですよ。


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