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あんさんぶるこんてすと

 おはようございます!昨晩↑の作品を観て来たので感想を書いていきます。ネタバレが響くような作品ではないので、ガッツリ目に本編に対しての記述をしていきます。予めご了承ください。

役職なりの仕事

 3年生が部活を引退した12月前後、時系列的には誓いのフィナーレより更に後、リズと青い鳥より後の作品となります。

 部長となった久美子、副部長の秀一、ドラムメジャーなる役職となった麗奈の3人は、指導する滝先生に呼び出されます。

 呼び出された理由は、この冬出場予定のアンサンブルコンテストに関して。
 京都府大会→関西大会→全国大会と進んでいくこの大会は、3~8名で出場する少数精鋭の大会。

 僅か2年あまりで強豪校となった北宇治高校としては、当然選ばれたメンバーが代表して出場するのが本筋・・・かと思いきや、滝先生の提案は全く異なるものでした。

 「生徒たちが全員関わってほしい。だから自らで人に声をかけ、グループを作り発表する。代表選定も顧問2名によるものではなく、生徒たちの投票に任せたい」

 というのです。これに付け加えて、引退した3年生の意見も投票に反映してはどうかと提案。

 副部長である秀一は部を離れた人間の客観性が入る事で公平性が生まれるとこれを容認。
 一方でドラムメジャーの麗奈は演奏するのは自分たちなのだから、自分たちだけの方が投票結果に納得できると反対。

 意見が割れたところを滝先生に振られる部長の久美子。

 「1,2年生の投票と3年生の投票両方とも聞くのはどうでしょうか~えへへ~」

 みたいな自身としては苦し紛れの折衷案として出した提案を、副部長である秀一が補足する形で、

 「投票を2つに分けて、1,2年生の投票と3年生の投票両方やって、意見が分かれるようなら1,2年生の投票を優先する。それなら高坂(麗奈)の懸念点もカバーできる」

 と伝えます。麗奈もそれならば問題ないとし、久美子は滝先生から皆の事を考えた良い案だと褒められる事に。
 しかし当の本人は褒められるコトをしたとは思っていない様子。

 えーこの短い尺の中で思う事。それは役職の采配が素晴らしい事です。無自覚で全体の事を考えられる久美子。それを補佐する秀一、鬼軍曹として自分にも他人にも厳しいドラムメジャー麗奈。
 その人となりがしっかり出る会話劇でした。

窓の開け方を知っていてくれてありがとう

 チラホラとグループが決まっていく中で、中々決まらない面々も。そんな中でも部活動は続いていき、当然ユーフォニアム奏者として自身の練習もしていかねばならない久美子。

いつもの場所でようやく一息ついた、かと思った久美子ですが、か細い声がどこからか聞こえてきます。

 声の主を探すと、窓を少しだけ開けてこちらに話しかけてきた3年OGの鎧塚みぞれがいました。彼女は音大を受験予定で、その為の練習スペースを滝先生から特別に用意されていました。

 とっさに驚いてしまった久美子でしたが、中々窓を開けられないみぞれに対し、外側からガラっと開けてしまう久美子。

 これに対しみぞれは「この窓重くて。良く開けられるね」と話すと、久美子は「内側からだとコツがいるのかもしれないですねー。」と返答。

 そして、「窓の開け方を知っていてくれてありがとう」と答えます。

 久美子は頭に???マークを付けますが、みぞれは言った側が分かっていれば良い事と意味までは説明しません。

 この言葉は恐らくですが久美子が部長になった理由、資質とも呼べるかもしれませんが、大切なキーワードだと思います。

 劇中では勿論物理的に窓を開けてくれた事に感謝もしているのですが、みぞれとしては心の窓というか、他者の気持ちを理解し共に悩み、状況を解決していく。=窓を開けるという意味で使っているのだと思いました。
 更に付け加えるならば、人と人の間にある窓を開け放ち、風通しを良くする。

 チームモナカ(吹奏楽コンクールの補欠部員の愛称)出身の葉月やつばめに対する的確なアドバイスも、他者を良く見ている久美子ならではの視点で、彼女たちの悩みを解決していきましたね。

 これこそが久美子の資質であり、みぞれもそれに謝意を述べ、どのようにして役職を選定したのかは分かりませんが(十中八九他薦)、部長に選ばれた所以ではないかと感じました。

 この後またみぞれとの絡みがあるのですが、その際にも半開きとなっていた窓を見つけ、みぞれに「開けましょうか?」と問うシーン。

 みぞれはこれを「いい」と断ります。恐らくですが彼女は自分の手で窓を開けたくなったのでしょうね。

 リズと青い鳥ファンとしては涎とまらん描写でした!

 個人的にこの2場面がとても印象に残っています。他は正直ファンサービス的側面の強い作品で、特筆すべき点はそれほどなかったかなという印象でした。

 あっそうだあと1つだけありました。

麗奈の食べたチョコ饅の意味

 コンテストが終わり、チーム麗奈は敗れました。夕暮れの公園に集まったいつもの4人。
 いつも通り肉まんを食べる久美子に対し、麗奈はチョコ饅を選択。買っておいて1口も手を付ける前から久美子の肉まんとトレードを投げかける麗奈。
 何で買ったのさという久美子の問いに返答はありません。観念して1口いきましたが、やはり甘くて自分の口には合わない様子。
 葉月やサファイア川島に譲って高坂さんまじゴッド、ゴッデスと崇められていました。

 この描写。私なりに推察をするならば、麗奈の挑戦だったと思うのです。麗奈は自他共に厳しく接する人間。コンテストの練習の際にも、演奏についてこれない葉月やつばめに対し、率直にダメな点を伝える麗奈。

 葉月は体育会系のノリが強い子なので、自身の能力不足だと更に気合が入るのですが、つばめは段々自身の演奏に自信を無くしていきます。

 それを解決したのが久美子だった、それを受けて麗奈の中で自分自身への変化を求めようとしたのではないかなと思ったのです。

 それが普段は絶対に選ばない甘~いチョコ饅という択を取らせた。しかしやはり甘さは自分には合わないと再認識した部分でもあるのかなと思いました。

 久美子もこの描写の前に、厳しく指導していく麗奈の葛藤に対し、麗奈はそのままの麗奈で良いと思うと肯定していました。

 麗奈もその事を理解はしているつもりでも、どこかで自分の中にも甘さ(対話)で相手を納得させるやり方があるのでは?と模索していたのだと思いました。

 あん饅ではなくチョコ饅というところがミソで、自身の対応に少し苦さも感じている、みたいな意味も込められているのかも。

 この辺の心理描写は昔から上手かったですが、本作もかなり秀逸な部類だと感じました。

作品評価

 本作は過去作と比べ、演奏シーンがほとんどありません。そもそも本編映像が58分とかなり短い作品なので、映画として観に行くと正直言って少し損した気持ちになるかもしれません。
 この辺は評価としてマイナス点になると思いますが、一方で、上記でも書いた心理描写。

 これはとても巧みでした。会話劇を愉しむことの出来る方なら十分見るに値する作品だと思います。

 またシリーズ通してのファン、これはもう文句なしにオススメです。あの事件があって以降、止まってしまった北宇治高校吹奏楽部メンバーたちの時間が、再び動き出しました。

 肉感というか、主に太ももまわりですが、かなり強調されるようになりましたかね?前からでしょうか。
 正直どこぞのアトリエかよとすら少し思ったので、戻し気味にしてほしいかなーと思いました(笑)

 それだけでも本当に、ほんっとう~~~~~に感謝せねばなりません。3誓いのフィナーレ~3期への繋ぎの作品でもあるので、シリーズファンは絶対見ておきましょう。
 観ずにあれ?こんな話やったっけ?と言っても遅いのです。3回観ろ!

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