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「書く」って、きっと一人じゃできない——滋賀を拠点にローカルの“物語”を言葉で可視化する【書くと共に生きる人 | 佐々木将史さん】

「書くと共に生きる」を合言葉に、2016年に発足した『sentence(センテンス)』。同コミュニティには全国各地からメンバーが集い、互いのライティング知識や経験を共有し合いながら、真摯に「書く」ことを学び合っています。

所属する人のなかには、職業としてライティングに関わる人もいれば、趣味の一貫として嗜む人もおり、その顔ぶれは実に様々。

一体どんな人が所属しているのか、どのようにコミュニティを活用し、自らのクリエイティブに活かしているのかーーsentenceと会員の軌跡を辿りながら、コミュニティのコンセプトでもある「書くと共に生きる」について、彼らのひたむきな思いに耳を傾けました。

今回のお相手は、sentence入会(2018年8月〜)から約1年、オンライン講座に参加するなどコミュニティを上手く活用し、個人ではフリーランスの編集者としても活躍する佐々木将史さんです。

佐々木 将史(ささき まさし)
1983年生まれ。保育・幼児教育の出版社に10年勤め、’17に滋賀へ移住。フリーの編集者、Webマーケターとして活動を開始。保育・福祉をベースにしつつ、さまざまな領域での情報発信や、社会の課題を解決するためのテクノロジーの導入に取り組んでいる。関心のあるキーワードは、PR(Public Relations)、ストーリーテリング、家族。

10年勤めた出版社を離れ、移住先の滋賀で保育業界の課題と向き合う

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ーーよろしくお願いします!はじめに、佐々木さんの「これまで」について聞かせてください。大学卒業後、どのようなお仕事を?

佐々木:新卒から10年間、幼児教育や保育士向けの教材を作る大阪の出版社で働いていました。といっても、本職は「編集」ではなく、絵本の仕掛けなど「ハードウェアの設計」がメイン。企画や校閲にも携わっていた時期がありましたが、ガッツリ文章に向き合っていたわけではありません。個人的にWebマーケティングを学んでいた時期もありましたが、今のようにWebメディアで編集をした経験はなかったです。

ーー長く働き続けた会社を辞めるには勇気がいったかと思いますが、そのきっかけは?

佐々木:働くなかで出版業界の不況を肌で感じていたのと、単純に長くいすぎたなと。個人でWebマーケティングを勉強するようになってから、「保育関連の出版はデジタルが弱い」という課題意識を持つようになり、余計にこのまま同じ会社にいてもダメだなと感じたんです。子育てのタイミングも重なったので、2017年に退職し、妻の故郷である滋賀県へ引っ越しました。

ーー“安定”よりも、“挑戦”を手に取ったんですね。滋賀へ移ってからは、何を?

佐々木:採用広報や求人媒体のお手伝いをするようになりました。同時に前職の頃から課題を感じていた「保育」について掘り下げていくうちに、保育施設の情報発信が足りていないと気がつき、そこへのアプローチも始めましたね。何かできないかと考えていたのですが、そもそも外から関わっているようじゃ解決の糸口は見つけられない。内情が知りたい思いもあったので、2017年末に保育士の資格も取り、翌年の春から現場でも働くようになりました。

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移住先である滋賀県の街並み

ーー出版業界から一転、保育の現場へ足を踏み入れた。そこから、編集者になるまでの変遷が気になります。

佐々木:しばらく保育施設で働き、現場の事情が少し見えてきた段階で「本格的に情報発信に対するアプローチができないか?」と考えました。保育施設で働きながら、自前でインタビュー記事をいくつか作っていましたが、僕は文章を書くよりも、人の文章を読んで工夫や改善の余地を考えるほうが好きなんですよね。人の文章と並走するほうが性に合っている。

ーーなるほど。そこから、書き手ではなく、“編集者”という立場から情報発信に困っている人たちをサポートしようと。

佐々木:はい。以来、滋賀で複数メディアの執筆・編集を担当しながら、東京や愛知のビジネスメディアの企画編集なども担当しています。

sentenceのワークショップで、Web記事の編集セオリーを学ぶ

ーーsentenceに入ろうと思ったのは、どのタイミングだったのでしょう?

佐々木:編集者に軸足を移そうかなと悩んでいた時期に、Twitterでsentenceの存在を知りました。inquire(sentenceの運営元)の兄弟法人であるsoarのSNS周りをよくチェックしていたから、関連ツイートで流れてきたんでしょうね。編集者としての足場を固めるためにも、ライティングについて学び合える場所はあったほうがいいなと思い、2018年8月に入会しました。

ーーすると、入会から約1年が経ちますね。普段はどのようにsentenceを活用しているんですか?

佐々木:sentenceのSlackを1日に1回はチェックするようにしています。自分が書いた記事を投稿する「書いたよチャンネル」や、気になっているコンテンツをシェアする「推しコンテンツ部屋」、良記事の分析をする「記事分析チャンネル」など、さまざまなチャンネルがあるので、それらをパーっと見る。僕もたまに「書いたよチャンネル」は投稿しますし、他の会員さんが共有したことで学びに繋がるものがあれば、それを吸収するようにしています。

ーーなかでも佐々木さんの“一番の学び”に繋がった機会は?

佐々木:sentenceに入りたてのときに参加した、ビジネスイベントの書き起こし全文が掲載されているメディア『logme(ログミー)』から記事を執筆するワークショップですね。同じ書き起こしから参加者それぞれで記事を作ったのですが、アウトプットの差がすごく面白かった。編集次第で全く違うものが生み出せるのかと感動しましたね。今よりも遅筆だったので、原稿を書き上げるのに15時間ほどかかりましたが、出版物とは違うWeb記事の基本的なセオリーを試行錯誤しながら身に付けていけたのは有り難かったです。

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佐々木さんが在籍するコワーキングスペース「ROOT」にて

ーー時間をかけた分、得られる学びも大きかったんですね。これから、sentence内で実現したいことや挑戦したいことがあれば教えてください。

佐々木:sentence発信のnoteを充実させ、コンテンツが貯まったタイミングで紙媒体に挑戦したいです。それこそ、Webメディアである『NewsPicks』が、雑誌を出したように。時代を経るごとに紙媒体は読まれなくなっていると耳にしますが、僕はWebを起点に紙を出す動きが活発になるんじゃないかなと思います。紙媒体は「保存できるもの」として価値を発揮していくはず。Webと紙では構成の仕方も変わってくるので、前職の経験を生かしつつ、何か貢献できれば嬉しいです。

「書く」ことは、人と共に生きること

ーーここからは、佐々木さんにとっての「書く」について詳しくお話を聞かせてほしいです。佐々木さんの「書く」原動力はどこにあるのでしょうか?

佐々木:僕にとっての「書く」原動力は、人の言葉を可視化することにあります。滋賀へ移住してから、ローカルには面白いストーリーを持った人や、喋りが上手い人がこんなにもいるのかと驚きました。保育関係者や経営者も日々いろんなことを考えていて、彼らの素敵な言葉を何度も耳にしてきた。ただ、それがどこにもアーカイブされていないんです。彼らの思考を“言葉”として落とし込めば、彼らの考えが伝搬するだけでなく、話し手自身の思考の解像度も上がります。取材やイベントを通し記事を作るなかで、そういったことを感じられることが、編集者としてのエネルギーに繋がっているのかなと。

ーーそれが「書く」原動力でもあり、「書く」なかで幸せを感じる瞬間でもあるんですかね。

佐々木:そうですね。読者からの反応ももちろん嬉しいですが、僕は取材対象者が喜んでくれると、記事の反応を一番ダイレクトに実感するので、喜びを感じやすいです。まだまだ自分のスキルに自信はありませんが、記事を構成するときに「この話が手前にくるだけで、めっちゃいい感じになる!」が見えたときも、編集者としての喜びに繋がる瞬間ですね。

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ーー読者、取材対象者、作り手の三方良しな関係性が築けるライティング、とても素敵です。今後、「書く」をベースに実現したいことはありますか?

佐々木:ローカルにある小さい法人や、広報機能のない福祉法人の情報発信のお手伝いをしたいです。少しずつそういった類の話はもらっているので、長期的なアプローチを考えながら、仕事の主軸に置きたいと考えています。

ーーありがとうございます。最後に、sentenceのコンセプトでもある「書くと共に生きる」という言葉は、佐々木さんにとってどう響きますか?

佐々木:「書く」ことは、「人と共に生きる」と同義だと思っています。読者、取材対象者、ライターと関わっていくこと、それが「書くと共に生きる」ことなのかなと。これからも一人の編集者として、さまざまな人と併走しながら生きていきたいです。

10年勤めた出版社を離れ、新天地である滋賀県で自分のやりたいことを見つめ直した佐々木さん。sentenceでもオンラインワークショップに参加し、日頃からライティング知識の吸収に努めるなど、「書く」ことに真摯に向き合う姿が垣間見れました。佐々木さんが作り出す、読者、取材対象者、作り手の三方良しなコンテンツをこれからも楽しみにしています。 
 
取材・文/なかがわあすか

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