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「例題のない教科書」の中身を分かりやすい言葉で発信したい - セキュリティエンジニア 中村侑磨さん【2019年5月期受講生課題記事】

※こちらは「ライティング基礎ワークショップ(2019年5月期)」の受講生が、課題として作成したインタビュー記事です。

——中村侑磨さんは、セキュリティエンジニアだそうですね。初めて聞く職種なのですが、どんな業務を行っているのですか。

たしかに、自分と同じ仕事に就いている人には、あまり出会ったことがありませんね。普段はウェブサイトに攻撃を仕掛けて、システムの脆弱性の発見やセキュリティの検査をしています。いわゆる「ホワイトハッカー」に近い仕事です。

——一般的なエンジニアがシステムを構築するのに対して、中村さんはそれを壊す側なのですね。現在の仕事に就いたきっかけを教えてください。

今の会社には当初、開発領域に携わるエンジニアとしてジョインしました。新人研修が終了した後、上司から「セキュリティエンジニアのポストに空きがあるので、やってみないか」と誘われたのがきっかけです。

セキュリティは専門ではありませんでしたが、学生時代に情報学科でコンピュータプログラムを学んだ経験を生かせるのではないかと思いました。当時はちょうどセキュリティ事故が多発し、予防対応の需要が拡大し始めた頃でした。「世の中の最先端で起こっていることに関する知識を身に付けたい」という好奇心もあり、セキュリティエンジニアになろうと決意して3年目に差しかかろうとしています。

——もともとの専門はセキュリティではなかったのですね。普段の業務は具体的にどのような手順で進めているのですか。

セキュリティ分野に知見を持つエンジニアが書いた「基本設計書」をはじめとして、さまざまな手順書を読みながら業務にあたっています。手順書に記載されている内容は、主にプロジェクトがどんな仕様か、ウェブサイトをどういった手法で攻撃するか、などです。

文中には専門用語が多用され、見ただけですぐに理解できるものではありません。たとえるならば「例題のない教科書」でしょうか。

——それほど複雑な内容の手順書を読み解く手がかりはありますか。

手順書を読んで理解できない箇所は、背景となる概念やたとえ話が書かれている記事をリサーチして、ある程度の枠組みを把握するように心がけています。自ら調べた情報を脳内編集で補いながら、あらためて専門的なドキュメントを読むと理解しやすいです。そうやって、易しいレベルの記事と専門的な手順書を参照する作業を繰り返して、整合性が取れているかを検討します。

——インターネットの記事が手順書を読む手助けになっているのですね。中村さんご自身は、今後インターネットで文章を届ける側になりたいと思いますか。

知識を整理して、ゆくゆくは記事を発信していきたいです。他人の書いた記事の内容と手順書の記述が、頭のなかで結びついた時に「僕が執筆する立場なら、こう伝えるなあ」と思う瞬間があります。同時に、自分の持つイメージをどう適切に言語化するか、表現を噛み砕きすぎて誤った捉え方をされるかもしれない、という課題や懸念も感じています。

将来的には僕と同じように、未経験の方がエンジニアなどの仕事に就くことも増えると思うので、その際に見てもらえるような分かりやすい記事を書きたいです。

——この先仕事だけでなく、プライベートでも文章を書かれる予定はありますか。

プライベートで関わりのある方々が情報発信に力を入れているので、そのサポートができたらと考えています。

業務で書く手順書は、はじめに大項目、次に細かい項目といった目的に沿った枠組みがあります。プライベートで書く時も、話の組み立てや流れそのものは変わらないと思います。

ただ手順書には、正解しか書けません。世のなかには、正解のないモノを発信したい方がたくさんいます。その方の気持ちを目に見えるモノに変えていくことが、僕のやりたいことです。

(インタビュー・文/村上 未萌)
(写真/Arif Riyanto on Unsplash

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