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句具ネプリ冬2021 感想など

今回も大ボリュームで読み応えたっぷりの #句具ネプリ でした。間口の広い句会なので、門外漢ながら私も参加させていただきました。活字になる喜びは創作のモチベーションとして強力です。編集のご苦労を思うと、無料でいいのか?と心配になるくらいです。
川柳畑の人間なので恐らく俳句の評としてはズレていると思うのですが、人の心を動かしたその事実は作者にお伝えしたいと思う主義なので、僭越ながら感想を書かせていただきます。

生まれ来る心音に似て初雪は/高木小都 

微かな雪の音に胎児の心音を重ねる繊細な句で、しみじみとその貴重さを感じる。初雪の白さが無垢な存在と結びつき、より淡い景色が広がるのがよかった。 

冬ざれや誰にもひとつされこうべ/十猪
 
一休宗純の「ご用心」の逸話が思い浮かぶ。遠くて近い死というものが、誰にも1回は用意されている不可思議。こういう句を作りたいと思う。 

風花や洗濯機よりティッシュ出づ/香田ちり 

洗濯機から出てくる白いティッシュ片の見立てが面白い。あの、やっちまった感を季語で昇華しているのが素晴らしいと思った。冬になると、とくにポケットのティッシュの事故率が上がるだけに、実感もある。 

QUOカード十円残る年の暮/海峯企鵝 

10円だけ残っても仕方ないのだけど、それが残ってしまうところに暮れの慌ただしさや切なさ、払い切れた安堵感や懐の寒さなどが詰まっていて肌感があった。こういう句に憧れる。 

樟脳の薫りとともに十二月/孔明 

いよいよ寒くなってきて、タンスから出してきた外套。その香りではじまる十二月。嗅覚のある句はストレートに感覚に訴えるのでとても共感できる。 

北風の分厚き日々をめくる音/瑠璃星 

強い北風の出す重たい寒い音。それが1日1日をめくっていく、という擬人化が新鮮で素晴らしい。ゆっくりめくられる冬のページの後には春も予感されて、長い時間軸も感じられた。 

冬さうび性記されぬ主人公/ばんかおり 

冬の薔薇は強く気高い。主人公の性は書かれていないというところで、ベルばらを思い出し、同時に変わりゆく時代の流れも感じた。多面的で時事性もあって、読んだ後にしばらく考えてしまった。深みのある句だと思う。 
 
通販の金切り声や十二月/野島正則 

もうこれは某通販番組だよなと笑いながら読んだ。更にお値引!年末価格!のセリフが聞こえてくる。なんでもやたらとエキサイトしてくる年の瀬を切り取っていて、直感的に好きだと思った。 

蜜の香や大学芋に残る熱/どいこい 

蜜の香の甘さと熱さ、それが大学芋という字面でカジュアルさを伴い、残る熱、の結句で懐かしい学生生活が浮かんできた。ほんのり熱い芋と暗喩としての情熱がリンクする気がして、気持ちいい。 

俳句は季語があるので、不精な自分には無理だなと思っていたのですが、その考え方を変えてくれたのが句具ネプリでした。皆様が積極的に感想をつぶやくことに感心して感化されました。コンテストの選者には響いてなくても、地球のどこかにはこの感動を共有してくれる人がいる。その素晴らしさを体感できたのがなにより嬉しかったです。
最後にこの企画を運営してくださる句具の中の方にお礼を申し上げたいと思います。ありがとうございました。

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