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勝利を決定づけた瞬間:オスカー・ピアストリが語るアゼルバイジャングランプリのオーバーテイク

オスカー・ピアストリは、F1アゼルバイジャングランプリでシャルル・ルクレールに対して優勝を決定づけた瞬間を振り返り、非常にリスクの高いオーバーテイクが彼にとって「勝利の鍵」となったことを明かしています。このレースでのオーバーテイクは、ピアストリがレースエンジニアの指示を無視してでも行うべきだと判断したもので、彼にとって「やるか、やらないか」の究極の決断を迫られる瞬間だったのです。

ターン1の攻防:リスクを伴う決断

ピアストリが唯一のピットストップを終えた直後、ルクレールとの激しい争いが展開されました。特に決定的な瞬間となったのが、レースの20周目、ターン1でのオーバーテイクでした。この時、ピアストリはマクラーレンが壁に衝突するリスクが高いにもかかわらず、果敢にインを突き、ルクレールを抜き去ったのです。表彰式前のクールダウンルームでは、ルクレールに対して「マクラーレンがターン1の壁に激突する可能性が50%あった」と冗談交じりに語っています。

実際、このオーバーテイクはピアストリの直感によるものでした。彼はレースエンジニア、トム・スタラードから「タイヤを慎重に扱うように」との指示を受けていたにもかかわらず、その助言を無視する形でオーバーテイクを試みたのです。「あのタイミングでやらなければ、もう二度とチャンスは来ない」とピアストリは振り返り、勝利を掴むためにリスクを取った瞬間を回想しました。

「その時点では、ルクレールのタイヤのデグラデーションを待っているだけでは何も起こらないと思っていたんだ。あのチャンスを逃したら、もう二度とチャンスは来ないと思ったよ」

「そのタイミングが勝利の決め手になったんだと思う。レースエンジニアには少し申し訳ない気持ちがあるよ。第1スティントでも同じようなことをしようとして、タイヤを完全にダメにしてしまったからね。だからエンジニアからは『もう二度と同じことをするな』って言われたんだ。でも、次の周でその指示を完全に無視して、内側に飛び込んだんだ」

「これはハイリスクでハイコミットメントな動きだったけど、それが勝つために必要なことだったんだ」

ルクレールとのフェアな戦い

このオーバーテイクの成功に加え、ピアストリはルクレールのフェアな対応にも感謝しています。彼は、あの瞬間にルクレールがもっと攻め込んできてもおかしくない状況でしたが、ルクレールは冷静で公正な競り合いを見せました。ピアストリはその時の気持ちを次のように述べ、彼のパフォーマンスに敬意を表しています。

「シャルルには本当に感謝しているよ。彼はすごくフェアだった。僕がランオフエリアに飛び出してしまうと思ったかもしれないけど、意外にも僕はコーナーをきちんと回ることができて驚いたよ」

最後まで続いたプレッシャー

しかし、このオーバーテイクで勝利が確定したわけではありません。その後、約30周にわたりルクレールは再び追い上げ、同じコーナーで再度オーバーテイクを試みました。ピアストリは冷静に守り抜き、最終的にはDRS圏外に抜け出すことに成功しましたが、この間もピアストリは常にルクレールからのプレッシャーにさらされていました。

「レース中ずっとあのプレッシャーを耐えるのは本当に大変だった」とピアストリは振り返ります。「リードを奪うのは、仕事の40%くらいでしかなかった。リードを維持するのが60%だとわかっていたよ。タイヤを酷使して前に出たから、第1スティントで何が起こったかは知っていたし、クリーンエアが僕を助けてくれることを願っていたんだ」

勝利への献身

ピアストリは、このレースでのパフォーマンスを自己評価し、これまでで最高のレースの一つであったと誇らしげに語ります。バクー市街地コースのような過酷な環境で、わずかなミスすら許されない状況下での完璧なレース運びは、彼の成長と実力を証明するものでした。ミスもいくつかありましたが、幸運にもそれらは致命的ではなく、結果として彼の勝利に繋がりました。

結論

オスカー・ピアストリのアゼルバイジャングランプリでの勝利は、彼の冷静な判断と大胆な行動があってこそ実現したものでした。エンジニアの指示を無視してでも勝利を目指したオーバーテイクは、F1における勝負の厳しさを象徴するものであり、ピアストリの将来の成功を予感させる瞬間でした。

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