【アンチ話あり】椎名林檎を天才だと信じてたあの頃の話
椎名林檎を天才だと信じていた中高生時代
ギャルやヤンキーが浜崎あゆみをカリスマ扱いしていた2000年代、ちょっと不良になり切れないが漢字だけは辛うじて読める、自意識過剰なチキンたちは椎名林檎をカリスマ扱いしていた。
中学生の時はデビューしてすぐの椎名林檎が売れていた。『本能』『罪と罰』『無罪モラトリアム』などが発表された時期だ。美人なのか地味なのかわからないけど、どこかかっこよくてセクシーなお姉さんが見たことのない漢字と語彙で、聴いたことのない雰囲気のロックを歌っていた。
進学先の高校では軽音部では椎名林檎のコピーバンドがあった。ヤンキーやギャルが偉い地元の公立中学ではサブカル系女子しか椎名林檎を崇めてなかったが、高校ではサブカル系がそこそこいたので椎名林檎はメジャーだった。唯一無二の才能だとテレビは言うし、実際何も知らないサブカル系の中高生は椎名林檎を天才だと思っていた。
大学に入ってからも椎名林檎が好きな人たちは周りに何割かいた。彼らは椎名林檎が好きな自分を変り者だと言っていた。それは自嘲か中二病的な自慢かはわからない。けれども椎名林檎はまだ私の中ですごい存在だった。
戸川純やフレンチポップ、インストロメンタルを聞くようになって椎名林檎に疑問を持ち始めた
そんな椎名林檎信仰も、20歳で出会ったフランス・ギャルの『夢見るシャンソン人形』に打ち砕かれてしまった。そこから私はフランス・ギャルやブリジット・バルドーといった、60~70年代のフレンチロリータにハマった。日本語でいうところのアイドルだ。椎名林檎のことは忘れた。
バルドーは今でも大好きで、当時はバルドーメイクだと信じてとんでもない囲み目メイクをしていた。フレンチロリータになりたかった。でもフレンチロリータとは程遠い存在だし、おまけにそんな職業はないので、何の仕事をすればいいかわからず絶望的な気持ちでもあった。
これがきっかけでフレンチポップを聞くようになった。ミレーヌ・ファルメールの"Désenchantée(幻想崩壊)"のMVを見て天啓を受けた。代表曲である"J'en ai marre !"に合わせて、セーラーカラーつきのスクール水着みたいなレオタードという着こなすのが難しい衣装を着て踊るアリゼに恋をした。
そうそう、フランス・ギャルに椎名林檎というと、椎名林檎がカバーアルバムの『唄ひ手冥利〜其ノ壱〜』でフランス・ギャルの"Jazz a Gogo"をカバーしてましたね。椎名林檎って、別に好きじゃなくても好きと言ったら格好いい曲を好きと言いそうだよね。本当にフランス・ギャルの"Jazz a Gogo"が好きとは思えない感じの歌いっぷりでした。椎名林檎をある程度聞いてるから思うけど、彼女が本当に好きなのはクラシック音楽だと思う。
さらにフレンチポップを皮切りに非英語圏の洋楽をどんどん聞くようになった。主なお気に入りはシャキーラやパウリナ・ルビオのようなラテン系、アクアやパラディシオのようなEUのダンスミュージックだ。ユーロビジョンソングコンテストもチェックしていた。
一時期はビョークにもはまった。ビョークは雰囲気が人間離れしていて気持ち悪いといや気持ち悪いが、その世界観にはまるとそればかり聞きたくなる。そんな引力のあるミュージシャンだ。余談ですが、この文章を2日前にいったん書き終えたはずが間違って消してしまって本日書き直してますが、その2日前の2023/03/30にビョークが新曲'fossora'を発表していてびっくりしました(そしてさらに教授の訃報を聞いてびっくり)。
周りにははっぴいえんどもゆらゆら帝国も必須科目扱いしているサブカル系が何人かいた。彼らは古い日本語ロックも知っているので戸川純も知っていた。となると戸川純やゲルニカ、ヤプースも聞くようになった。夜のヒットスタジオでの玉姫様を見て、神懸かりの巫女がそこにいると思った。幽遊白書の樹が寿命を延ばして見たいというはずだ。そこで私は気づいた。
「椎名林檎はひょっとして、戸川純やビョーク、非英語圏の音楽をぱくってるのでは?」
2ちゃんねる洋楽板では椎名林檎とその夫はパクり常習犯として有名だった
10~15年前にヨーロッパのポップスの情報をネットで集めるとなると、個人ブログか2ちゃんねるだった。2ちゃんねるだとワールドミュージック板と洋楽板の両方をチェックしていた。そして洋楽板の片隅には、椎名林檎のパクリ検証スレがあった。「椎名林檎はいろんなものをパクってる」との推測が正しかったと喜ぶ自分と、椎名林檎を天才だと思いたいから戸惑う自分がいた。そして両方の自分がスレを開いた。
スレ民には北欧で売れてる曲など日本ではマイナーだが知ってる人は知ってる音楽に精通した人たちがいた。彼らによると、椎名林檎というより椎名林檎の夫が日本でマイナーな洋楽をぱくるのが上手いようだ。夫婦そろってぼろかすに言われていた。ショックだったが納得もできた。あまりの納得ぶりにそれ以上スレを読む意味すら感じなくなった。
前から色んなジャンルの音楽を聴いてるミュージシャンだとは思っていたが、パクるために聴いてると思うと追いかけるのがあほくさくなった。音楽家として天才というより、自分を天才だと思わせることの天才なのだと思うようになった。
ついでに、椎名林檎のセルフカバー集『逆輸入~港湾局~』のジャケットについて言っておく。花魁が港の倉庫にいるって、中島みゆきの名曲『白鳥の歌が聴こえる』の世界観のパクリだって言われても私は驚かない。
この歌詞は港の娼婦の歌ともマザーテレサのようにどんな人でも看取る聖者の歌とも読めるけど、港の娼婦とすると港の花魁と何が違うのよ。中島みゆきはこれくらいで何かいうミュージシャンじゃないと思うけど。
今はマーケティングや営業のうまい人としか思えない、でもあの時の衝撃と高揚感と興奮は本物だった
パクリ検証スレを開いて以来、私の中で椎名林檎はマーケティングや営業のうまい人としか思えなくなった。オリンピック開会式の演出チームに一度は選抜されてよかったね。でも、美容院で丸ノ内サディスティックを聞いた時に「この歌を歌ってる人は誰?」と思わず美容師さんに聞いた時の衝撃。同級生と椎名林檎がかっこいいと興奮してしゃべったあの高揚感。ABCラジオの深夜の音楽番組、ミュージックパラダイスで『真夜中は純潔』とのタイトルを聞いたと同時にラジカセの録音ボタンを押したときの興奮。あれは全部ぱくりではなく本物だった。
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