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とある一人の男が占い師になるまで #2 ~信用金庫職員編~

いよいよ社会人デビューが迫ってきた入社式前夜、僅かな期待と大きな不安を胸に抱き、様々な思いを巡らせながら、一人の男が眠りにつく。
そして翌朝…。
この男にとって、まるで地獄のような新人研修が始まる事になる…。

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『やはり私の嫌な予感は的中した…。』

入社式を終え、翌日から2週間に渡って、今年の新入職員を対象にした新人研修がスタートした。

研修の内容は、いまいちよく覚えていない。

恐らく、マナー研修だとか、先輩職員の話だとか、グループ作業だとか、そんな内容だったと思うが、一日だけ本社ではなく、東京の研修センターらしき場所に行かされた記憶もある。

ただハッキリと覚えているのは、とにかく同期生たちと一緒に過ごす時間が苦痛で苦痛で仕方がなかったという事だ。

自分で言うのも何だが、私は学生時代友達が一人もいなかったという訳ではなく、気の合う人とはとことん気が合っていたし、初対面の人相手でもそんなに緊張なく話す事だってできるのだ。

ただ、合わない人とはとことん合わないのだ

その合わない人のタイプとは、
「チャラチャラ系女大好き男」
「脳筋系根性論大好き男」
「スネ夫系手の平返し大好き男」
以上の3タイプである。

そして不幸な事に、私以外の男性職員の同期生9人のうち、9人とも上記のいずれかのタイプに当てはまっていたのだ!

もちろん、私も何とか打ち解けようと努力はした。

休憩時間でも、自分一人だけ別の場所とかにいると取り返しのつかないぐらい浮いた存在になると思ったので、嫌でも一緒にいようとした。

しかし、全く会話に参加できず、ただそこにいるだけだった…。

…というより、数日経った時点で、もはや他の同期生たちが私に対して壁を作っているような雰囲気ができていた。

そしてさらに不幸な事に、女性職員の同期生たちも、ほぼその流れに乗っているような感じで、男性職員の同期生たちと一緒になって私に壁を作るような雰囲気になっていた。

一言で言えば、「私以外の同期生たち全員が楽しそうに研修を受けている」という状況だった。

それが2週間も続いたのだ…。

2週間というと大した事ないと思われるかもしれないが、この時の私にとっては果てしなく長い時間のように感じられたのだ。

研修最終日の夜、やはり同期生たちだけで飲み会が開催された。

本当なら、私は参加せずに帰りたかった…。

しかし、同級生が生涯に渡って「同級生」であるのと同じように、同期生というのは生涯に渡って「同期生」であり、それはもはや変える事のできない事実として存在する事になるのだ

当時は、この同期生たちとはこの先10年、20年、30年の付き合いになるかもしれないから、形だけでも参加しといた方が良いと思って、嫌々ながらに参加した。

もちろん、ほとんど会話を交わしていない。

そして悪夢のような研修期間が終わり、ようやく配属先が決定して、配属日当日は配属先の支店長がそれぞれ迎えに来てくれて、一緒に支店に向かう事になった。

恐らく、世の中の多くの新入職員又は新入社員たちは、新人研修が終わってそれぞれの配属先が決まり、同期生たちと別れるのを惜しむと思うが、私のように新人研修が終わって同期生たちとしばらく会わなくて済む事を喜ぶような人間は、かなり珍しいのではないだろうか…。

そんなこんなで、私にとって本当の意味での社会人生活がようやくスタートするのであった。

To Be Continued ➤

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