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仕事なんてゲームみたいなもん

とかよくいう。

「そんな難しく考えないでさ、ゲームみたいなもんなんだから、ねえ。問題があったらそれを一つずつクリアしていって、攻略する過程を楽しむの。」

確かにそう。そこらじゅうにある問題を、一つずつ一つずつ解決していって、で最終的なゴールに辿りつく。目的があれば手段が自ずと定まって、それをこなしていけば良いだけ、あとはこなすスピードを極限まで上げれば良い。あら不思議。第一ステージクリアでーす。この調子で次も頑張ってね〜。

自分をメインキャラクターにしたRPGだと思えば、クリアする過程でどんどん経験値が溜まって、能力値が上がって、溜まったコインで服やら家やら食べ物やらをどんどん良くしていって…と、自分というキャラクターがレベルアップしていく過程も楽しめる。レベルが上がればできることが増えて、どんどん難しいステージにも挑戦できる。仕事はゲーム。攻略していこうぜ。

小さい頃に電子機器でゲームをやった人なら、時間を忘れて没頭しすぎて親に怒られた経験があると思う。小学生の頃に家に帰ってきて手も洗わずDSを開き、狂ったようにゲームをする。寝なきゃいけない時間になってもこっそり布団の中でゲームをして、バレて没収されて隠される。けど隠す場所なんてどうせ家の中だから、あらゆる引き出しを開ければ簡単に見つかって、次の日も何時間もゲームをする。もちろん、親が来たら元の場所に戻すけど。

ゲームは子供を熱中させる。「いつまでやってんの。いい加減勉強しなさい。いい加減現実見なさい」と大人に言われる。仕事も他のことを忘れれるくらいには熱中できる。だってゲームだから。

ゲームをやっていた子供はいつかパタリと飽きる。全くやらなくなるわけではないけど、8時間10時間ぶっ通しでプレイすることはできなくなる。親の説教が効いたのかはよくわからないけど、ゲーム以外に面白いこと、ゲーム以外の世界、現実を見るようになってくる。

子供は成長したのだ。ゲーム以外にも大切なことはたくさんあるし、ゲームの中にはない楽しさがたくさんある。そう気付いた時、子供は親に言われずともゲームをしなくなる。自分の意思でゲームをやめ、自分の意思で現実に向き合うようになる。ゲームを自分で辞められる俺、偉い!

仕事はゲームみたいなものだ。段階的にレベルアップしていって、給与やステータスという報酬が与えられて、難しいことに挑戦できるようになって、人を没頭・熱中させる。

子供にはゲームをやめさせてくれる大人がいるけど、大人の仕事をやめさせてくれる「大大人」はいない。

「いつまで仕事してんの。それ以外にもたくさんやることあるでしょ。早く仕事辞めて現実見なさい」

仕事はゲームみたいなもんで、それに取り組んでいる時、それについて考えている時、人は熱中してそれ以外のことを考えられなくなる。あるいは、仕事以外のことを意図的に考えないようにする。なんでって?没頭しているから。楽しんでいるわけではないかもしれない。実はただの中毒で、楽しくないけどそれがないと生きていけない、それがないと手が震える、不安になる…そういう人はたくさんいるんじゃないかな。

ゲームは子供を現実から遠ざける。仕事は大人を現実から遠ざける。ゲームみたいなもんだと思って淡々とクリアしていくことはできるしそれで評価は得られるけど、次第に現実が見えなくなってくる。

現実ってなんだ。それは全部。本を捲るときの紙の手触りとか、音楽を聴いている時の耳の振動とか、感動する映画を観た時に流れる涙とか、道に咲いている小さい花を見つけた時の幸せとか、真夏のゲリラ豪雨の時に感じる不気味な涼しさとか、二郎食べすぎてもう二度と行かねえってなるあの感覚とか、そんな気持ちよくないセックスも一応気を遣ってめっちゃ褒めておくときの虚無感とか、デカすぎるアイスを買ってキーンとなる頭とか、激安な服を作るために強制労働させられている途上国の子供とか、今日も誰かが中央線に飛び込んだとか遥か遠くで虐殺が罷り通っているとか、ぜーんぶ。

「いつまで仕事してんの。それ以外にもたくさんやることあるでしょ。早く仕事辞めて現実見なさい」

ゲームに熱中すればするほど、現実への感受性は失われる。俺もそろそろ、現実見ないとな。

あーあ、ゲームしたい。デススト2早くやりたいよーーー。あれ、PS5まだ持ってないな、いくらだっけ…? 7万円!?!?そんな金ないよーー今度旅行するし服とかも色々買わないといけないし、最悪ー。仕事頑張って稼ご。


よろしければぜひ