senry

言語学や哲学の道具を使っていろんなことを考えています。 エッセイでは駄々を捏ねています。

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  • 日常生活論考

    恋愛から道路標識まで、日常生活にまつわるさまざまな事象を論理的に考えています。

  • 大人への嫌悪

    大人になりたくない20代男子のエッセイ

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    フィクションです。

  • コミュ障だよバカヤロー

    コミュニケーションにおける違和感についてのエッセイ

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歩道側を歩いたところで女も死ぬだろ

「スマートな男性とは」 この質問から想像される男性像はどのような人だろうか。仕事で疲れた時に話を聞いてくれる人、常に多めに払ってくれる人、居酒屋でお酒を溢した時に女性の服が濡れていないかを気遣ってくれ、ハンカチをそっと出してくれる人。 スマートな男性が行う行為として、様々なものが挙げられるだろう。その中の1つに、「車道側を歩いてくれる」というものがある。2人で横並びになって歩いている時に、さりげなく危険な車道側を歩いてくれる、というものだ。 歩道側を譲るという行為は確か

    • 映画を作ります

      あらかじめ言っておきたいが、成長とか進化なんてのはそれ自体がポジティブな評価をされるものではない。あくまで変わりゆく環境に適合しているだけで、生きるために訳のわからない形態変化を伴う必要性なんて本来はない。強調しておくと、ここで「成長した」と書かれていても、それが未熟から成熟へと発展したということは読み込まないでほしい。 なので、「成長」やそれに類似するいくつかの動詞へ無自覚に割り振られるプラスの評価を打ち消すために、ここでは「成長してしまった」とか「xxxしてしまった」と

      • 仕事を辞められない

        働き始めてから、悲しむ暇がなくて悲しい。働いている最中は楽しいけど、終わってみれば自分のためになんのためにもなっていないことをしていたような気がする。 週末に時間ができて平日を振り返ってみる。搾取という言葉があっているのかわからないけど、自分の人生の8時間×5日間+αが他人に取られてしまったような気がする。本当に、自分のためになっていない時間としてしか捉えられない。 進捗管理表を見て、もちろん遅延もたくさんあるけど、自分が結構いろんなことをかなり効率よくできていることはわ

        • 悪だと知っている行為を続ける方法

          問題意識私は車好きでよくガソリン車を運転する。そしてある日、気候変動についての本を読んで、ガソリン車の出す排気ガスが気候変動の要因の一つであり、気候変動によってグローバルサウスの人々が害を被っていると知る。このような事実を私が知った後で私がガソリン車を運転することは、倫理的な悪さを伴うように思われる。 以上を一般化すると、私には次のような直観があると思われる。 最初の問題この直観を一旦正しいものだと仮定する。さらに、私は倫理的に正しく生きたいと欲していると仮定する。これら

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          人と距離を置く

          ドーン。家でのんびりしていたら雷のような音がした。雷と異なるのは、それが一定のリズムで継続的に聞こえてくること。ドーン・ドーン・ドーン。 椅子から立ち上がり、大通り沿いに面した窓を開けてみる。音が聞こえてくる方を見つめながら、今日は地域の祭りがあったことを思い出す。 ドーンという音を鳴らしながら近づいてくる太鼓は、神輿とそれをかつぐ30人くらいを引き連れていた。近づいてくるにつれて、太鼓に合わせたワッショイ・ワッショイという掛け声も大きくなる。神輿を担ぐ人たちがはっきり見

          人と距離を置く

          いい顔面に生まれたかった

          他人を羨む。あいつみたいに酒がたくさん飲めれば飲み会ももっと楽しいのに。あいつみたいに背が高ければシュートをブロックされずに済むのに。あいつみたいにコミュ力が高ければ楽に生きていけるのに。特に顔の良さやスタイルといった、先天的にほとんどが決まってしまうようなことは、自分の努力で変えられないために、そこに気を取られると陰鬱とした気分になる。 仮に自分の顔面がもう少し良ければ、まず周囲の人への印象がよくなるだろうし、特に恋愛で成功しやすくなるだろう。顔面がももっと良ければ、努力

          いい顔面に生まれたかった

          仕事なんてゲームみたいなもん

          とかよくいう。 「そんな難しく考えないでさ、ゲームみたいなもんなんだから、ねえ。問題があったらそれを一つずつクリアしていって、攻略する過程を楽しむの。」 確かにそう。そこらじゅうにある問題を、一つずつ一つずつ解決していって、で最終的なゴールに辿りつく。目的があれば手段が自ずと定まって、それをこなしていけば良いだけ、あとはこなすスピードを極限まで上げれば良い。あら不思議。第一ステージクリアでーす。この調子で次も頑張ってね〜。 自分をメインキャラクターにしたRPGだと思えば

          仕事なんてゲームみたいなもん

          やっほー!

          啖呵を切って痰を吐くな。渋谷の夜中のネズミたち。痰に塗れて汚いけど、その分でっかくてバイキンにも負けない強い体を持っている。ネズミの寿命は短いけれど、人間は僕は何歳まで元気にネズミみたいに時速30kmくらいで走り回れるかなあとかか考えて、時速30kmはそもそも世界陸上レベルなことを思い出す。 それだのにどうしても僕の頭には30とか3とか33333とか、とにかく1でも2でもなく3という数字が真っ先に現れて占有権を主張して、どこかのいつかの宗主国。早い者勝ちの原理が正しいとは思

          やっほー!

          大人にがっかりしている

          これまでの人生で、大人に憧れたことがものの一度もなかった。憧れるどころか、重度の嫌悪対象だった。意志もなく働き続け、自分が取り囲まれる日常環境に文句を言いながらそれを改善しようとはせず、それでいて子供から批判されると現実をわかっていないと説教を垂れる、ただ力と金を持っただけの邪魔者でしかなかった。 大学生活を通して、大人への嫌悪はより強いものとなる。在学中に会ってきた大人は、どれもこれも自己中心的というかスケールが小さいというか保身しか考えていないようなやつばっかだった。バ

          大人にがっかりしている

          セックスエンドラン

          セックスが好きだけどロマンチストじゃない人と、ロマンチストだけどセックスがそこまで好きじゃない人がいる。前者は快感中毒なので、タイプの人とセックスできれば何でもよかったりする。風俗に一番ハマるのは多分こういう人。 後者は、セックスというよりも、相手との駆け引きとかデートの雰囲気とか、あまりにも形式的にサービスが提供されてしまう風俗では満たされない部分が、好きだったりする。 自分は明らかに後者ーーロマンチストだけどセックスがそこまで好きではない人ーーで、だからこそ風俗サービ

          セックスエンドラン

          「ヤレるなら誰でもいいんでしょ」

          「ヤレるなら誰でもいいんでしょ」 現実でもフィクションでも、恋愛的文脈においてよく聞く言葉である。下心丸出しでよってきた人(多くの場合で男)に対して、言い寄られた側(多くの場合で女)がこのようにいう。お前がみていたのは私自身ではなくヤれる対象だったのだろ、と。 僕は男なので、これを言われる側である。言われる側としては、そんなことないよ、君自身が好きだよ、とかなんとか、胡散臭い言葉を並べる。それでも良いのだが、たまに、「ヤれるなら誰でもいい」という文は、正確には何を意味して

          「ヤレるなら誰でもいいんでしょ」

          「好きな人が女じゃなかった」の二つの意味

          「好きな人が女じゃなかった」という文には、二通りの解釈がある。第一に、話している人に特定の好きな女の子ーー仮にあやさんとしようーーがいたが、実はその人は女ではなかったという解釈。あやさんは、女のような見た目、話し方、生活をしているが、実は男だったのである!あやさんのことを女だと思って恋をしていたこの人は、戸惑いながら「好きな人が女じゃなかった」と友達に相談し出した… 第二に、自分の性的指向が女性ではなかったと気づいた際の解釈。ここでは、あやさんのような特定の女性は登場しない

          「好きな人が女じゃなかった」の二つの意味

          【書評】『ポストトゥルース』ーフェイクが溢れる世界をどう生きるかー

          ※長々と書いていますが、序だけで完結しているので、そこまで読めば大体わかります。 ポストトゥルース。日本語で丁寧に言い換えれば「真理の後の時代」。もっと意訳して言えば「真理のない時代」だろうか。 リー・マッキンタイア(Lee McIntyte)による本著作は、真理のない時代とは何か、なぜそれが生まれたのか、何も信頼できない世の中でどう振る舞えば良いのかが、哲学に縛られない豊富な分野の知見を援用して論じられている。 本記事では、本書の大筋を紹介した後、個人的に興味深いと思

          【書評】『ポストトゥルース』ーフェイクが溢れる世界をどう生きるかー

          今宵の月のように

          仕事であれ部活であれ、何かにひたむきに取り組めている人を見て、羨ましく感じることや、興醒めすることがある。どちらにせよ、これまで何にも打ち込めたことがない自分との距離を感じる。 好きなことがないわけではない。勉強もスポーツも映画も結構好きだ。勉強は人よりも能動的に、比較的広い分野に興味が持てるし、スポーツは観戦するのもプレイするのも好きだ。映画も割と見る方だと思う。 僕が映画好きだと言った時に、月何本くらいみるかを聞いてきてそれに答えたら、「あ〜そんなもんなんだ」とマウン

          今宵の月のように

          (お)笑いと男子校

          第19回M-1グランプリ決勝セカンドラウンド。ファーストラウンドを1位通過したコンビ「さや香」は、1票も得ることなく敗退した。実際、さや香のネタはほとんどウケていなかった。スベッていたというより、何がしたいのか伝わらなかった。 審査員7人は皆「令和ロマン」か「ヤーレンズ」を選び、4票を勝ち取った「令和ロマン」が優勝した。芸歴6年でのM-1優勝という偉業達成の瞬間に、誰もが圧倒されたことと思う。 テレビの残り中継時間は30秒ほど。そんな中、審査員の1人、山田邦子がこう言った

          (お)笑いと男子校

          大人になったらできること

          大人と子供という区分は、自分にとってかなり根深い問題である。自分の頭の中には、大人の典型例と子供の典型例みたいなのがいて、そいつらは基本的に仲が悪い。というか、頭の中にいる子供が、頭の中にいる大人を毛嫌いしている。 他方で大人の方は子供をどう思ってるかというと、大体の場合見下している。算数のテストで子供が100点をとったとしても、大人は、表面上は誉めているかもしれないけど、内心は、「子供にしては良くできたね」くらいにしか思っていない。見下しているのである。 自分の頭の中に

          大人になったらできること