ピアノの時間
どんより曇が多い空から顔を出す申し訳なさそうな青がいい。
はにかんでいて「気がついているよ」と声をかけると「てへ」とでも照れているようだ。人は週末のプライドから一転しておとなしい。とにかく暑かった。マスクをかける耳の裏が痛くて気持ち悪かった。密閉された空間に玉のような汗が踊る。
我らエンタを職業にしている人たちは興行といわれる公演が全部飛んで相変わらず暇である。暇だからと言ってパンデミックの最中のようにはいかない。場の空気というものがあるからだ。
今や世の中は静かに動き出しているし、そのニューノーマルにそっと筏を浮かべて何気ない顔をして載っていく。ジタバタしない。
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