不足を知る。
実家では犬も猫も飼ったことがある。
道端で出会えば自然と口元が緩み目で追う。
それは昔からのことだ。
以前の同僚に趣味が犬猫動画を見ること、
という人がいた。
「へー」としか言えなかった。なぜ?と思った。
犬猫好きだけど、アレルギーで触れないならわかるが、
彼女は家で犬を飼っていた。
実物がそこにいる。
可愛く見られるためのウソだとは思わない。
実際に優しい人で、愛犬を大切にしていた。
それが共通の趣味だという人と結婚までしたのだ。
つい2年前まで、私はそれを不思議に思う人間だった。
動物に関するクイズ番組は見ても、
可愛い動画特集は迷わずチャンネルを変えていた。
もちろん嫌いなのではなく、
私の隣にいない動物を見てもよくわからなかった。
今年の夏、どうしてもイルカに会いたくなった。
ショーを観るだけではだめだ。
触れ合わなければならない。
遊園地の開園前から並び整理券を手に入れた。
イルカに触れて魚をあげる。
胸のあたりがグッと上がった。
イルカは滑々して細かくざらざらで、
目がおじいさんみたいでハッとした。
最近ではTwitterに流れてくる犬猫動画を
30分くらい見てからでないと眠れないし、
テレビの番組表にカワイイ動物という文字を見つけると
とりあえず見るようになった。
遊園地に一緒に行ったのは久しぶりに会う旧友だった。
「イルカとどうしてもふれあいたい」
と無表情につぶやく私に、
「癒されたいんだね」
と何気なく、確かめるように言った。
「えっ・・・」
私はなぜか動きが止まった。
ちょっと笑ってごまかした。
そうだったのかな。
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