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【読書感想話】「草の花」福永武彦著

[草の花/福永武彦]

友人が貸してくれた本2冊目。ありがとう友人。信頼のラインナップ。

 文がとにかく美しくてなんども押し寄せる孤独に胸が張り裂けそうになった。
なーーーーーーーーんで、愛し合ってるのに愛し合えないんだーーーーーーーーーーーーーーー(???)
になってしまった。

ごめんね、ほんとに全てが美しくて読み始めから終わりまでなんの文句もないんだけど……
この美しくて孤独でたまらない世界を蹴破ってでも、他者を許容することという普遍的な、当たり前な、変化を恐れず受け入れる。
ただ〈生きる〉を掴み取ってほしかったよ汐見!!汐見、おまえに言っています!!!!!!!
なんだよぉ!頼むよ生きていってくれよおおおおおおおい気づけ!!という気持ちが読み進めるとどんどん膨れ上がる。でもな、もう読み始めで事が終わってるんだなぁ悲しいことに。

話の構成は4部になっていて、物語は冬のサナトリウム病院から始まる。
“私”は入院しており、サナトリウムの庭に生える一本の百日紅の姿について、同室の手術前の汐見と語り合うところから始まる。

「私はその百日紅の木に憑かれていた」天才の文章だ…こんな導入の引き込み方ある?すごい言葉だ……。
汐見と私の会話や入院の鬱屈とした、それでも生きている入院患者の個性的な描写が続き、汐見の手術が始まるまでで、かなりくらってしまう。病棟の寒くて暗いリノリウムの廊下が見えるもんな。
なんか生きていけるルートいっぱいあったのに全部のフラグを折っていく汐見が。覚悟を決めているというか、生への執着がなくなって強さすら感じる汐見の言葉の数々が美しい。私が小さく「寂しいことをいうな」と引き留めるも、全部かわしてしまう汐見に寂しさを覚える……えーん…話をしてくれって。
手術当日、汐見は今まで認めていた二冊のノートがあることを私に伝える。
私はその後、その二冊のノートを読み、最後は綴られた手紙で物語は幕を閉じる。

名もない花を草原から摘み取るみたいに、片っ端からみえていた生存ルートが消えていく。ありえんくらい描写が美しい。
凍った土が溶けてきて、花が咲き乱れていくのに、様々な人間の心のすれ違いは交わることなく穏やかに帰結してしまう。最初っからどうしようもない感情の結晶をみせられている。それゆえにほんとに美しくて、哀しい。
美しい青春をそのまま終わらせたかった汐見が、成長せずに時を止めて歳だけ重ねている姿が、冒頭から沢山みえてさ…つらいよ。
歳を重ねて折り合いをつけること、折り合いをつけるため代償が必要なこと。まあそれは人それぞれだと思うんですけど、代償はあの二冊のノートだと思うとね。そしてそのノートを託された”私”の行動もとてもよかったです。これも愛じゃんね……どうして……どうして、生きてる間にどうになかりませんでしたか???????(永遠に言う)

藤木忍は絶対黒上短髪でこ出睫毛長美長男です。揺るがねえなそこだけは。そこだけはさ……みえるからほんとに…。(キモオタ)
立花先輩のことも本当に好き。汐見、おめぇ気づいてないかもしれないけどさ、たくさんの人に愛されとったやで…気づいて……もう無理だけど。
「君の身体は此処にあるが、君の魂は此処にはない」という先輩の言葉が、本当に好きですね。……そうすぎる。
胸打つ言葉が本当に沢山あって何度も読みたいですね。何度も読みたくないよ辛すぎる(二律背反)

最後の章は静岡(だと思っているんですけど勝手に)のあのずっと朗らかな天気であたたかな景色が印象的に見えて本当に気が狂いそうです。そんな得られない未来の方がよかったみたいな終わり方……ダメージ……。ショパン流すか(すぐ影響受ける)

本当に名作だった。作者のほかの作品も読みたい~となったけど、あまりにもくらってしまったので忘れたころに集めて読もうと思います。
死と生きることに孤独を感じているひとは読むといいよ。救われないけど、ああ~この感情も間違ってはいないのかと納得できて、おすすめです。

「思い出すことは生きることだ。」ノートを託した汐見は”私”の中で根を張ってさ、ずっと生き続けるんだろうなと思うと本当に少しだけ、救われた気がする。
冒頭で出てきた百日紅の木のように、思い出したときに赤くて美しい花が零れるように咲くんだろうな。

あなたの代償はなんでしたか?わたしはまだ見つかってないな。この本読んだ人の代償が「何」だったかがとても知りたくなった。

読書って孤独で最高だな。

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