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【読書感想話】「緑の我が家 Home,Green Home」

  続けざまに小野不由美の短編を読んだ。ファンの間ではグリーンホームと呼ばれている?フォロワーさんも十七歳と共に良い作品です。と名を挙げている名作短編。よしゃよしゃよしゃ~!すぐ読むぞと読み始めた。書き出しを大体ふざけてしまう。オタクの悪いところだと思う。
 
 いや、レイヤーが凄すぎる。
いや、ストーリーもそうなんだけど、住んでいるアパートの表現も時間軸も、起きる怪異の数々も……そして主人公浩志君の過去から今までの、レイヤーが凄すぎる。
タイトルに緑が入っていて、作中にも緑の扉や黄色いチョークなど、色のワードが散りばめられているから余計感じることだと思うのですが、浮かぶ映像が薄い黄色や緑系のフィルムを何枚も重ねたみたいに感じられて、起きてる出来事……めちゃ怖い怪異現象が起きまくってるし、主人公含む登場人物もなんかみんな病んでてどこか陰鬱で、誰も真実を語ってこない信頼できない語り手じゃん……と思ってしまうことすらちょっと綺麗なフィルターがかかって音がくぐもって聞こえるような、見えるような。
読んでいてそんな印象がありました。冒頭の章はなんか綺麗と言うか……現実に起きていることと思えないような読み心地がする。すげーや。

 それが読み進めていく毎に、住み始めたアパートからみえる神社や起きる現象、初対面で何故か馴れ馴れしく幼い和泉、会話からなんとなく浩志の過去と繋がっていき、物語がぐっと動き出して真相が描かれる頃にはどうしようもなくて泣いてしまった。
 つれえよォ……正直後味悪い話なのに、最後に同級生の金子と話す浩志の語りが悲しいのに突き抜けていてすごいよかった。浩志の心を追っていくと、ずっと緑の層を重ねてきて真っ黒になっていったフィルムが、ある時を境に一枚ずつ消えていって、最後薄い青空の色だけ残っている。そんな感じがあった。
 途中のふたりで部屋にいるところ、和泉が浩志のこと匿うみたいな質感で、本当に好きだった。ホラー現象が起きているのにどこか静かで穏やかですらある。あの部屋だけ、どの時間軸からも守られた空間だったのではないですか……?

 うう……物悲しいけど金子と浩志が語り合うことによって、土地に縛られてしまった哀しい幼馴染は、和泉はふたりの心の中にも生きる……そういうことね不由美……と思っていたら思いっきり最後に終わってねえ怪異の連鎖がやっぱりあの土地にしっかり残されていて最悪だった。怖すぎ……さいこ~不由美だいすき。
 起きてる現象怖すぎない!?なにあの黄色いチョークの子供!!めちゃ怖いよ。黄色ってところも意味が無さそうでありそうで無い無意味さが怖い。赤とか白とかの方がまだホラーだからだなって理由付けできてマシだったよ!なんなの!なんで黄色なの!?なんか意味あるなら誰か教えてください。不幸の手紙や猫ちゃんの件みたいなのもまじで嫌だった。あんなのポストに入ってたらすぐ別の物件と引っ越しの見積もり取る。本筋と関係ない最悪怪異起きすぎなんだ。解決しないところも含めて。

 私は突然の電話も苦手な人間なので、あの電話も普通に嫌だ。無理すぎる。書かれた時代もあって固定電話の表現だったけど、一周回って怖いよね。固定電話のかかってきた!かかってくる!の緊張感ってなんなんですかね。過去に仕事でクレーム対応をしたことがあって、電話の向こう側からいい言葉が投げかけられることがあまりない。ないわけではないけど悪い方が記憶に残ってしまっている……という思い込みがあるのですが、勤めている人は少なくとも電話で仕事のやり取りなんかをしたことあると思うのでそういう小さな刷り込みがホラーの怖さを引き出すのに相性いいんだろうな、と思ったりしました。
 あと隣人が何しているのかわからない本質の怖さがめちゃめちゃあってうおあ~~~になってしまった。生きてる人間が一番怖えのやつ~何回もみた~。
 家の話って怖いな本当に逃げ場が無くてさ。

 バックドラフト出てきて嬉しくなっちゃった。オタクが好きなやつ。
少し前にUSJのアトラクションが無くなっちゃう話で盛り上がってましたよね。子供の頃に数回行っただけだけど、ちょっと思い出して切なくなりました。あったか~い。
 感想書いていたら暴雨になってきたので怖くなりました。演出勘弁してくれ。



【以下本を読んで引き出された過去話をします。自分語りなので興味ない人は飛ばしてください。】

 小学生の頃の話。K君Y君のことを思い出したので書きます。

Y君:家が近かったのでよく集ってTVゲーム、カードゲームをしたり、フラッシュ倉庫などをみたりしていたクラスメイトの一人。

 親のPCで「赤い部屋」を同級生で見ていたら怖い画面のまま動かなくなってしまい、その場の少年少女全員がパニックになり、わからないので電源ごと抜いた思い出がある。後から親に怒られなかったので故障とかはしなかったのかも。
 そんな感じの温度感の付き合いで男女の隔たりなく、仲良く遊んでいたY君に、唐突に告白されたことがあった。手を繋ぎたい、キスなどの触れ合いをしたいと言われ、その当時はなんでそんなこと言うねんコイツと困惑し、気恥ずかしさもあって、冗談交じりのノリで躱してしまった。
 きっとかなり勇気を出して言葉を伝えてくれただろうに……本当に申し訳ない事をしたなと今になって反省している。
 ただ一言「友達でいたい」と言えばそれでおさまった話なのにね。

 こういった反応が当時はクラスメイト内で面白になってしまい、Y君は男子たちにイジられるようになってしまう。
 数か月間Y標的期間がうまれてしまった。
私はここで彼をかばったりすることができず、また自分もふざけて返答をしてしまったいじめ現場の関係者だと感じていた。
問題を教師や大人の誰かに報告することもできず、早くこの波風がおさまれ……と思い女子たちとなるべく過ごすということを選択するようになってしまった。

 給食の時間、昔は机を寄せて向き合いながら食事をとるのがあたりまえだった。
その日も仲の良い人同士で席を寄せて給食をとっていた。

 虐められていたので当然だが、元気がなくなっていくY君をおもむろに見ると、彫刻刀の刃を手首に宛がうような仕草をしており、コイツやばすぎる!!!と思ったのでそれを奪って走ってゴミ箱に捨てた。

 急に走ってゴミ箱に彫刻刀を捨てるという行動を起こしたので先生に見つかってしまい、クラスで話し合いの場……という公開恥ずかし暴露大会をすることとなる。結局そのままイジリブームは沈静化し(私の周囲では見かけなかったけどその後もどこかであったかもしれない)
 中学に上がる頃にはクラスはばらばらになってしまったので、Y君と話す機会も減ってしまった。
 その後、一度だけ中学で話したことがあり「あの時確かに好きだったけど、その後お前のせいだとすごく恨んだ……でも彫刻刀奪って捨ててくれたのは嬉しかった」と言われた。当時も謝ったけど、いじめに関しては本当に申し訳ないと思っています。そんなことになるとは思わなかったのだ。不本意。ごめんよ。
でもポーズでもそんなことしないでほしい。勘弁してくれよ。命を何だと思っているんだ君は。ヤンデレムーブヤメロ。こっちの身にもなれ……とは言えなかったけど、当時はそう思っていた。(当時はヤンデレって言葉はなかったかも)

 Y君は、いい人生を歩んでいるといいなと今でも時々思っています。




K君:信じられないくらい陽の者。誰にでも笑顔のイイやつ。クラスの人気者で、私のようなオタクとも話をして笑いをかっさらうタイプ。

 めっちゃいいやつだったという記憶だけある。お笑い芸人とかになれるタイプの輝きがある人だった。
クラスの中では特別話をするとかはなかったけれど、誰にでも同じフラットな感じで話しかけてくるので、みんな知っている有名人のようなひとだった。
 クラスの文化祭のような舞台で、魔女の役を見事に演じていて、コイツはすげーやと毎回思っていた。魔女の「イーッヒッヒッヒッ!」をあんなに完璧に演じている人、今まで会った中でこの人だけだと思う。

 本当に陽の者だったので、小学生の頃以外に彼に遭遇することはなかった。当時からなんだか生きているステージが違う人だなという気がしていた。
 そんなK君の名前ごとすっかり忘却していた頃、実家に帰って荷物整理をする際に母から聞かされた話がある。

「あの子事故に遭って亡くなったらしいで」

 噓でしょ……?該当のニュースを見た。
街中で建設途中のビルの骨格と中央にクレーンがある。
上空から撮られた映像と、間違いなくK君の本名と年齢が発表されていた。
詳しい内容をあまり覚えていないのだが、男性は作業中、クレーンに挟まれて死亡したとキャスターが告げていた。日付も忘れてしまったが、夏の、暑い日だった気がする。

 脳の中で何かが早鐘を打つ感覚があった。あの眩しい笑顔とお調子者の学年中の笑いをかっさらうようなK君が死んだ?しかもクレーンに挟まれて?信じられなかった。
 別段話をするような仲良しな関係ではなかった。でも、クラスで一番と言っていいほどの人気者でイイやつで、皆が好いていたはずだ。
 なんなら芸人にでもなっていると思っていた。表舞台で輝くタイプの人物像とビル建設現場で働く姿がまず重ならないのだ。
 死んだ?俄かに信じられなかった。まだちょっと疑っている。母親たちのネットワークでの話を聞く限り、私の知るK君本人に間違いないようだった。未だに舞台袖で、魔女姿で笑いながら舞台に出る合図を送るK君の姿が思い出せるのだ。

 死って本当に平等か?足元がぐらぐらするような出来事だった。ニュースの映像は夏の暑さのせいもあり、蜃気楼みたいに揺らめいていた。
 私はまだ信じてない……。
 ネタとかではなく、K君のことを私以外の誰かに覚えていてもらえたらいいなと思い、記したくなった。

こういう思い出を引き出せる不由美の文章すごすぎるな……。
ということが、とても言いたかったので。書きました。


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