性善説に基づいたフィンランドのデザイン
世界一幸福な国って何故アメリカや日本ではなくフィンランドなんだろう、、、そんな有名な産業とかあったっけ?
3月中旬そんなことを考えながら、ヘルシンキ行きの飛行機に乗っていた。
ヘルシンキの中心街に着いて感じたのは、人の少なさと極寒の中運営されている交通機関やお店の効率の良さだ。ヘルシンキは観光地ではあるものの60万人程度と東京の5%以下である。
観光地としてユーロや日本を中心にそれなりに旅行者がくるものの迎える側のお店や交通機関に割ける人員も多くはない。例えば多くのお店ではランチを注文に応じてつくるのではなく、ビュッフェスタイルといったように工夫して対応しているのだ。
交通機関の仕組み
ヘルシンキのヴァンター国際空港からヘルシンキの中心街の宿に行くには、地下鉄でヘルシンキ中央駅まで向かい、そこからトラムやバスでホテルに向かうのが一般的だ。地下鉄やトラム、バスの本数も多く、街中を網羅しているためかなり便利である。そして地下鉄、トラム、バスはすべてHSLという公営機関が運営している。その仕組も素晴らしく、何と2.9ユーロで60分乗り放題で、空港からホテルまでその金額でたどり着けてしまう。
日本の場合、羽田や成田から都内のホテルに行くのにはいくつかの鉄道会社の電車を乗り継げば1,000円では収まらないだろう。
また、何よりびっくりしたのが、チケットのチェックが(ほぼ)ないということだ。電車に乗るのにも改札はなく、チケットをタッチする機械はあるもののほとんどの人がタッチしてしない。見せてと言われたときは見せないといけないのだが、1週間フィンランドにいて、毎日のようにトラムやバスに乗っていてもチェックはなかった。(トラムやバスの1番前から乗車する時のみ、運転手に見せることはあった。)
利便性を優先した設計。
これによって、フィンランドの交通機関は乗り降りを効率的にすることができていた。例えば日本の市営バスなどに乗る際はバスの中央部から乗って降りる際には入り口の1箇所からのみとになっている。降りる際には必ず、乗車賃を運転手の横にある機械にお金を入れる必要があるため(もしくはスイカでタッチ)、降りる人が多い場合や両替に手間取っている人がいる時には行列ができ時間がかかってしまう。
しかしフィンランドでは基本乗り放題のチケットを使っているため、乗車時に確認したということになっており(ほとんどチェックしてないが)、すべての出入り口が解放され、乗り降りが自由にできるため、圧倒的に時間がかからない。(トラムだと3つくらい出口がある。)
日本では成り立たないかもしれない。
さらに交通機関のチケットもHSLのアプリですぐに購入することができるので、市内に移動にはスマホ1つあればどこへでも行けるということになる。このちょっとした違いは体験して見ると大きく、日本では成り立たない仕組みのように感じた。というのもチェックしないということはお金払わずに乗ることもできるということだ。こういった仕組みを提案しても、おそらく無賃乗車はどうするんだ?という議論になり、今の形に落ち着つくのではないだろうか。
性善説を支えるフィンランドの教育
ではなぜフィンランドはこの交通機関の仕組みが実現できているのだろうということについて興味をもった。
世界一幸福な国フィンランドでは、人(教育)に投資する仕組みや傾向が強い。
フィンランド人の特長として下記のようなものがあげられるらしい。
「常に他者に対してオープンで、正直。一度交わした約束を必ず守るという誠実さもあります。フィンランドの文化の根底には、互いを信頼し合う心があるのです。」
「ただ、フィンランド人はどちらかというと人を信じ過ぎるという側面があり、自分たちがするように他の人もするのだと理解をして。それがトラブルになったりすることも時々あります。」
駐日フィンランド大使 マヌ・ヴィルタモ 氏
教育に関しては国家および自治体の予算の11〜12%が教育にあてられ、就学前教育〜大学院まで無償。学前教育と基礎教育では、教科書や給食、遠隔地に住む児童の送迎にかかる費用もすべて無償で提供。成人に対する生涯学習も手厚いサポートがあり、学びたい意欲があれば、そのチャンスが与えられるように制度が整えられ、公平性が保たれているという。
フィンランド教育科学大臣 クリスタ・キウル 氏
上記のようにフィンランドは国として人や教育に投資することで、倫理観やリテラシーが一定以上の水準である人が多いのではないだろうか。だいたいの人はちゃんと運賃払っているし、取り締まることよりも利便性が優先された仕組みが適用することができている。
もちろん違反者が多くなったりしたら、また変わるんだろうけど、日本でサービスデザインをしている私にとって、ちょっとした衝撃だった。性悪説を元にして考えるとサービスに利用規約とかルールがどんどん増えていくが、フィンランドは利用する人や教育に投資することで性善説からデザインができるため、サービス側への負担も少ないデザインができるということにもなる。
日本の将来も人口減少や地方衰退といったことが叫ばれているが、人口が少ない中でも工夫することで生産的な仕事をし、家族や友人を大切にし、自然と向かいあい、幸福度No.1となった国があった。日本の将来として参考にすべき国はアメリカではなく北欧諸国なのかもしれない。
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