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『麒麟がくる』織田信長との対面

1.竹千代(徳川家康)編


 『麒麟がくる』で、織田信長と明智光秀が次のような会話を交わす。

織田信長「その方、どこぞで会うたことがあるなぁ。熱田の海辺ではなかったか? あそこで何をしておったのじゃ?」
明智光秀「ある御方に命じられ、信長様のお姿を拝見するため、舟のお帰りをお待ちしておりました」

会ったことをあくまでも「他人の空似」と否定せずに認め・・・正直すぎるだろ。ここで竹千代登場。ここで竹千代に
「どこぞで会うたことがあるなぁ。古渡の城ではなかったか? その時に干し柿をくれた薬売り・・・」
と言われたら詰んだが、真っ直ぐ前の織田信長だけを見つめる竹千代の視界に明智光秀は入らなかった。

ここからの織田信長と竹千代の会話が凄かった。
この竹千代、到底「童(わらべ)」とは思えない。
法蔵寺で親族の教翁から帝王学を身につけたようだ。
「狂気(凶器)と狂気(凶器)」のぶつかり合いのような会話 ───

竹千代「館へ戻られたとお聞きしたので参りました。昨日、これをやろうとお約束いただきました。よろしければ、お手合わせ願います。今は無理と仰せなら、また、後で参ります」
織田信長「今も、後も、そなたとは将棋はもうやらぬ」
竹千代「何故ですか?」
織田信長「童とは将棋はやらぬことにしたのじゃ」
竹千代「負けるのが嫌だからですか?」
織田信長「ふっ。たわけ」
竹千代「このところ、前のように遊んでいただけません。何故ですか? 近習の者が申しておりました。信長様が、私の父・松平広忠を討ち果たしたと。そのことで、私にお気遣いしておられるのですか? もしそうなら、それは無用なことでございます。父上は母上を離縁し、岡崎から追い払い、今川義元に付いたのです。私は大嫌いでした。それ故、討ち果たされても、致し方ないことと思うております。」
織田信長「分かった。駒を並べよ」
竹千代「はいっ」

私なら、ストレートに「あなたが父上を殺したのですか?」と聞いちゃうけどな。そして、「私は父上が大好きでした。いつかあなたとは雌雄を決せねばなりません。まずは将棋で」って言いそう。

竹千代は頭はいいけど、まだまだ童であり、喋り過ぎな気がします。「雄弁は銀、沈黙は金」です。大人なら、相手に喋らせ、自分は聞き手にまわって黙っています。また、「能ある鷹は爪隠す」と申します。「自分は頭がよい」と教えることは危険です。うつけだと思わせた方が良いです。実際の竹千代は寡黙だったと思われます。

「童とは将棋はやらぬ」と言う織田信長に「我はもう童ではない!」と大声で言い返したら「そういうところが童じゃ」と言われます。竹千代は落ち着いて、「童ではない」という言葉を使わずに、「童ではない」ということを織田信長に示し、織田信長に「童ではない」と認めさせて「駒を並べよ」と言わせました。そして、織田信長は、明智光秀と帰蝶に、
「(次期国主同士で話をしたいから)座を外してくれ」
と言いました。明智光秀は
「これで別室で帰蝶とゆっくりと話し、斎藤利政に与えられたミッションをクリア出来る」
と喜んだら、織田信長が、『Dr.スランプ』のアラレちゃんの如く、キーンと駆けつけて、
「明日また、来い」(今日は帰れ!)
「宿賃は持ってるか?」(えっ、泊めてくれないの? さっき獲ってきた猪で猪鍋(ししなべ)をご馳走してくれるんじゃないの? 八丁味噌で煮込むと美味しいんですけど。)
って感じですが、織田信長は、同盟相手とはいえ、他家の家臣を泊めるのは、さすがに警戒しているようです。そもそも美濃国に三河国岡崎特産の八丁味噌が大量にある事がおかしい。(某芸能事務所の方が、「所属タレントに送られてきた食品は全て破棄する」と言ってました。八丁味噌・・・マムシの毒がほんの少し入ってそう。じわじわと効いて、3年後に死に、斎藤利政は海を得る。)

さて、尾張の次期国主と三河の次期国主の政策会議です。

織田信長「ひとつそなたに聞きたいことがある。今、儂の兄上が今川の人質になっておる。その兄上とそなたを取り替えるという話がある。儂は不承知じゃ。そなたを今川へ行かせたくはない。しかし、迷いはある。この話を潰せば、兄上は斬られる・・・迷いはある」
竹千代「今川は敵です。いずれ討つべきと思うております。しかし、その敵の顔を見たことがありません。懐に入り、見てみたいと思います。敵を討つには、敵を知れと申します。信長様がお迷いなら、私はどちらでも構いませぬ」

 人質交換をしなければ、織田信広と竹千代が殺されます。自分が織田信長に殺されることを分かって「私はどちらでも構いませぬ」と言う「人質」の意味がわかっている竹千代は凄い。でも実際の子役さん(岩田琉聖君)はというと、
「将棋盤がすごく重くて、信長さまの前でゆっくりおろすときは、うでとひざがプルプルしました。あと、将棋のコマを動かす順番が決まっていて、それをセリフといっしょに覚えるのが大変でした。信長さまのオーラはすごくて緊張したけど、ちゃんとできてうれしかったです」(岩田琉聖)
https://twitter.com/nhk_kirin/status/1241693630122938369
とのこと。このギャップで胸キュン♥

 実は、斎藤利政は明智光秀にミッションを与えず、小見の方に「正室ネットワークを使って帰蝶に手紙で報告させよ」と言えば、済む話なんですけどね。(当時の戦国大名の正室は、頻繁に手紙で情報のやり取りをしていました。)まぁ、それでは主人公の出番が減ってしまいますね。(ただでさえ少ないのに。)
 織田信長は、結婚の1年後、濃姫が熟睡すると、毎夜、寝所を出て早朝に帰るという不審な行動を1か月も続けました。多分、帰蝶の顔が痘痕で醜いので、生駒屋敷に泊まったのでしょう。(一説に、帰蝶に短刀(関の孫六)か毒で殺されると思っていたためという。)『絵本太閤記』や『武将感状記』によれば、帰蝶が「毎晩、何をしているのか?」と聞くと、織田信長は「稲葉山城には内通している2人の家老(堀田道空、春日丹後守)がいて、狼煙(のろし)があがったら稲葉山城を攻めることになっているので、稲葉山城に狼煙があがるか見ている」と平気で嘘をつきました。(それって、城主ではなく、寝ずの番の物見の仕事だろ。)帰蝶はすぐに斎藤利政に手紙で知らせると、斎藤利政は、2人の家老(重臣)を斬ったので、斎藤利政の勢力が衰えたとのことです。実際に斎藤利政が家老達を斬った記録は存在しないので創作でしょうけど、明智光秀を派遣しなくても、帰蝶に手紙で報告させることは可能でした。

2.明智光秀編


 『麒麟がくる』では、織田信長が明智光秀に愛用の鉄砲を見せ、生産地を当てたので、織田信長は明智光秀を気に入ったとしています。当時の生産地として有名なのは、薩摩(鹿児島県)、豊後(大分県)、紀州根来(和歌山県岩出市根来)、泉州堺(大阪府堺市)、江州国友(滋賀県長浜市国友町)&日野(滋賀県蒲生郡日野町)です。織田信長のご愛用の鉄砲の可能性として高いのは、①渡来品、②堺製、③国友製ですね。渡来品は粗悪なのですぐに分かります。国友製は高級品で、堺製は粗悪で安価なものから、金飾りの付いた美術品のようなものまでピンきりです。織田信長は「走る猪をしとめた」と自慢しました。ということは、止まっている的は100発100中なのでしょう。とすると、ご愛用の鉄砲は、精度の高い国友製の可能性が高いです。また、明智光秀の耳には「織田信長が国友村に鉄砲を発注した」という情報が入っていたかもしれませんね。
 月川明大『明智光秀と本能寺の変』では、織田信長が明智光秀に鉄砲を2丁渡すと、明智光秀は「私はこちらで。信長様はこちらの性能の良い方でどうぞ」と言って返し、2人とも的に当てたので、織田信長は「鉄砲の目利きは出来るし、的に当てる技術も持っている」と明智光秀を気に入ったとしています。(明智光秀の鉄砲術の師は斎藤利政(『美濃国諸旧記』)で、織田信長の鉄砲術の師は橋本一巴(『信長公記』)です。)
 どちらも創作でしょう。とはいえ、史実は不明です。

・いとこの帰蝶が紹介した。(俗説)
・「有能な使者が居る」という評判を聞いた織田信長が召し抱えた。
・本阿弥光正が紹介した。

 『明智軍記』では、織田信長との面接(採用試験)で、織田信長は、「お前は何が出来る?」と明智光秀に質問せず、「お前は、朝廷との繋がりがある自分を採用して、儂に『足利義昭を擁して上洛すべし』と言いたいのであろう?」と聞いてきたので、明智光秀は、その鋭い洞察力に感服したとあります。

3.帰蝶のこと


川口帰蝶、最高ですね。以前、沢尻帰蝶が「撮影は8月までだけど、私の撮影は4月まで」と言っていた気がします。それって、「本能寺の変」の前には死んでるってこと?

織田信長と帰蝶については、「『アシガール』の伊藤健太郎&黒島結菜がいい」という声もありましたが、私は広瀬すずさん推しでした。昨年のピエール事件の汚名を静岡市民で晴らしていただければと思っていたのですが、広瀬すずさんではなかったけど、徳重聡さんが選ばれたので、いいのですが・・・私の声はNHKには届きませんでしたが、フジテレビには届いたようで(違うだろ。『なつぞら』の脚本家が呼んだんだろ)、この夏の『桶狭間 OKEHAZAMA~織田信長~』の帰蝶役に決定!!!
 このドラマは「十三代目市川團十郎白猿襲名記念特別企画」なので、主人公の織田信長は、『麒麟がくる』のナレーターの十三代目市川團十郎さんです。年齢的に「桶狭間の戦いの織田信長」よりも「本能寺の変の織田信長」がお似合いかと思いますが、「十三代目市川團十郎白猿襲名記念特別企画」なので、主人公が死ぬよりも、勝つ方が縁起がいいですね。

※「イントロダクション」(公式サイトより)

この夏フジテレビでは、市川海老蔵の十三代目市川團十郎白猿襲名を記念した特別企画ドラマを放送する。海老蔵が演じるのは戦国時代の武将・織田信長。ドラマは、圧倒的不利と言われた織田軍が今川義元の大軍を打ち破り、織田信長を一躍戦国時代の覇者に押し上げた伝説の一戦、“桶狭間の戦い”を題材とした本格時代劇『桶狭間 OKEHAZAMA~織田信長~』(仮)。海老蔵は今作品が、フジテレビ系ドラマ初主演となる。

織田信長=市川海老蔵

日本史上最も名高い“大逆転劇”とも言われている1560年の桶狭間の戦い。尾張東部に侵攻した駿河の大大名である今川義元の大軍に対し、尾張の織田信長がわずかな軍勢で今川本陣を強襲し、義元を打ち破った。今作品では、その奇跡の一戦“桶狭間の戦い”をフィーチャーする。
現実的な合理主義者で常に常識を疑い、自分の目と力のみを信じ、全く新しい価値を創造した男・織田信長が、高貴な家柄を尊び、慣習や伝統的価値観の守護者たる大大名であった今川義元を倒したことは、まさに中世から近世への時代の大きな変革の始まりを象徴している。一躍時代の寵児(ちょうじ)となった信長像は、伝統ある歌舞伎界の中心にありながら、常に変革を求めている海老蔵そのものとも言える。
また、織田信長は市川團十郎家の屋号である成田屋が、歌舞伎で演じ続けてきた大事な演目でもある。作家・大佛次郎は昭和27年、自身初の歌舞伎脚本として「若き日の信長」を十一世市川團十郎のために書き下ろした。それ以来、成田屋ではこの演目を大切に演じて続けてきた。海老蔵にとっても織田信長は特別に思い入れのあるキャラクターであり、團十郎襲名前にどうしても演じておきたかった作品なのである。
海老蔵が織田信長を演じるのはNHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』(2017年)以来、自身にとって二度目。また、織田信長の仇(かたき)となる明智光秀の生涯を描く現在放送中のNHK大河ドラマ『麒麟がくる』ではナレーションを務めている。海老蔵がフジテレビ系ドラマに出演するのは、2018年10~12月放送の月9ドラマ『SUITS/スーツ』(10、11話ゲスト出演)以来となる。
5月に十三代目市川團十郎という歌舞伎界の最高名跡を襲名する海老蔵が、型破りな発想と戦術で戦国時代を勝ちぬき、天下統一の基礎を築いた武将・織田信長をどのようなキャラクターに作りあげ、演じていくのか!?新たな市川團十郎としての思いと意気込みを込めた、そして映像作品としては海老蔵の集大成となるであろうこのドラマにご期待いただきたい。

脚本を手がけるのは、『なつぞら』の大森寿美男

『桶狭間 OKEHAZAMA~織田信長~』(仮)の脚本を手掛けるのは、連続テレビ小説『なつぞら』(NHK2019年4~9月)、大河ドラマ『風林火山』(NHK2007年)など数々のヒットドラマを世に送り出してきた大森寿美男。そして、『きらきらひかる』、『フジテレビ開局60周年記念ドラマ 松本清張 砂の器』などを手がけた河毛俊作が演出する。

https://www.fujitv.co.jp/okehazama/

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