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第32話 在宅検疫者の同居家族 〜市中感染のきっかけになる?〜

2020年3月26日〜3月29日

 3月19日より入国者全員が在宅検疫を義務付けられたので(第30話)、在宅検疫者数は毎日爆発的に増えていた。同時に、コロナ感染流行地域からの帰国ラッシュに伴い、台湾での感染者が急増した。

 海外流入例は、空港検疫で発見されるケースも多く、空港で見つからなくても14日間の在宅検疫中に見つかるので、ウイルスが市中に入り込む隙間はほぼないだろうと私は思っていた。適切な在宅検疫が実行される、という前提で。

 しかし、在宅検疫者の同居家族が、自宅内での隔離不十分のために家庭内で二次感染するケースが3例相次ぎ(下記グラフ参照)、少し心配になった。検疫者はちゃんと自宅待機していても、その家族はふつうに買い物に出かけたり、会社に行ったりしていたので、彼らが市中感染のきっかけになるのではないかと懸念された。

0331までの新規感染者グラフ

 同居人のいる在宅検疫者に対し、何らかの追加措置が必要なのではないか?と世論も出たが、政府は新たな措置はとらなかった。そして、結果論から言うと、検疫者からの二次感染はいずれも家族内で終わり、市中感染にはつながらなかった。発症から検査実施-確定診断-入院隔離-クラスター調査まで、一連の流れがとにかくスムーズで迅速だからだと思う。
 必要な人には医師の判断ですぐに検査を受けられる医療体制が整備されていたし、特に、クラスター調査は周到で、接触者の洗い出しから、誰を検査して誰を隔離すべきなのかという詳細まで、この頃には完璧に「台湾モデル」が出来上がっていたように思う。

 これらの事例発生を通して、家庭内で十分な隔離を担保できない場合は、ホテルに泊まるようにと政府は呼びかけた。その後、帰国した祖父(帰国時は在宅検疫対象ではなかった)が祖母にうつし、祖母が同居している5歳の孫(4月6日確定診断)にうつすというケースもあったため、高齢者・乳幼児・慢性疾患患者がいる家庭に対して、ホテルでの在宅検疫を政府は強く推奨した。4月14日にはヨーロッパからの帰国者で上記対象者が家庭にいる場合は一律ホテルでの検疫を義務付け、4月18日には東南アジアからの帰国者に拡大適用、5月2日には全帰国者に適用、とルールを拡大した。

 3月29日を最後に、在宅検疫者からの二次感染は発生していない。

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