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第30話 国境封鎖

2020年3月19日

 コロナ封じ込めのため、独自に国境封鎖に踏み切る国が相次いだ。外国人の入国禁止(=自国民だけは入れる)、空港閉鎖(=とにかく誰も入れない)、とやり方はいろいろ。あのころ、みなさんの目には世界がどう映っていただろうか?

 WHO(世界保健機関)のパンデミック宣言は2020年3月12日だった。ヨーロッパではデンマークが3月14日にいち早く国境を封鎖し、ヨーロッパ各国が次々と後に続いた。並行して都市のロックダウンも行われた。欧州連合にとっては、「移動の自由」や「単一市場」といった共同体の土台を大きく揺るがす決定だ。令和の時代にこんなことが起こるのか、、、と私はとても驚いた。

 台湾にも、パンデミックの波が襲ってきた。そして3月19日0時を境に、台湾も国境を封鎖した。

 そこに至るまでの数日は本当に慌ただしかった。
3月14日 ヨーロッパ27ヵ国とドバイからの入国者に対し、14日間の在宅検疫を義務付け。
3月16日 東欧13ヵ国、中東15ヵ国、北アフリカ5か国、中央アジア9ヵ国からの入国者に対し、14日間の在宅検疫を義務付け。
3月17日 アジア、東欧20ヵ国とアメリカ3州(カリフォルニア、ワシントン、ニューヨーク)からの入国者に対し、14日間の在宅検疫を義務付け。ビザ免除措置は全て停止。
3月18日午前 アメリカ全土、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドからの入国者に対し、14日間の在宅検疫を義務付け。

(ここまでのポイントは、感染流行地域からの入国者に対して在宅検疫を義務付けているが、入国禁止はしていない点)

ところが、3月18日午後、一転して新たな方針を発表。

3月19日0時より、外国籍の旅行者について、台湾での在留許可があることを証明する居留証(ARC)、外交公務証明(=外交・公務目的の渡航であることを証明する文書)、商務履約証明(=商務の関係で契約を履行するための渡航であることを証明する文書)のいずれかを所持している人、もしくは「その他特別な許可」を得ている人を除いて一律入国を拒否する、と。また、入国者は全員14日間在宅検疫を義務付けることも発表した。

そして3月24日には、台湾の空港での乗り継ぎも禁止となった。

 まとめると、台湾政府は、3月19日0時より以下の水際対策をとった:
1) 外国人入国禁止(=流入人口を減らす)。ただし、長期居住者などは入国可であり、短期訪問の外国人の入国を禁止しているだけ。
2) 入国者全員に対する14日間の在宅検疫の義務付け(=流入した感染者が感染を広めるリスクを抑える)。

 台湾のコロナ戦略は、一貫して「感染者を早く見つけること」と「二次感染を防ぐこと」だった。パンデミック目下で感染者が多数入国することが想定される中で、この戦略を維持するためには新たな戦術が必要だった

 よって、国境閉鎖と共に以下の強化策が実行された:
a) 空港での検疫体制強化(ex. 空港で検体採取可能)
b) 在宅検疫システムを強化(ex. 入国時のデータがそのまま在宅検疫システムに転送され、地方政府や警察がタイムラグなく情報を把握)
c) 検挙システムを強化(ex. 警察は検問時に、身分証ID検索で検疫中の人かどうかがその場で確認可能)
d) スマホ位置情報の監視網を設置(ex. 検疫者のスマホ位置情報を常時監視)
e) 既に入国した感染者を見つけるための遡り調査を実施

(注:これらの詳細については、いずれ別稿で説明する予定。)

 国民に対しては、3月16日に「明日より、感染症危険情報レベル3(3段階中の最高レベル)に分類された地域に渡航して感染した場合には、帰国後の隔離や治療に関する全費用を自己負担とし(本来は国費)、隔離補償金(1日1000元)受取資格も剥奪する。且つ、実名公表する。」と政府の強い姿勢と方針を示した。3月20日には海外全ての国を感染症危険情報レベル3とし、台湾国民の海外渡航は事実上禁止となった。

 その後の台湾は、パンデミックの襲撃をなんとか持ちこたえ、ロックダウンは回避し、国境は閉じているが、台湾国内は通常運転という状態を維持した。そして、5月末現在、台湾の国境はまだ閉じたままだ。ウイルスのいない国内と、ウイルスの嵐が吹き荒れる国外、という不思議なパラレルワールドになっている。

(参考)2020年3月10日-18日の台湾での新規感染者55人中、海外流入例が51人だった。そして、全員がヨーロッパからの入国者だった。

0318までの新規感染者グラフ




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