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第40話 WHOへの反撃 ~民主社会ここにあり~

2020年4月10日〜4月15日

 2020年4月8日にWHO(世界保健機関)のテドロス事務局長が記者会見で「この3ヵ月間、台湾から人種差別的な個人攻撃を受け続けてきた」と発言した。4月9日、台湾外交部(日本の外務省に相当)と台湾総統はそれぞれ「強い抗議」を示した(第39話参照)。国としての対応はそこまで。しかし、そこで終わらないのが今の台湾だ

 4月10日に、台湾人有志によるプロジェクトが即座に立ち上がった。このプロジェクトは、テドロス事務局長への反論としてニューヨークタイムズ紙に広告を載せようというもの。クラウドファンディングが開始され、目標金額は400万元(1元=約3.5円)、制限時間14時間半(4月11日朝5時締切)。
 トラフィックが殺到し、サーバーは一時的にダウン。別ルート(ATM入金)が確保され、再開。最終的に26,980人、19,133,288元が集まった。目標の4倍以上の金額が集まったことに興奮と驚きを覚えたが、私が本当に感動したのはこの後だった。

 募金集めに平行して、実際の広告の内容についての議論が当該クラウドファンディングページ上で始まっていた。発起人が提示した第一稿に対しては反対意見が多く(私もこれは方向性が違うと思った)、様々な人がいろんな角度から助言や代替案を提示した。これらを受け、4月12日12時に第二稿(メッセージの主軸が異なる二案を提示)が開示され、支援した26,980人による投票で決定。同時に、余ったお金の使い道についてアンケート調査を実施。
 4月14日17時にニューヨークタイムズに入稿したことを報告、そして残金の使い道を公表。(この結果について同意できない人は、4月21日12時までに返金申請可。)
 4月15日18時(ニューヨークは4月14日朝)ニューヨークタイムズ朝刊に広告掲載。

 当初、この短時間でどうやってこんな色んな意見をまとめ、支援した人たちを納得させる成果物を出すのか、私には全く想像ができなかった。しかし、ネット上で展開されたのは建設的な議論と透明性の高い情報開示!!!発起人たちのコミュ力の高さ!!!最終成果物は、第一稿とは比べ物にならないくらいレベルアップしており、現代の民主主義の形を目の当たりにした気分だった。

 支援者たちの希望に応じ、紙媒体である新聞広告に加え、ネット上でも広告ページを同時公開したのが以下:
https://taiwancanhelp.us

 不当な出来事に対して泣き寝入りしない姿勢を発起人たちに教えてもらった。無数の知恵が集結する様を参加者たちに見せてもらった。私は、テドロス事務局長の発言には当初随分と腹が立ったが、自分が何をどうすればいいのか全然わからなかった。今となっては、台湾の民主社会を具現化する良いチャンスをテドロス事務局長に作ってもらったのだと思っている。

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