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第3話 新型コロナ対策本部設立まで

2019年12月31日~1月23日

 武漢での原因不明肺炎発生を2019年12月31日に察知した台湾は、迅速な行動をとった:
12月31日 WHO(世界保健機関)と中国当局に肺炎の発生について問い合わせ、同時に、武漢からの直行便に対し、機内立ち入り検疫開始。国民に対しても、条件が当てはまる人は専用電話相談窓口(1922)へ連絡するように周知。
1月2日 台湾CDC(疾病管制署)にて専門家を交えて武漢地区の肺炎感染拡大状況について議論し、本件に対応する専任部門を開設。
1月3日 中国CDCより武漢の状況についての詳細報告を受け、水際対策を継続すべきと判断し、台湾CDC内では緊急会議を開き、対応すべき項目を共有。
1月5日 WHOが武漢で発生している原因不明肺炎について発表。
1月6日 行政院副院長(副首相)が関係部門長を召集し、情報共有。春節(1/25が旧暦の元旦)時期に中台間の人的往来が急増することを踏まえ、国内の準備体制強化を指示。また、現地での正確な情報を把握するために台湾CDCの武漢視察を指示。
1月13日 台湾CDCは武漢に視察者2名を派遣(1月16日帰国)。
1月15日 新型コロナを法定伝染病に指定。これにより、検査や治療費用は全て国費でまかなわれるようになった。
1月20日 まだ国内で感染者は出ていなかったが、武漢での深刻さを踏まえ、新型コロナ対策本部である中央感染症指揮センターを設立した。開設レベル「第3級」とし、台湾CDC長が指揮官に指名された。(注:指揮センターは開設レベルが3段階に定義され、レベルが上がるごとにその機能が強化される。最上位は「第1級」。)
1月21日 国内初の感染者を確認。武漢で働いていた50代の女性、台湾へ帰国後に陽性と判明。
1月23日 武漢封鎖を受け、中央感染症指揮センターの開設レベルを第2級へ昇格。衛生福利部の陳時中部長(厚生大臣に相当)が指揮官を務め、「防疫如同作戦」(感染症対策は戦争と同等とみなす)と宣言。

参考までに、日本の動きを振り返ってみよう。
1月5日 WHOが武漢での原因不明肺炎の発生について発表。
1月16日 日本初の感染者を確認。
1月28日 厚生労働省にコロナ専用の電話相談窓口を設置。
1月30日 内閣に感染対策本部を設立。WHOが緊急事態宣言を発表。
2月1日 新型コロナを指定感染症に指定。

 このように、1月時点での台湾と日本の動きは全然違った。感染者が1人出ただけで「戦争と同等とみなして対応する」とは、傍から見ればずいぶんと大げさな反応に映ったのではないだろうか。台湾は中国に近いので警戒心が高い。しかし、日本も決して中国から遠いわけではないし、人的往来も年々増加している。台湾が大げさのか?それとも日本が鈍感なのか?国際社会での台湾に微妙な立ち位置を考える(もし台湾が第二の武漢になったら世界は台湾との往来を止めるだけ)と、台湾は空振り覚悟で早めに動いた方が良いのだろうと、私は自分自身に言い聞かせた。

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