正直、働くことが怖い

蓋をしていた。
働くこと、を考えること。

生涯で体調のどん底は何度もきて、生活もままならなくなった。ここ数年はその頻度も高くなっている。
今はもう1日も働けなくて、長期戦になりそうで、でももう1人じゃないのでお金の心配がなくなってこれからゆっくりと考えていけばいいと、そう思っては、いる。

体調が悪い今考えたって不安になるだけで仕方がないから。いつもみたいに、またちゃんと回復したら動きたいと思えるだろうから。
そう思って、働くということは一旦横においてあった。


きっかけは彼とのポッドキャスト収録だった。
少し真面目な話についてを一緒に考えて発信しているこの番組は、基本的にわたしが企画を持ち込んでいる。
3年〜半年前の自分自身がペルソナだ。その頃の自分が悩んでいたことに、今のわたしと彼が答えを出して少しでも生きやすくしてあげたい。

半年前まで、理想の自分は「自分1人で生計を立てられるだけ働ける自分」だった。
両親の支援を受け、自分の貯金を切り崩しながら生活するのが嫌で、少しだけ周りと比較してまともな人間になりたいとも思っていた。体調はじわじわと悪くなって、理想のためにできることが全然なくて、その理想は自分を苦しめるだけだったけれど。

「その頃懸念していたお金の心配がなくなった段階で、もう一度仕事のためにアクションを取っていこうというときに、あなたならどうする?」

彼にそう聞かれてわたしの思考は止まった。いや、会話は止まらずになんだか続いているけれど、ここからぱったりと編集の手を止めてしまった。


考えたことがなかった。これからどうするか。
いや、働いてみたい場所や職種はなんとなくあるけれど、しっかりと考えたことはなかった。
第一、回復したときにどれくらいの体力で働けるのだろう。というか、また働けるようになる日は来るのか。


わたしは同じ仕事で2度自分を壊し、この仕事とどんな関わり方をしても自分を蝕み続けることに気づいて手を引いた。

1度目はフルタイムで働いていた。泣きながら過食し、風呂にも入れず、家にゴミと服と洗濯物が足の踏み場もなく散らかっていた。
自分の世話すらできないくせに仕事を休むことが怖くて、実家から仕事を続けた。
そうしたら自分の家が怖くてたまらない場所になった。帰ろうとするとパニックになって近くの神社で大泣きした。また1人で生活できるようになるまでに何ヶ月もかかった。

2度目は週3日しか働いていなかった。
今日は休めても明日は仕事なのが怖くて、夜が終わらないように飲み歩いた。眠ると考えがネガティブで内向きになるので、眠ることも怖かった。
体力を削って行き着いた先はやっぱり行き止まりで、母を怒鳴って壁を殴った。ひどい倦怠感で結局仕事に向かうことができなくなった。

徐々に体力は回復しなくなって、週2日でも他の日は家から出られなくなった。ダイエット中だったのに過食で体重は増えた。
この仕事をやめないと、未来を描くことはできない。
そう思って退職を選んだ。

こんなに何度も同じ仕事で自分を壊したのは理由がある。
わたしの仕事は国家資格だ。専門学校を卒業して、アルバイトも合わせると業界歴は10年。どうにかして自分の持っているスキルと経験で生きていきたい思いがあった。
フルタイム、パートタイム、色々試してそれでもわたしには合わない仕事だとわかった。


業界を変えれば昔のようにフルタイムでもうまくいくのだろうか。
専門職種の前は、その資格を活かして営業をやっていた。それでも、疲労から土日は家から出られないことも多かった。夜は20時に寝ていたので、自由な時間はほとんどない。

いつか正社員になってもそれだけでいっぱいいっぱいの生活に戻ってしまうのではないか。
もとには戻らないと信じて就活していた時期もあるけれど、この体調ではもっと早く限界がきそうだ。

2ヶ月半ほど前が最後の就活だった。
すごく行きたかった会社があって、彼に職務経歴書から面接対策までしてもらって、ハローワークでも対策したのに届いたメールはお祈りだった。
今の状態では働くな、という何かのお告げだと思ってわたしは就活を一旦やめた。


今の状態で働いても、いいイメージは持てない。
しかし、ちゃんと働けるぞなんてイメージで生きていたことなんてもう2年以上ない。

そのくせ、無職をすごく楽しんでいるわけでもない。
「今の自分はサナギだ、いつか蝶になるのだ」なんて正当化して理想を手放す努力はしてきたけれど、彼のご両親に「仕事は決まったの?」と言われたときにめちゃくちゃ口ごもった。彼のご両親”だから”かもしれないけれど。


小さい頃からバリキャリに憧れていたし、いい高校に入って、いい大学に入ってその選択肢を広げたいと考えていた。
結局高校にも通えず、大学進学も諦めた。それでも念願だったホワイトカラー職種に就いたけれど、結果はどうだろうか。
離職率の異様に高い会社で粘った方だけど、それでも2年半で転職した。転職したら働けなくなった。
勉強ができなくなったその日から、わたしの夢や希望はいつも折られて小さく小さくなった。
うまくいくイメージって、なんだ?

本来自分は考えたりアイデアを出したり、働くことが好きだ。映画やドラマで働いているシーンを見ると胸が高鳴る。
でもいざ働くことを考えると不安になる。
また余裕がなくなって自分をすり減らす生活になったら?
またルーティンワークに頭がはち切れそうな窮屈さを覚えたら?
また休むことが怖くて自分を追い詰めてしまったら?


高校、大学、声優。体調のせいでいろいろなことを諦めてきた。そのうち仕事もそうなるのだろうか。このままやりたいことをできないままだったら、今度は結婚式を挙げることや母親になることも叶わない夢になってしまうのだろうか。

ポジティブな言葉で締められればいいのに、今のわたしの中にそんな言葉は見当たらない。
手放そう。ずっと映画を観ていたら、この感情もどこかに遠ざかってくれるかもしれない。

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