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マッチングアプリで出会った人と3ヶ月で事実婚するまで#5 〜恋人としての初デート〜

恋人になってから2日。
チケットを取ってあった映画の日がやってきた。
その日は大雪の予想。恋人になった喜びと雪の特別感でわたしはハッピー絶好調!
…といいたいところだったが、喘息がひどくて絶不調だった。2割くらいしか呼吸できないので、いつものペースで歩くだけで息が切れて休みたくなる。冷たい空気が余計に気管支を締めるので、外ではマスクが外せなかった。


待ち合わせは13時。12時過ぎに雪が降り出して、辺りはいっそう寒くなった。
歩くのが遅いので、電車を1本逃した。13時ちょうどに駅に着いた。
映画館は駅直結だったみたいなんだけど、出口が分からなくて一瞬外に出た。すぐそこに建物を見つけたから傘を差さずに少しだけ走ったらまた気管支が締まった。

映画館の前に彼はいた。びっくりさせようと思ってゆっくり近づいたけど、エスカレーターからは人気もない一本道だったのですぐに見つかった。
食事の前にチケットを発券。下の階の飲食店で昼食を食べた。


わたしはここでマッチングアプリを消した。彼はまだサブスク期間が残っていたので退会できなかった。
退会時のアンケートには一緒に答えた。2人で笑いながら。
恋人ができて退会したことがなかったので、新鮮で楽しかった。

何を話したかは全然覚えていないのに、わたしはここで何度もゲラゲラ笑ったのを覚えている。たしかわたしの知り合いの話はしたと思うけど。
部屋が暖かくて落ち着いたからなのか、喘息はさっきよりずっと楽だった。
彼と会うたびに、彼のことを知っていく。余分な緊張や気遣いが抜けて、話すのが楽しくなっていく。
こんなふうにお互いが心地いいレベルで気を遣っていられたら、わたしたちはずっとやっていける。この気持ちをいつまでも忘れないでおこうと思った。


お店が閉店の準備をし始めたころ、お会計をして映画館へ向かった。
開場までベンチに座って話をしていた。彼が今年からコンタクトレンズを使い始めたというので、こんなビジネスやったら儲かりそうだよね、なんて会話をしていた。

映画はビフォア・サンライズ。1995年の映画で、電車の中で偶然出会った男女が、ウィーンで一晩を過ごして恋に落ちるお話。わたしの好きなラブロマンス映画3本指に入る。
知的で尽きない会話が素敵で、わたしはずっとこの関係を理想だと思っていた。
バレンタインということでリバイバル上映されたのは本当に偶然で、付き合い始めた最初のデートで観るというシチュエーションはこれ以上ないくらい最高だと思った。

映画が終わって、エスカレーターを降りながら「どうだった?」と聞いた。2人がそれぞれ恋に落ちたタイミング、お気に入りのシーン、この後2人はどうなるのか(続編があるので答えがあるのだけど)なんてことを話した。
わたしは映画をよく観るので感想を話す機会が結構ある。映画好きが集まりやすいだけに出演者や監督の過去作、演出などの視点から話すことが多くて、登場人物についていろいろ想像を巡らせる考え方は新しくて楽しかった。


外に出ると雪が強さを増していて、地面に形を残しつつあった。
普段なら雪が積もるとテンション爆上がりのわたしは、気管支のせいでいつもより静かだった。

わたしはいつも持ち歩いているフィルムカメラで雪の写真を撮って、せっかくだからと自撮りの写真も撮ることになった。
初めてのツーショットは1mくらい距離があった。わたしはマスクが外せず、初々しすぎるにもほどがあるやろ!って写真になった。
これが「彼氏できたんだよね」でみんなに見せびらかす写真になるのかな、なんて思った。

自撮りしてくれる彼氏って嬉しいよね


この冬唯一だった積雪を楽しみながら、わたしたちは日比谷公園まで散歩した(2日ぶり2回目)。
雪を長靴越しに楽しみながら歩いていたわたしはよく滑った。わたしにとってはいつものことなのだけれど、足元が揺らぐたびに握っている手に力を入れて引っ張ってくれるので、手が握れる関係っていいなあとぼんやり考えていた。

公園は、平日だったし雪も降っていたしで人がほとんどいなかった。いつの間にか2周した。
帰りがけ、周りに人が誰もいなくなったところで、雪を少し防げる大きな木の下で傘を手放してハグをした。寒いし厚着だし温もりは全然なかった。初回だしこんなものでいいか。これから何千回もハグするんだろうなと思った。


地下のフードコートで夕食をとって解散することになった。わたしとしては夕食までには帰る予定だったけど、この人といてもあんまり疲れないからまあいっか。

スパゲティーを食べながら、「今まで会ってて、気になるところある?」と彼が言った。
わたしとしては特になかったから、しばらく考えた後「強いていうなら、自分のことをよく見せようとしている気がする。まだ知り合って日が浅いから無意識にそうしているだけかもしれないけど」と答えた。彼としては自覚がなかったみたいだからめっちゃ気にしてた。
今までは相手から嫌われたくないという気持ちがあったからあまりネガティブなことは言わなかったけれど、恋人だからこんな深いことも話せるのか。進歩に小さく感動した。

恋人になったので、呼び名を変えたかった。わたしは呼び名変更を申し出た。
わたしは人の名前を呼ぶのが好きだ。名前には、親や祖父母やその人を大切に思う誰かの願いが込められている。だから今までの”トシくん”ではなく、名前をフルで呼びたかった。
「名前フルで呼び捨てにしたいんだけどいいかな?」と提案したら、「いいよ。僕の周りでそう呼んでる人いないから新鮮。」と返ってきた。
「そうなんだ!普段なんて呼ばれてるの?」と聞いたら、「親にはトシかな。友達とか職場ではあだ名で呼ばれてるよ。」と言っていた。
職場であだ名!?でも、あだ名の由来になったその身体的特徴は彼のアイデンティティになっていてわたしは好きだった。

続いてわたしの名義変更(?)。
呼びたい名前を聞いたら「こなちゃんかな。」と返ってきたので、「まあそれでもいいけど。わたしにとっては名前呼び捨ての方が特別感あるよ。今父親しかそう呼ばないから。」って言ったら食い気味で「じゃあこなにするー!」って言ってた。はい、誘導しました。

次のデートの計画も練った。彼は友達とシェアハウスをしていたので、お泊まりは眼中になかった。となると必然的にお泊まりデートは一人暮らしのわたしの家だけど、わたしは「家はまだ早いと思う」とそれ以降に持ち越した。キスが先だろ。1デート1進展。
家に来る予定は19日後。それまでに片付けておかなくてはと思った。

次のデートはドライブデートになった。
彼は免許を取ってから運転していないけど、わたしは父に運転をかなり教え込まれたのでブランクはあるけどある程度はできる。
「DJは頼んだぜ!」と言ったら「まかせろ!」と返ってきた。心強い。
知らない曲ばっかりでなにこれ!?となりまくったが、それはまた次の話。

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