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小澤メモ|POPCORN MOVIE|映画のこと。

3 エルウッドのトースト。

ドライのトーストがかっこいい。
シカゴの安ホテルの一室。出所したばかりの兄貴をベッドに寝かせると、おもむろにパンをコンロで炙りだす弟のエルウッド。セントラルヒーティングのはずなのに外より寒そうな部屋で、バターもジャムとつけずにトーストにありつく。初めて見たとき、映画の序盤、このシーンに遭遇しだけで、(あ、この映画はかなり好き)と思った。黒のセットアップに、サングラスと黒のハットに黒のネクタイと革靴。そんな一張羅で頬張るドライのトースト。そのプレーンさは際立っていた。全部プアーじゃなくて、全部ソリッド。削ぎ落とした感じがかっこよかった。憧れた。かじかむ手をコンロで温めながら、ドライのトーストを食したい。しかし、こちらはというと、ブレッドワークス一斤からパンの田島の福耳食パンにハマり、それにヌテラのチョコクリームを塗って食べていた。エルウッドのようなブルースハーモニカの境地にはいつまでたっても辿り着けなかった。

踊れる万能な太っちょ。
敬愛するジョン・ベルーシ。唯一無比のスポーツカー、デロリアン(『バック・トゥ・ザ・フューチャー』でおなじみの)ならぬ歌って踊れるハイスペックなデブリアンが大好きだった。エルウッドの兄貴役ジェイクを演じた『ブルース・ブラザーズ』はもちろん、前作の映画『アニマルハウス』でも、踊って歌ってバカやって下品にクールで最高だった。彼のルイルイとかが収録されたサントラ12インチも超気に入っていた。エルウッド役のダン・エイクロイドとともに、映画『ゴーストバスターズ』の出演オファーがきて、ウォーとなった矢先に亡くなってしまった。ビル・マーレーもよかったが、ジョン・ベルーシだったらもっと勝手に踊ってステップ入れてきたりしたんじゃないだろうか。

ブルース・ブラザーズ。
ハーモニカを吹いて踊るエルウッドと歌って踊るジェイクの映画『ブルース・ブラザーズ』。教会の神父役にジェームズ・ブラウン、バンド仲間の女房役にアレサ・フランクリン、楽器屋の店主役にレイ・チャールズなどなど、全員主役張れるよねっていうミュージシャンも出演。さらには、ジェイクを執拗に追いかける昔のオンナ役にキャリー・フィッシャー(日本ではスターウォーズのレイア姫?)とかジェイクが声をかけるオンナ役にツイッギー(日本では60年代のミニスカ女王?)というように女優陣もツヨがクセい感じ。クレジットには、今は亡き人も多いが、この映画を見るたびに、なんでか知らないが勇気が湧いてきた。走り出したくなった。ブルース・ブラザーズが乗ってるだけで、払い下げのパトカーが、タフなエンジンを積んだかっこいいバット・モービルならぬブルース・モービルに見えた(その後、マテル社がリリースしたブルース・モービルのホットウィールは最高だった)。エルウッドが好んで食べているからこそ、ジャムとかバターがないんじゃなくて、さらにはトースターがないんじゃなくて、あえてドライのトーストを食べているんだと、食費に困りきったときでも、胸を張れたのだった。3
(写真はドライ・トーストから遥か遠くブルースタードーナツ。チョコリングが最高/2018)

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