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小澤メモ|Sb|スケートボードなこと。

2 おらが町のスケボーショップ。

ポートランド、コモンウェルス。
ポートランドに行ったとき。古い友だちの元SLAP編集長のマーク・ホワイトリーに、コモンウェルスに行くといいとすすめられた。なるほど、ローカルのための良いショップだ。店舗部分は小さいが、その奥にお手製のスケートパークがあった。壁にはローカルのアーティストが描いた大きなグラフィック。スポンサード・ミーなヤングガンから、キッズを連れたパパも滑っている。客層は、スキルと年齢にかなりバリエーションがある。これは最近の日本でも見慣れてきた光景だ。父と息子のキャッチボールという家族の原風景に、スケートも参入してきたってことかな。コモンウェルスの店長、ギャリック・レイはナイスガイだったが、喋り方にクセがあって表情もおもしろくてキャラが強かった。(これはいい)、それだけで嬉しくてニヤついてしまった。

京都の先斗町とかってわけじゃないけど。
おらが町のスケボーショップというのは、シークレットスポット近くのサーフショップや、ベニスビーチにあったDOGTOWN所縁のジェフ・ホーのお店と同じで、初めて入店するときに軽い目眩を覚えるものだ。怖そうとか近寄りがたいスタッフがギロリと一瞥してくるだけの店。イメージで書いてしまうが、京都の祇園や先斗町みたいな一見さんおことわり的な雰囲気がある。ろくにスケボーも知らねぇくせに来んなとか、おまえどこ中?(中学)みたいな。それが、通ううちにスケボーのことだけでなく、それにまつわる音楽や遊びなんかも教えてくれるようになる。それが楽しい。とくに足元ブルブルのキッズはとくに。だから、コモンウェルスの店長の濃いめのキャラに出会った瞬間、嬉しくなったのだ。(ここの店もそういうとこか。ありがとう、マーク・ホワイトリー)と。

さすがリベラルなポートランド。
また次の大統領選の話題が増えてきた今日この頃。コモンウェルスのおらが町感は徹底していた。取り扱っているデッキは、ショップオリジナルがメインで、あとは地元のローカルブランドDIETAやノーカルたちのオールタイム・ヒーローであるマーク・ゴンザレスの〈KROOKED〉のデッキが2枚、そしてポートランドのアイコンスケーターのひとりブレント・アチリーが主宰していた〈TRIBUTE〉のデッキが1枚。たったのそれだけ。この界隈で滑るなら、これがベストっていうこと。それで、ショップオリジナルのデッキとステッカーが、(選挙に勝ってしまった)トランプ大統領や敗れたヒラリー・クリントン、そして、若者やスケーターに熱狂的な支持を得ていたバーニー・サンダース候補をモチーフにしていた。これが実に面白い。トランプやその家族は、入店お断りというのにはじまり、トランプをエイリアンやダースベーダーなど得体の知れないものや悪の枢軸みたいにグラフィック。少し微妙な感じで捉えられていたヒラリーは、(間違いだらけの)ベトナム戦争真っ只中だった1965年のライフ誌でスケボーで初カバーを飾ったガーリースケーターのパット・マギーよろしく古臭い感じのグラフィック。

KEEP WEIRD!!!
そして、ブルックリンで生まれ、幼少期に体感した格差が政治姿勢の原点というサンダースは、民主社会主義を唱えるリベラルな人。だから、全米でも屈指のリベラルな土地柄と言われているポートランド。そのおらが町のコモンウェルスはバーニー推し。だから、最も高齢な立候補者だったにもかかわらず、レールバーがついた一番イケてるデッキで見事にグラブをしているグラフィック。このシャレと本気とローカル魂がブレンドされたスケッチーな感じ。ポリティカルまではいかないけれど、スケボーショップなりの意思表示。これは面白い。ふとこんなときに町を実感するのだった。(そうだ、この町の人々はKEEP WEIRDを実践しているんだった。変わってていいじゃないか。ヘンテコでいいじゃないかって)。刺青だらけのおばあちゃん。ショッキングパープルのヘアをしたマダム。16時以降はオフィスを飛び出してスケートに行ってしまうビジネスマン……。やることやって、その分、やりたいこともやる。そんなおらが町のスケボーショップのステッカー。次の大統領選にはバーニーは撤退を表明したけれど、さて、どんなグラフィックが出来上がってくるのだろうか。2
(写真はコモンウェルスのオリジナルステッカーたち/2018)

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