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小澤メモ|HELLO PANDA|パンダのこと。

5 優浜たちとの再会。

立派なお母さんになってね。
「こうやって見つめていると、パンダもこわいですよね。いざ遭遇したら、絶対に永明に勝てないなって思いますもん。結浜(当時1歳未満)でも負ける自信があります」。それを聞いて、思った。「君はモコモコのアルパカのこどもにも勝てないよ」って。それくらい中田くんはやさしかった。そもそも勝つとか負けるとかって目線はないけれども。旅立ちの夜。ケージに入った優浜に語りかけていた広報のスタッフさん。いつもキビキビとメディア対応している姿とは違って、その横顔はまるでパンダのようにやわらかだった。フォトグラファーの中田くん、これぞ撮ってくれと、指示しようと思ったら、すでにその姿を静かに淡々と撮影していた。優浜とそのスタッフさんを、まるで仲良しの2頭のパンダのように撮っていた。パシャ……パシャ。とてもやさしくシャッターを切った。「中田くん、大丈夫だよ。このパンダは襲っては来ないよ」、そう声をかけたくなった。

パンダのふるさとの1つ、四川省成都。
後日、アドベンチャーワールドに行ったとき、そのときの写真をパネルにして渡した。どうしてもそのスタッフさんに持っていてほしいと思ったからだった。そして、このときに、すでに決めていた。海浜と陽浜、そして優浜が、旅立った後、中国でどんな様子で暮らしているか。それをこの目で確かめてみようと。東京から和歌山・白浜へ通った旅は、パンダのふるさと中国へと続くことになった。中国は四川省成都。ここに成都ジャイアントパンダ繁育研究基地がある。アドベンチャーワールドのパンダたちが帰国もしくは旅立つと、まずはこの基地へと向かうのだった。そこで繁殖活動をしたり、新しい環境に慣れたら、中国の他の施設や動物園に派遣されたりする。海浜たちが旅立ってから約半年後の2018年1月。成都ジャイアントパンダ繁育研究基地を訪れた。現地のスタッフがまず教えてくれたのは、ここでパンダケーキ(パンダ用の蒸しパンみたいなもの)を食べれるようになったら慣れてきた証拠だということ。

パンダケーキを食べる姿に感動。
優浜は、すぐに食べて、スタッフの話す中国語も理解するのが早かった。陽浜は、少しナーバスだったが、優浜の隣の運動場で暮らしパンダケーキも食べるようになった。海浜はパンダケーキの味が好きではなく、聞きなれない音にも敏感だったので、一般客から遠い運動場でゆっくりと過ごしていた。その後、竹には旺盛な食欲を見せ、徐々に新しい環境に慣れていった。この目で3頭それぞれの元気な姿を確認し、撮影もみっちりできた。とくに、優浜と陽浜が塀越しに隣り合って、パンダケーキを頬張る姿には感動した。ムシャムシャと、パンダ座りして食べていた。それは、アドベンチャーワールドでたくさん見てきた愛おしい姿を彷彿させた。うっとり見とれている横で、中田くんがパシャパシャと激しくシャッターを切った。やさしい彼も、この光景に突き動かされて、夢中になって撮っているようだった。ちょっとうるさいかなと思った。そんなこちらの状況にも、陽浜と優浜はおかまいなしにパンダケーキを食べていた。さすがパンダだなと思った。5
(写真は成都名物パンダケーキと今年10歳になる陽浜/2018)

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